前回までは、私たちが先達が積み上げた文明のなかで生きていることを述べた。

そしてさらに優れた文化を創造していこうと提案もした。

 

積み上げられた先達の遺徳に感謝し、よりよい文化を積み上げた行くのが報恩の働きである。

私は20台の頃、事故で足の骨を折ったとき、「野生ならきっと死んでいた。現代の文明社会があるから、命を長らえたのだ。」と感慨深く思ったものだ。

 

私たちは先祖、先達に守られている。

この事に気づくことから報恩の働きは始まる。

この事に魂から気づいたとき、目の前にある「普通」に目頭が熱くなるほどの感動を、あなたは覚えるだろう。

そして「私もこの世界の発展に貢献する人間の一人になろう。」と決意したなら、あなたの世界は変わり始めるはずだ。

自ら産み出し、他者に与えることを願う人になる。

これが賢者の道の始まりでもある。

 

本日のお題を見て、二宮尊徳翁のことを思い浮かべる人が、今の日本にどれだけいるだろうか。

この報恩を提案した二宮尊徳翁は、どれほどの智者だったのか。

「報徳全集」を一度お手にとって、ご覧になるといいだろう。

私はこの報徳全集を読み、幾度となく涙を流し、目から鱗が落ちる思いをしたのだ。

二宮尊徳翁こそ、稀代の大賢者である。