私の知り合いにひょっとこのように口が曲がっている人がいる。

ひょっとこのように口が曲がるのは、日常的に嘘を吐く人の身体的特徴だ。


その人は人生をよくする学びを大切にしている。

私が知る限りその学びの会は、この世でも上等な類の教えを授けてくれるところだ。


その良い学びを大切にしているのに、その人は口が曲がってしまっている。

前はそうではなかったのに、いつの間にかひょっとこ顔になっていた。


その人の話を聞くと、家族に対して不満があるのだという。

その人は高齢でひ孫までいる。そして自分は引退した身だからと家族に遠慮をしているのだという。


だけど本心は違う。

息子夫婦が孫(その人から見るとひ孫)を甘やかしていることが気に入らない。

嫁とうまく会話ができない。

家族が親切でしてくれたことに、つい悪意を感じてしまう。

そんな感じに家族の嫌なところばかり目につくのだという。


言いたいことを言えないと、別の形で言いたくないことが言葉に出てしまう。

言いたいことを言えない鬱憤が溜まって、息子夫婦やひ孫に嫌味を言ってしまうのだそうだ。

そしてせっかく良い学びをしているのに、嫌味を言ってしまった自分が恥ずかしくなってしまうのだという。


それがますます嫌になって、「見ざる、いわざる、聞かざる」を通している。

そのためにまたストレスが溜まって、とうとう口が曲がってしまった。


このような状態で「私たちの学びは素晴らしいので、もっと学びを深めましょう。」などと言えばそれは嘘になってしまう。

その学びがその人の問題解決になっていないと表してしまう。


誤りを正すことは人の心を切る刃である。

だが正しいことを言えずに腹に収めていると、己の心を傷つけてしまう。


己を欺くのもまた嘘の一つである。