こんにちは、
本日は、当院の患者様にも多く見られる、「正常圧水頭症」についてお話しさせて頂きます。水頭症とは、文字どおり、頭の中に水が貯まってしまうことで症状をきたしてくる病気です。総論と症状(今回)、検査と診断、治療、の3回に分けてご説明させて頂きます。
頭(脳〜脊髄)の中には水が貯まっています。この水を髄液と呼びます。髄液の産生、循環、吸収の過程は厳密には諸説あり、今なお議論の絶えない領域でありますが、大雑把に、「側脳室(脳内にある髄液腔)で産生され、脳内から脊髄内へと流れ、脊髄内から脊髄外に出た後に上行し、脳の表面に戻ってくる」とイメージしてください。脳の表面に戻った髄液は、脳の膜(くも膜)にある、くも膜顆粒という組織で吸収されると考えられています(図1、2)。
図1 図2
通常、髄液の産生と吸収の割合はバランスが取れていますが、産生>吸収に傾いてしまい、脳内の髄液が過多となった状態が正常圧水頭症です。ゆっくりと、かつ微妙なバランスの崩れにより発症するため、髄液が過多になっても(CTやMRIなどの画像上で脳室が拡大していても)頭蓋内圧は正常に保たれます。
正常圧水頭症には、さらに2つのタイプがあります。特発性水頭症と続発性水頭症です。特発性水頭症は、特定の原因がなく、髄液の産生と吸収のバランスが崩れてしまうことで発症します。一方、続発性水頭症は、主にくも膜下出血や脳出血に引き続いて発症する水頭症です。出血により髄液の流路内へ流れ出た血液成分が、くも膜顆粒にまで流れ着き、くも膜顆粒に目詰まりすることで、髄液の吸収が障害されると考えられています(図3)。
図3
正常圧水頭症の症状としては、認知機能障害、歩行障害、排尿障害、が有名で、三主徴と呼ばれます。適切に治療すれば、これらの症状が改善する可能性があります。
次回以降は、正常圧水頭症の検査と診断、治療につき概説させて頂きたいと思います。なお、今回記載した内容には諸説ありますので、あくまでイメージとして捉えて頂けましたら幸いです。