こんにちは!看護部です。
今回は当院に導入されている、残尿測定器を活用した、排尿への取り組みをご紹介します。
こちらの残尿測定器の仕組みですが、超音波を機械から飛ばして反響をキャッチすることで、膀胱の中に溜まっている尿の量を測定することができます。
残尿測定器の導入によって、「おしっこが出ない」などの排尿トラブルに対して、何が原因で起こっているのかという原因に目星をつけることができる場合があります。
例えば一口に「おしっこが出ない」といっても、その原因は様々です。
- 尿が十分に作られていない(脱水、腎障害など)
- 尿は作られているが膀胱にうまく流れない(尿管の障害)
- 膀胱から尿道口までの通路が狭くなっている(前立腺肥大など)
- 排尿にかかわる神経の障害(神経因性膀胱など)
- 排尿自体はできているが、残尿感がある(過活動膀胱など)
など
これらに対して、医師の診察や看護師の状態観察はもちろん行われますが、それだけでは原因が特定できなかったり、有効な治療が行えない場合もあります。
その時に残尿測定器を用いることで、少なくとも「尿が膀胱に溜まっているのか」を明らかにすることができます。
それがわかると、排尿にかかわる器官のうち、どのあたりに問題がありそうかということを検討しやすくなります。
また、残尿測定器には以下のような特徴があります。
看護師でも使用でき手技獲得が容易
ハンディタイプのため持ち運びが容易
実施者の腕によって結果が左右されにくい
患者様への苦痛や侵襲がない(放射線でないので被爆の心配はありません)
測定結果を複数の医師や看護師で共有できる
残尿の検査、処置方法はほかにもありますが、それぞれ良い点と悪い点があります。
下腹部の触診
特別な機器が必要なく、簡便に実施できる
患者様への侵襲がない
大腸に貯留している便の状態も同時に観察できる
実施者の腕によって観察結果が変わる場合がある
残尿が多く溜まっていないと膀胱が触れない場合が多い
超音波検査
膀胱だけでなく、他の臓器の検査にも使用できる
膀胱腫瘍などの疾患が偶然発見される場合がある
患者様への苦痛や侵襲がない(放射線でないので被爆の心配はありません)
熟練した医師や臨床検査技師でなければ扱えない
機械が大きく、移動の際はキャスターで運ぶ必要がある
導尿
残尿の性状を確認できるため、疾患の検討がつく場合がある
他の検査・処置の結果残尿が多い場合は、最終的に導尿を実施する必要がある
無菌操作が必要であり、手技が煩雑なため、習熟した看護師でないと行えない
ほかの検査処置と比較して処置物品が多く、準備に時間がかかる
尿路感染や尿路損傷などを来たす場合がある(処置に伴う併発症)
患者様への侵襲が比較的大きく、苦痛に感じる方が多い
画面の上の表示が残尿量、下の白黒の画像がエコー画像です。
尿が溜まっている場合は残尿量が表示され、エコー画像に膀胱と尿が描出されます。
残尿測定器を活用して当院では
- 排尿トラブルに対する原因検索と治療方針の検討の補助
- 排尿トラブルに対する治療効果の評価
- 膀胱留置カテーテルからの離脱の評価
- 残尿量の断続的モニタリング
- 間欠的導尿の実施要否の評価
- 尿意を自覚できない方のトイレへの定時誘導
などに活用しております。