第27回日本慢性期医療学会にて当院作業療法士、看護師が発表して参りました。
作業療法士の演題は「症状を呈する認知症高齢者に対するアロマセラピーの有用性」について
考察結果としては、【CBA下位項目の記憶・病識に対しては、介入群と対象群の間に群間差はなかったが、介入群の変化量にのみ有意差が認められ介入群の効果量も大きかった。アロマの刺激により海馬や扁桃体、視床下部の機能が衰えてきた部分を活性化された可能性がある。よって、記憶と病識が向上し、情動反応が安定した為BPSD症状の緩和とリハビリ・ケアの介入が行いやすくなった可能性がある。】というものでした。群間差が出なかった為、アロマが足された事のみの効果というのは実証されず、服薬や他療法・病棟の関わりなど様々な要因も含めての効果結果が出たと思われました。しかし、臨床現場にて著明な効果が出た患者様もいた為、今後効果が出やすい認知症の種類や、症状が更に研究出来るとより臨床効果が高くなると思います。アロマセラピーも色々な効果が出るものがありますが、今回は、鳥取大学医学部教授 医学博士 浦上克哉先生の先行研究よりローズマリーカンファーとレモンを2:1で配合したものを使用しました。今回のアロマはてんかんと高血圧の方には使用禁忌となっていましたので、ご家庭などでアロマセラピーを実施する際には必ず副作用・禁忌事項を確認のもと実施されるようお願い致します。
看護師の演題は「医療療養病床で褥瘡陰圧閉鎖療法を実施した一症例」について
医療療養病床で褥瘡陰圧閉鎖療法が保険適応になっています。今回、ポケットを有する褥瘡患者が入院してきました。
なかなか治らず陰圧閉鎖療法を実施しました。4週間が保険適応の限度で4週間実施しました。
ポケットの収縮を認めその後1ヶ月で治癒しました。小型で携帯ができ、トイレやリハ訓練もできました。
今回の症例から患者に合わせた積極的治療と多職種との連携を行うことの重要性と褥瘡の早期改善により患者の負担軽減と次の生活の場の選択肢がふえたことでした。
学会のシンポジウムにて、愛知医科大学運動療育センター/愛知医科大学医学部学際的痛みセンターの理学療法士 井上 雅之先生より慢性疼痛に対する運動療法の話がありました。慢性疼痛があると生活の中で不動となりやすく、特に高齢者においては、サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドロームなどを引き起こし要介護状態に陥りやすくなります。現在、慢性疼痛に対するエビデンスは安静から運動へと変化してきており、リハビリとしては、まず医師の診断のもと何の原因による疼痛か、運動可能な時期かの確認をした上で、リハビリでも筋・神経・動きの評価により、より動きやすい動きや環境のアドバイスにより運動療法を行っていきます。その際に大事なことは、運動療法の目的は、機能・能力障害の改善、社会参加の拡大、QOLの向上などであり、痛みの除去を主目的としないという部分です。
痛みにフォーカスすると特に慢性疼痛の場合、変化が乏しく精神的にも抑うつ的になるため、当院でも退院後に何を行いたいのかという患者様のニーズを大事に、活動性を拡大させる認知行動療法や課題志向型のアプローチを大事にリハビリを実践していきたいと思います。
花川病院 リハ部・看護部