「教育の超・人類史」ジャック・アタリ著、林昌宏訳(大和書房)(その2) | けんじいのイージー趣味三昧

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 (前回からの続き)

 教育において大きな変化が生じたきっかけが印刷技術であることについて詳しく述べられているが、それにもかかわらず長い間教育というか社会に必要な知識の伝達方式は世界中で全く変わり映えがしなかった。すなわち、

(1)農民、商人、芸術家は家庭で訓練を受けた。

(2)職人は同業者組合で修業した。

(3)行政官と宗教者は学校や大学で学んだ。上級官吏の職には、支配階級の子供が就いた。知識伝達システムにより社会階層は固定化した。つまりエリート層とその周辺の人物だけが権力の操り方に関する知識を得ていた。

(4)女子は相変わらず学校教育を受けることができなかった。

(5)体罰は奨励されていた。

(6)教育方針は支配階級のニーズによって決定されていた。

 


 膨大なページを割いて教育の歴史を詳説しているが、正直に言うとけんじいは途中からこの部分を飛ばし飛ばし読んだ。そして、20世紀以降の各国の教育事情を概観している第6章からまたしっかり読み始めた。それも相当詳しいので、ここではタイトルだけを列挙しておこう。それでもなんとなくイメージは掴める。

 

(1)アメリカは「富裕層以外は大量生産方式」、イギリスは「国民全員が教育を受けるが、教育格差は解消せず」、フランスは「脱宗教に向けた果てしない戦い」、ドイツは「復興期に起きた悲劇」、スイスは「世界最高峰の大学もある多言語型の教育制度」。スイスの教育については激賞している。

(2)スペインは「遅れていたが何とか追いついた」が、イタリアは「大きな遅れを取る」と評価が低い。

 

 

(3)激賞しているもう一つがフィンランドの教育である。曰く、「協働に基づく世界一の教育制度」。生徒は教師をファーストネームで呼ぶ、13歳までは成績をつけない、教師に対する監査は費用対効果に乏しいとの理由から実施されていない、幼稚園から大学まで先生になるには修士号が必要で、競争率の極めて高い採用試験に合格しなければならない。フィンランドでは、教師という職業は医師や弁護士と並び社会的尊敬の対象である、などなど。

 

(4)スウェーデンは「20年間で学校制度が破綻寸前になったわけ」というタイトルで、社民党政権から政権交代が起きてからの学校制度の崩壊ぶり(それまで少なかった私学が増え格差が広がったこと)を説明している。

(5)3つ目の激賞国がカナダで、「完全地方分権型の世界最高の教育制度の1つ」としている。エストニアは、「出自が学校成績に及ぼす影響が最も小さい国」として評価している。

 

 

(6)アジアに移ると、シンガポールは「最も競争の激しい世界トップクラスの教育制度」、韓国は「輝かしい結果と多くの惨事を伴う過酷な競争」と、アジア諸国の競争の激しさを紹介している。ちなみに韓国はPISAのランキングでは世界のトップクラスに位置しているが、子供の睡眠時間は極めて短く、若者の死因の第1位が自殺である。

(7)日本は「まもなくこどものいなくなる国の過酷な競争」、中国は「すべては帝国と皇帝のために」とある。エチオピアなどアフリカ諸国にまで言及されているが、以下は省略する。(続く)