あと2日涼しい蓼科にいてもよかったのだが、帰京したのには理由がある。ハーモニカサークルの先生は広い意味の芸能人で、現役のバンドをしている。「昭和のキャバレーバンド」と銘打ったその演奏会が江古田のライブハウスであった。
サークルのメンバーがほとんど行くのに、新入りのけんじいが行かないわけにはいかない。しかし行ってみてよかった。文句なしに楽しい。昭和の時代に隆盛を誇ったキャバレーで演奏された音楽が次々と繰り出される。けんじいはキャバレーに行った経験は少ないが、曲はみんな聞いたことがある。
最初は「ラッパと娘」、そのあとは、「エルクンバンチェロ」、「ベサメムーチョ」などラテンナンバーで賑やかに。次に団野純子さんという往年の歌手が登場して、黛ジュンの「天使の誘惑」を歌ったからたまらない。
けんじいが大学生の頃、毎日ラジオで歌謡曲を聞いていたが、この曲を初めて聞いた時ヒットを確信した思い出の曲だ。けんじいもつい声を出して歌った。その後も「瀬戸の花嫁」、「ラヴ・イズ・オーヴァー」、「京都の恋」、「天城越え」、「ブルー・ライト・ヨコハマ」など次々と懐かしい曲が飛び出す。
休憩の前後から(記憶がはっきりしない)再びポピュラー音楽になり、「Fly me to the moon」、「チェリー・ピンク・マンボ」、「シング・シング・シング」、「マイウェイ」など。そして映画音楽から「ひまわり」と「ゴッドファーザー」。アンコールは、東京ブギウギ。先生は司会を兼ねてプロのトランペット奏者として余裕で吹いていた。けんじいは何でも自分でするのが好きで、他人のものはあまり聴かない方だが、最近はプロのものを聴くのはやはりよいものだと思うようになった。
(メンバーは、トランペット、テナーサックス、ベース、ドラム、それにピアノ。この他ボーカルが)
演奏中に、隣に座っていたリーダーに「次はこの「シング・シング・シング」をやるのよ」と囁かれたのには「えっ、こんな速い曲を」と驚いたけんじいだったが、こんな曲が演奏できるようになるのなら、それこそ楽しみというものである。