前回書いた少子化対策の1つである移民の受け入れができないのであれば、日本の女性にたくさん産んでもらうしかない。しかしそのためには産みやすい社会を作る必要があるのは当然のことだ。不妊治療の支援などといった細かい話ではない。
安心して産み安心して育てることのできる社会を作るということなら話は簡単で、出産費用、教育費を無償化することだ。財源がという話になるだろうが、要は優先順位の話だ。
また、あらゆる分野での政策において男女平等を意識して進めることだ。政治家始め各種組織における女性幹部の登用等は全て半々を目指すべきだ。まともな女性の政治家が増えれば、社会の雰囲気も変わるだろう。女性が生きやすい社会になれば、結婚も増えるだろうし、未婚の子供も育てやすくなるだろう。
日本国憲法14条では、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とあり、男女の平等は明確な理念である。さらに24条でも家庭における男女の平等が謳われている。
それにもかかわらず日本の男女平等指数は世界の最下位ゾーンに沈んでいる。内閣府男女共同参画局の発表では、世界経済フォーラムが2019年12月に公表した男女格差指数は、日本が153か国中121位(前回は149か国中110位)だったという。いつまで経ってもというより、ますます低下している。
これを大きく改善しようとするなら、象徴的な政策も必要だ。前回触れた女性天皇の実現もその1つだが、もう1つの象徴的な制度は夫婦別姓制度である。けんじいは結婚したらどっちかが姓を変えなければならない制度はおかしいと思うから、「選択的夫婦同姓制度」が正しいと思うが、とりあえず「選択的夫婦別姓制度」の実現に賛成する。
例によって縦軸で見ると、日本は、北条政子や日野富子の例で分かるとおり、歴史的に見て夫婦別姓だった。横軸で見ると、法務省が把握する限り、先進国で夫婦同姓が義務とされている国は、日本以外にはないという(多分先進国でなくてもほとんどないのではないか)。さらに国連から早期にこの点を是正するように勧告されているという事実もある。もちろん国民の理解も進んでいる。
それにもかかわらず、2019年7月の参院選前の党首討論会で、「選択的夫婦別姓に賛成か?」との進行役の問いかけに対して、出席した7党の党首のうち、アベだけが挙手しなかった。狂信的右翼支持層に配慮したのか本人の信条なのかは知らないが。
笑われることかもしれないが、実際の生活面で思いついたことがある。同姓の強制は、結婚、離婚の際の各種変更手続きの面倒さ、キャリアの維持といった職業的な不利益のほかに、卑近な庶民感情面で不都合がある。すなわち、けんじいの家も孫が女性しかいないし、弟の家も女の子しかいないので、このままではけんじいの名字が消え去る可能性が高く、ちょっと寂しい。別姓を選択させてくれれば、一人をけんじいの名字にできるもしれない。
スガは前例踏襲打破と言っているのだから、不妊治療がどうのこうのなどの細かい話だけでなく、首相らしく夫婦別姓制度の一つくらい実現させてみたらどうだ。