(漢字の共通化)

 漢字を廃止した韓国とベトナムの事例を簡単に説明したが、日本のほか本家の中国でも、漢字廃止論は常にあった。中国では、現在の中華人民共和国が成立してすぐに、毛沢東が文字改革を指示し、「ローマ字化は世界共通の方向である」とさえ言っている。そしてそれまでの間の措置として、漢字を簡略化した「簡体字」を大急ぎで作った。行き過ぎたものもあったので、何度か改正されて現在に至っている。

 中国の簡体字の中には、日本で使われていた新字体を借用したものもあるようだが、中国でも民間で使われていたのかもしれず、その点ははっきりしない。日本人からすると、首を傾げたくなるような簡体字が多い。しかし、日本の漢字でも、「日本版簡体字」を正式に採用してくれと言いたいものがある。例えば「年令」「门」「1才」「卆」「斗争」などである。これらは普通に使っているが、正確に言えば間違いで、「年齢」「門」「1歳」「卒」「闘争」と書かなければ書き取りテストでは0点である。

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         (日本でたくさんある「斉藤さん」の「さい」の字。中国の簡体字では「齐」となる。)

 今、世界の漢字は大きく3つに分かれている。すなわち(1)繁体字を使う香港、台湾、(使うとすれば韓国も)(2)簡体字を使う中国本土、(3)その中間ともいうべき日本の字体、である。日本の字体は戦前のある時期まで旧字体が使われていた。この旧字体はほぼ(1)の繁体字に一致する。

 それを1923年に制定された「常用漢字表」をスタートとし、戦後の「当用漢字」を経て、現在の「新字体」というものに至った。日本の場合も、民間で使われていた略字や俗字、草書体のくずし字を正式のものとしたわけである。だから中国の簡体字を「本来の漢字とは全く異なる代物」などという理由はなく、似たようなことを別々にやったということになる。ただ中国の方が急進的だっただけである。

 さてこのように漢字の簡略化の話になれば、漢字の共通化は当然に出てくる話題である。ましてこのブログで、4カ国の漢字音の共通性を論じてきたからには、ある意味当然の話題であると言えよう。