常紋峠越え 悲しい歴史の幽霊トンネル【存亡危機 北海道ローカル線紀行⑨】 | 湘南軽便鉄道のブログ

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「湘南軽便鉄道」です。

本ブログは鉄道・バス・船舶・航空機等について、記録も兼ねて記事掲載。

その他、5インチゲージ自家用乗用鉄道「湘南軽便鉄道」についても掲載。路線は湘南本線(ベランダ線・路程約0.01km)があったが現在廃止。新たな庭園鉄道敷設の構想中。

(前回ブログの続き)

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緊急訪問! 北海道新幹線で北海道へ【存亡危機 北海道ローカル線紀行①】

夕張へ! 2019年3月廃線へ【存亡危機 JR北海道ローカル線紀行②】

栄枯盛衰の夕張、追分、室蘭本線の石炭輸送路線も廃止か…【存亡危機 北海道ローカル線紀行③】

日本最北の地へ向け…旭川発稚内行き長距離鈍行旅【存亡危機 北海道ローカル線紀行④】

さらに北へ…秘境駅の宝庫・廃止危機の宗谷本線(美深~幌延)【存亡危機 北海道ローカル線紀行⑤】

到達 日本最北端の終着駅 稚内【存亡危機 北海道ローカル線紀行⑥】

キハ183系特急サロベツ号の旅 ☆ 宗谷本線から石北本線へ【存亡危機 北海道ローカル線紀行⑦】

一日たった一本の普通列車で峠越え(上川~遠軽)【存亡危機 北海道ローカル線紀行⑧】







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【2016.10.29 改訂版】
JR北海道、単独維持困難路線は、全路線の半数に当たる10路線・計1237.2km。うち3線は廃止確実へ。

過去最大の赤字で経営難に陥っているJR北海道は、2016年(平成28年)秋から鉄道事業の大幅見直しに着手し、特に利用者が少なく単独で維持が困難な路線は、「廃止」、「自治体に相応の負担」などの検討協議を開始。

検討対象路線は以下のとおり。
★宗谷本線(名寄~稚内)
★石北本線(全線)
★根室本線(滝川~新得、釧路~根室)
※富良野~新得は廃止確実
★釧網本線(全線)
★日高本線(全線)
※鵡川~様似は災害で休止中、このまま廃止になる可能性あり。
★留萌本線(全線)
※留萌~増毛は今年12月5日廃止正式決定
※深川~留萌は廃止確実
★室蘭本線(苫小牧~岩見沢)
★札沼線(北海道医療大学~新十津川)
※同区間は廃止確実
★石勝線(夕張支線全線)
夕張市長がJR北海道に対し自ら廃止を提案し、廃止が事実上決定
★富良野線(全線)

●今後、検討対象となる可能性のある路線
★宗谷本線(旭川~名寄)
★根室本線(帯広~釧路)

●北海道新幹線札幌延伸時に廃止又は第三セクターになる路線
★函館本線(函館~長万部~小樽~札幌)


さらに、JR北海道では9路線の46駅(廃止決定済みの留萌~増毛間を除く)を廃止する方針で地元自治体と協議。
2017年(平成29年)3月ダイヤ改正で存廃を決定する方針。
秘境駅と呼ばれる多くの駅が一気に無くなります。

この旅行紀は、現状のまま存続が事実上困難になったJR北海道のローカル線の緊急訪問記録です。
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※旅行日:2016年(平成28年)7月26日(火)




石北本線 上川発・網走行き普通列車は、
ここ遠軽(えんがる)駅3番線ホームに朝7時57分到着🚃

この網走行き普通列車は、遠軽駅で午前9時32分まで、
1時間35分の長時間停車



2番線には回送キハ40系車両が休止中

以前は、この時間に遠軽駅始発・白滝駅行き普通列車が走っていましたが、
ダイヤ改正で石北本線 普通列車の本数は大幅削減されてしまい無くなってしまいました。

遠軽駅始発の上り普通列車は夕方の2本だけ。
白滝行き1本と旭川行き1本、合計たった2本…





3番線に長時間停車中の網走行きキハ40系普通列車

上川駅から遠軽駅までは3両編成(うち最後尾の1両は回送扱い)でしたが、
ここ遠軽駅で回送扱いの1両を切離し



上川駅から遠軽駅まで、行先表示板(サボ)がありませんでしたが、ここ遠軽駅で作業員が行先表示板を差し込み













遠軽駅1番線ホームに利用者が並び始めました。
特急オホーツク2号で、旭川や札幌の都市へ向かう人々です。

北海道のローカル線では、
普通列車より特急列車の方が本数が多く利用者も多い傾向があります。




朝8時04分、特急オホーツク2号 網走発・札幌行きが、重厚なディーゼル音を響かせながら到着

遠軽駅はスイッチバック駅のため、進行方向が変わるため3分停車


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キハ183系特急型気動車の札幌方先頭車は、初期型の高運転台スラントノーズ車




遠軽駅ホームでは、特急オホーツク号の発着時刻に合わせて、2015年(平成25年)3月まで名物駅弁「かにめし」(岡村べんとう屋)🍱を販売していましたが、駅弁業者が廃業したため、無くなってしまいました。

駅弁業者が廃業した理由ですが、
この「かにめし」は特急オホーツク号に積み込み、車内販売での売上が9割を占めていましたが、
JR北海道が車内販売を廃止してしまったため、このあおりを受けて地元駅弁業者も廃業








特急オホーツク2号は、重厚なディーゼル音を響かせながら、
朝8時07分、札幌駅に向け遠軽駅を発車していきました。



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特急オホーツク号が走り去ると、ホームは再び静寂に。
向こうには遠軽のシンボル、高さ78mの奇岩「瞰望岩」が見えます。







先ほど切離したキハ40系1両は、駅に隣接する留置線に入り休止中



網走行きは、9時32分の発車までまだまた時間があります。



遠軽駅時刻表



木造の古い跨線橋




今の遠軽駅はスイッチバック駅で、この先行き止まりですが、
かつてはここ遠軽駅から、
この先、宗谷本線の名寄駅まで、名寄本線が走っていました。



かつての昭和時代は賑わいを見せた、
長いホームも広大な駅構内も、今は寂しい限り…





遠軽駅構内の外れで休止中のキハ40系車両



右奥には錆びた転車台(ターンテーブル)が残存



網走行き普通列車(手前下)と、回送車(奥の2両)













網走行き普通列車、キハ40系車内



天井の扇風機を撤去して送風機を設置(ただし非冷房)



車内の銘板



車内はクロスシートですが、車端部のみロングシート



車両間の通路。
運転助手席(右側)は、以前は乗客も立ち入ることができましたが、今はロープが張られ立入禁止に。



運転台。
頭上には小さな扇風機。




車端部右側の出っ張りは便所。
便所入口はデッキに設置。



金属製の網棚



窓のサイズが少し小さめで、一段上昇式の寒冷地仕様のキハ40系車両


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2両編成の網走行き普通列車は、
遠軽駅から数人の乗客を乗せ、
午前9時32分、遠軽駅を発車🚃



遠軽のシンボル、高さ78mの奇岩「瞰望岩」



旭川、上川、白滝方面の線路と分れます。



車窓には、紫色のルピナスの花と広大な畑






安国(やすくに)駅


安国駅は行違い可能駅




気付かぬまま、生野(いくの)駅を通過。
生野駅は、普通列車ですら大半が通過。下り2本、上り1本しか停車しない秘境駅。





生田原(いくたはら)駅


北見発・旭川行きのキハ54系2両編成・特別快速「きたみ」と行き違い。
特急並みの俊足ですが、特急料金不要のため、車内は程よく埋まっていました。





生田原駅を過ぎると、いよいよ石北本線最大の難所・常紋峠(じょうもんとうげ)越え

キハ40系車両はスピードが落ち、エンジンが唸りを上げながら、苦しげに勾配を上がっていきます。

人家もまばらな昼でも暗い山道。



 


そして、1914年(大正3年)に造られた常紋トンネルへ…

 
列車は、トンネルに差し掛かると、手前で悲しげな警笛を鳴らします



そして、全長507mの常紋(じょうもん)トンネルへ…🚇



ここは幽霊の目撃談の絶えない鉄道トンネルとして、昔から有名…
 

 



この峠は、かつて峠を越える迫力ある蒸気機関車(SL)の撮影場所として有名でした。

撮影する人は人家もない山の繁みを踏みしめ、トンネルの手前で蒸気機関車(SL)を待ちます。

夕暮れになり、ふっと気がつくと、労働者風の男の人が悲しい顔をしてこちらを見ていたと云います…

当時はまだ田舎の駅にも駅員が常駐していたので、
急いで、最寄りの駅に逃げ帰り、駅員に伝えると、「またですか…」とそっけない顔…

 


また、
乗客もまばらな列車の運転士がトンネルに入ると、運転席の窓に、労働者風の悲しい顔が、よく映るのだそうです…





ここ常紋トンネルは全長わずか507mですが、完成まで3年も要した難工事だったといいます。
労働者は、犯罪者のみならず、騙されて連れて来られた工夫たちも。
労夫たちに課せられたのは、惨で過酷な「タコ部屋労働」。

当時は、過酷な重労働と栄養失調による脚気(かっけ)という病で多くの労働者が倒れ、
治療されることなく生き埋めにされたそうです。

 
昭和43年の十勝沖地震で損傷したトンネルの改修工事の際、
壁面から、立ったままの人骨が発見。
生きたまま人柱にされていたそうです…
またトンネルの入り口付近からも大量の人骨が出てきたそうです。


そんな重労働で命を落とした、大勢の労夫たちの霊がたびたび目撃されるそうです…

トンネルの中はかび臭く、ひんやりしていました。








507mのトンネルを抜けると、
かつての無人の信号所跡が夏草に埋もれています。


常紋トンネルを抜けたところにある、
今は廃止になった、旧・常紋信号場。
信号場時代はスイッチバックになっており、当時は、普通列車はスイッチバックに入り、特急列車を待避していました。

 



常紋トンネルを抜けると、列車は下り坂を軽やかに走行





山を下りると、金華信号場


この信号場は、
今年2016年(平成28年)3月26日に廃止になった旧・金華(かねはな)駅。
立派な駅舎でしたが、晩年は数年間、地元乗降客はゼロ。

「常紋トンネル工事殉難者追悼碑  昭和55年11月建立  駅より約300m」と書かれた看板が…
無念の死を遂げた労夫の魂が祀られています。




留辺蘂(るべしべ)駅。
特急オホーツク号も停車しますが、閑散としています。


留辺蘂駅では、札幌行き特急オホーツク号と行き違い











列車はやがて北見盆地に入ります。
北見地方は、かつてはハッカの一大生産地。
今もハッカ製品が有名。




かつては、
根室本線の池田からここ北見まで、第三セクター鉄道であった北海道ちほく高原鉄道・ふるさと銀河線(元・国鉄池北線)という長大ローカル線が走っていましたが、2006年(平成18年)4月21日に廃止に。





網走行き普通列車は、石北本線沿線最大の街・北見へ。

午前10時57分、北見(きたみ)駅に到着🚃

ここでは20分の長時間停車です。


(次回に続く)