焼鳥は、同じ鶏を炭で焼けば成立するほど単純な料理ではない。
胸、首、尻、膝、心臓、砂肝。
同じ一羽でも、脂の量も水分も繊維も違う。
火を入れすぎれば水分は抜け、弱ければ炭で焼く意味が薄れる。
一本の串というシンプルな形だからこそ、その部位をどこまで最適な状態に着地させられるかで、焼き手の力量がそのまま出る。
その焼きの違いを確かめるため、新宿西口駅から徒歩3分、鳥たか 新宿店へ。
2026年6月5日オープン。
西新宿のビル6階にあり、備長炭で焼き上げる焼鳥と鶏料理を軸に、東北の日本酒を多く揃える。
エレベーターを降りて店内へ入ると、木を基調にした落ち着いた空間。
焼き場を目の前にするカウンターのほか、テーブル席や完全個室もあり、西新宿の賑わいから少し切り離されたような空気が流れている。
まずはお通し。
竹籠いっぱいに盛られた瑞々しい生野菜を、たっぷりの肉味噌につけて食べる。
野菜で口を整えるだけではなく、肉味噌の旨味を合わせることで、この時点から酒を飲ませる方向へきちんと持っていく。
続いて炙りハツのネギ塩タレまみれ。
ハツが隠れるほど白ねぎと青ねぎを豪快に重ねた一皿。
ネギの存在感に負けず、炙ったハツもしっかり主張する。
名前通り振り切った見た目ながら、ネギ塩の強さだけで押し切らないのがいい。
そして極トロレバー。
これは名前負けしない。
舌に乗せると、とろけるような食感。
ごま油の香りと塩気のバランスもよく、濃厚なレバーにさらに味を重ねるのではなく、その旨味をきちんと引き出している。
ここから焼鳥へ。
さび焼き、せせり、ぼんじり、ひざ軟骨、つなぎ。
同じ鶏でも、串が変わるだけで印象は大きく変わる。
しっとりした部位もあれば、脂を楽しむもの、歯触りを楽しむものもある。
その違いを全部同じ方向へ寄せるのではなく、それぞれの個性を残しながら一本の串として成立させていく。
焼鳥の面白さは、やはりここにある。
中でも印象に残ったのが、ハツと砂肝。
脂の強さや濃い味付けで分かりやすく旨さを作る部位ではない。
だからこそ、素材の状態と焼きがそのまま表に出る。
噛んだ瞬間の存在感がありながら、必要以上に硬くも重くもない。
特に砂肝は、このあともう一本追加した。
合間には、しいたけ、プチトマト、ナス、アスパラの野菜串。
鶏だけを続けるのではなく、ここで一度野菜へ切り替える。
炭火の焼き目をまとった野菜が入ることで、串の流れにもきちんと緩急がつく。
さらに、ひざ軟骨、砂肝、つくね、しいたけを追加。
ひと通り食べて終わるのではなく、良かった串へもう一度戻れるのも焼鳥屋の楽しさだと思う。
〆は鶏そぼろ丼。
丼いっぱいに敷かれた鶏そぼろの中央に、大きな卵黄。
見た目はかなり力強いが、そぼろ自体はあっさりとした甘めの味付け。
卵黄を崩して絡めることで角が丸くなり、串を重ねたあとでも重たさを感じにくい。
最後に銀杏。
肉、野菜、飯と進んできた流れを、再び一本の串へ戻して締めていく。
甘味はホワイトチョコのチーズケーキ。
穴の空いたチーズのような見た目も面白く、味はしっかり甘め。
焼鳥の余韻を引きずるのではなく、最後はデザートとしてきっぱり切り替える。
鳥たかで印象に残ったのは、珍しい部位や派手な演出ではない。
極トロレバーのような分かりやすく濃厚な一皿がありながら、最後に記憶へ残ったのはハツや砂肝のような、誤魔化しの利かない部位だった。
備長炭だから香ばしい。
それだけなら、焼鳥屋の説明としては足りない。
脂の多い串は脂を活かし、歯触りを楽しむ部位はその食感を残し、淡白な部位には淡白な部位なりの着地点を作る。
同じ鶏でも、一本ごとに答えは違う。
いろいろ食べたあと、それでももう一度砂肝を頼みたくなった。
その事実が、この日の焼鳥の完成度をいちばん分かりやすく物語っていた。
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