ゆるゆる日記・小説 -2ページ目

鎌を持てない死神の話9

「り・・・・・・・リン・・・・・。」


重い話のなか入ってきたのは・・・・・。


リンだった。


リンはうつむいていてよく表情がみえない。


必死に考えて搾り出した言葉だったんだろう。


ようやく伯爵が口を開いた。


「な・・・・なんてな!」


できるだけ、場の空気を緩めようとしたらしい。できるだけ和やかに、


「こんどやる劇の練習をしていたんだよ!」


「な・・・・なぁ!」


突然話をふられて伯爵夫人は戸惑いがちに、


「え・・・・ええ・・・・・・。」


「・・・な!」


しかし、その言葉は耳に届いているようすもない。


ただ、ただ、静かにそこに佇んでいる。


俺がリンの顔を覗き込むと、リンはバッと後ろを向き、


「私なんか・・・・いないほうがよかったんだね!!」


リンは走りだして、部屋から出た。


「ちょっ・・・リン!」


伯爵と夫人は何も言えず、静かに座っていた。


「なんなんだよお前ら・・・・。親じゃないのかよ!!」


聞こえないのは知っている。だけど、叫ばないと気がすまない。


「イラナイ子ってなんなんだよ!リンはお前らを・・・・!!」


「お前らを・・・・・・・・!!!」


それは、数日前の話だった。


「私、昔家で聞いた事ある話なんだー。」


「なにが?」


「私ね・・・・・・私ね、お父さんと他の人の間にできた子なんだって。」


「・・・・・・・。」


「私、それを5歳くらいの時にお母さんとお父さんが話しているの


きいたの。」


「・・・へぇ。」


「そのころは意味がわかんなくて。でも、時が経つにつれ


意味がわかってきたの。」


苦しげな顔。


「私は・・・・。私はいらなかった子なんだなぁ・・・・って。」


「最低だな。」


「でも・・・でもね!私はお母さんとお父さんが大好きだよ!」


「・・・なぜ?なぜそんな奴らを好きになれる。」


「・・・だって、私がイラナイ子だってわかってるのに、ここまで


愛情こめて育ててくれた。見捨てられなかった。」


リンは微かに微笑んでいた。


「だから・・・・大好きなんだよ!!」


その時のリンはとても輝いて見えて、


とても・・・・美しく、抱きしめてやりたい。と思うほど、愛らしかった。


それなのに・・・・・・・


「それなのにお前らは・・・・・・ッ!」

鎌を持てない死神の話8

俺は一人でリンの屋敷に戻っていた。


まだリンは帰ってないらしい。


しかし、分かれてからもう一時間もたっている。


遅すぎやしないか・・・?


すると、コンコン。とドアがノックされて、


「リン?いるかい?」


・・・?伯爵・・・リンの親父か?


キィィ・・・・


「・・・いない・・・・・か。」


しばらくして、リンの母も入ってきた。


「・・・・・!だれだ!!」


異様な驚きようだ。なぜ?


なんだか俺は胸騒ぎがした。


「あぁ・・・。お前か・・・・。」


「・・・あの話・・・・・。本当ですの?」


「ああ・・・・・・・・・・・。」


何の話だ・・・?


「だけど・・・あなた・・・。」


「・・・もう・・・・もう決めた事なんだ!仕方がないだろう!!」


「本当に・・・・リンを・・・・・?」


リンの話・・・・?


「リンを・・・・・・。」


「うるさい!!」


「家にはもう・・・・金がないんだよ・・・。」


金が・・・・ない?なぜ・・・・。


ここは伯爵家の代々受け継いできた金持ちの家のはず・・・。


「家はもう・・・・だめだ。」


「もう・・・・・リンを治療費も払えるほど金もない・・・・。」


なん・・・・・だと・・・・・・・・?


「リンはあきらめるしか・・・・・・。」


「でもあなた・・・・!」


「リンは最初から・・・イラナイ子だったじゃないか!!」


イラナイ子・・・・・・・・・・・?


この世にイラナイ子なんかいるのか・・・?


リンをイラナイ子なんて・・・・・・


お前ら親じゃないのかよ・・・!?


「お前らっ・・・・・!」


か  た        ん


ハッ


俺は驚いて後ろを向いた。


きっとリンの親父も俺と同じ顔をしていただろう。



沈黙の時間。


「リ・・・・・・。」


リン・・・・・・・・・・・・。

鎌を持てない死神の話7

「・・・はぁ。」


「ちょっと!なにしてんのよ!!早くいくわよ!」


「ちょっと・・・休憩しないか。」


俺はあの後、いろんな拷問器具(?)にのせられた。


あるいは超高速で回るもの。あるいは今にも落ちそうな船の上。


「・・・ははーん。」


「っ・・・なんだその不適な笑みは!」


「あんた、死神のくせにこんなんも絶えられないんだー。」


「なっ・・・死神をバカにするなよ!このぐらい・・・・。」


「このぐらい、乗れるわよねぇ?」


「っ・・・ああ!」


するとリンは微笑み、


「じゃあいきましょっ!」


まずい。乗せられた。


つまらん意地なんか張るんじゃなかった。


最悪だ・・・・。こんなことを考えていると、リンが振り返り、


「早くー!」


と、笑った。


俺は正直言って、可愛い。と思った。


やばい・・・。どうしよう。顔が熱い。


胸のあたりが、うるさい。


周りはなにも見えない。


見えるのは、リンの姿だけ───。


「・・・・んのよ。」


俺はリンのことが好───・・・。


「なにみてんのよっ!!!!」


「うぉっ!?」


・・・。俺はなにを考えて・・・。


「人のことジロジロみないでよ変態ッ!」


「はぁ!?」


「俺はお前のことなんか・・・・・・・。」


いや、見てた。


見てたんだ。


「・・・・少し一人にさせてくれないか。」


「・・・はぁ?」


「すまん。気ィつけてかえれ。」


「ちょっ・・・・!」


俺は空気に溶けて、消えていた。


考え事をしかたった。


精神の部屋へ───・・・・。



─精神の部屋─


『・・・・どうした?お前の方からくるなんて珍しい。』


「考え事をしたくて・・・・・。」


『・・・お前の気持ちも分からなくもない。が。』


『たとえ、女もお前のことがすきだとしても悲しむのは、


お前だぞ・・・・・・・・?』


「分かってる。」


『女は直に死ぬ。しかし、お前は永遠にこの世から


離れられない。縛られている。』


「どうしたらいい?」


「どうしたらリンを嫌いになれる?」


『・・・・。』


「どうしたら───・・・・。リンを殺せる?」


『お前・・・・。』


「どうしたら、俺は───・・・・。」



リンを殺さなくてすむ・・・・・・・・・・・・?