ニュース。容疑を否認してた○○容疑者が犯行を認める供述を始めました。
よく耳にするだろう。
大体決まって捕まって数日の事である。
[二週間の拘留延長と接見禁止。]
この書類を見てほとんどの人間が焦りを感じるからだ。


子供の頃悪い事をしたら正座させられた記憶は誰にでもあるだろう。一時間…
試しに目を閉じて正座をし、100という数をゆっくり数えてみて欲しい。
ゆっくりゆっくり。
感想を聞く前に聞きたい。
時間の流れをどう感じるか?だ。
100秒。約1~2分だが忙しい時と比べたらゆっくりに感じるだろう。

【これがずっと続く】
携帯?触れ無い。メールも電話も出来ない。横にもなれない。(横になるには許可が必要、立ち上がったり運動も認められない。)
ひたすら黙って座るのだ。
待つ時間は一時間でも辛く感じるだろう。
基本的な姿勢は問われないが座って待たなければならない。ただただ時間が過ぎるのを。
当てもなくひたすら時間が過ぎるのを座って待つしか無い…それも最低で二週間…
一つの心境の変化がある。今までは留置所内での規則など気にしてなかったはずだ。しかし否応なしに後二週間は廊の中である。
そこで困る事が出てくる訳だ。日用品の調達。
日用品は許可された物を購入しなければならない。
衣服や着替えはチェックされた後なら持ち込みも出来る…が誰に頼めば良い?
逮捕される時に着替えを持ってくる人間なんか居ないだろう。
歯ブラシやコップ。所持金も人それぞれだがそこまで多くは無い。
どうするか?
大半の人間はここで事情聴取をするや留置所の人間に借りが出来る。
留置所内の生活を少しでも良くする為に色々と聞くはめになるからだ。
そして最終的に方法はただ一つと知る。[弁護士]だ。
弁護士を通じて所持金や日用品を調達する事にするのだ。
弁護士を雇う方法は恐らくその時点で取り調べの人間から聞いているだろう。
だがもう一度色々確認する事になる。
するとだ。内容的にどうしても長時間話をする事になるだろう。
相手は誰か?
事情聴取をする人間しか居ないのだ。


ここで不思議な事に昨日迄と違い事情聴取の担当はものすごく親身に、そして優しくなる。
細かい質問にも笑顔で答えてくれるだろう。


【いつものパターン】

自分にしてみたらこんな非日常的な出来事なのでパニックになる。が彼らにはこれがいつものパターンなのだ。拘留期間の延長に接見禁止で相手が泣き付いてくるのが。
だからこそ。彼らはこの日迄は冷たく厳しい。そしてここぞとばかりに優しくなるのだ。
当たり前の人間なら担当に対する意識の持ちかたが変わって当然なのだ。
自分の弱味を見せてしまったのだから。
借りを作ってしまったからだ。
担当はしてやったりだろう。
だが決して顔には出さず事件には関係無いわからない事を一つ一つ丁寧に答えるだろう。

切り札である【接見禁止と拘留延長を更に二週間可能】だという事を交えて。

担当。
意味合いをわからない人は居ないだろう。
当然人を逮捕し起訴する迄には担当がある。
ここ迄の流れからここでピンと来る人もいるだろう。
もし捕まったらどうしようも無いという最大の理由でもある。まず、事件を立件しようと決める人間がいる。そして事件を立件させる為の担当だ。
立件させる?
そう、事件の内容の帳尻併せの担当。
つまり万が一でも事件にならない流れにさせないようにする役目でもある。
そういう役目の人間がいるとは一般人からは想像もつかないだろう。
警察の仕事の一環だが当然犯罪者を捕まえ取り調べる役目がある。
しかし何もやってない人間を犯罪者に仕立てあげる事は容易なのだ。
何故なら彼らには【担当】があるから。
もし誤認逮捕だとしても取り調べをする人間は悪かったなんて更々思わないだろう。


上が決めた事に従っただけ。

そう彼らは仕事をしただけ。罪悪感なんて無いのである。万が一、誤認逮捕が世間に公表されても大丈夫。上が責任を取るから。
逮捕状を請求し、認められ逮捕状が出る。
この行為こそ彼らの免罪符なのだ。
つまりいくら無罪を訴えても無駄。彼らの仕事は後は調書の帳尻併せであって被告人の言い訳や主張を聞く事では無い。
そういう現実を知る迄に費やす時間は人それぞれ。
それまでの間、黙秘したりしようとするだろうが甘くは無い。
机を蹴られ恫喝されそして同情して話を聞く。
これが大体のパターンだ。

  [それ位大丈夫。]


果たしてそうだろうか?
想像して欲しい。
まず家族。職場。友人。
彼らには一切情報を伝える術は無い。
心配されるだろう。携帯も繋がらない。行き先もわからない。例え警察に相談されていたとしても警察は一切何も教えないのだ。
何故なら他に事件に関連する人間が居たら逃がさない為。警戒されない為だ。
1日位なら人によっては家族も心配されないだろう。
そして2日が過ぎる。そう。検察官との茶番劇がやってくるのだ。
この時迄は希望があるだろう。
【証拠がある訳が無い。】
つまり自分が逮捕される理由なんか無い。大体の刑事ドラマではここで釈放の流れだろう。
検察官にも警察にも自分が無罪だという主張も理由もはっきり伝えただろう。
これで大丈夫。
そう確信するのだ。やっと開放されると。

そして夜になる。
そろそろ釈放だろうか?職場や家族にはどう言い訳をするか?
それしか頭に無いだろう。
しかしそのまま何事もなく夜が過ぎる。
まだか?
まだか?
まだか?
待つのは釈放。
そしてその時が来る留置所の人間から書類を手渡しされる。
【罪状認否で接見不可二週間及び拘留の延長】

     ?

頭が真っ白になる。

そう。出るどころか更に二週間も檻の中なのだ。

説明しただろう?自分が事件をおこす理由も動機も無い事も。自分がどういう人間なのかも。繰り返し繰り返し脳裏には事情を説明する自分自身が浮かびあがる。

そして暫くして気付くのだ。
相手は自身の言う事なんか更々聞くつもりは無い…と。
自分は犯罪者にされてしまったんだという事を。
何を言っても聞いてくれる人間は居ないという現実を。
目が醒めると見覚えが無い天井。…そして檻。
ここで何があったのか思い出す。
そう。捕まった現実。自分の事は番号で呼ばれる。檻の下の小さな枠の部分から弁当とお茶を貰い、暫くしたら歯磨き、体操、喫煙の時間になる。
布団をたたみ留置所を出る。タバコはこの時に2本迄。
唯一この時だけは軽い雑談を交わす事がある。
内容は何をやって捕まったか?だ。
しかし無実の人間にしてみたら堪らない。何もやってないと誰かに訴えたいだろう。
ところが誰も耳を貸さない。
それとあまり詳しい話はしてはいけない規則がある。
まぁ担当以外に話をしても無駄なのでここでは諦めがつくだろう。
留置所の中に戻りただ時間が過ぎるのを待つ。
担当が暇なら呼び出しがきて事情聴取となる。
そしてまた辛い現実がのし掛かる。
手錠だ。
留置所から外部に通じるドアを出るには手錠をしなくてはならない。
両手に軽くのし掛かるような重み。
そして付き添いが事情聴取をする部屋迄ついてきて事情聴取が始まる。
聴取は規則では2人が行うらしい。
しかし実際はほとんど1人だった。
ここで色々と自己弁護をするだろう。しかし無駄なのだ。
何故か?ここでの仕事はいかに起訴状と帳尻のあう調書を作成するか?なのだ。
つまり例えばAから電話があり、【頼まれて】Bの家に行ったとする。
しかし起訴状ではAから電話があり、【自分から】Bの家に行った。とあれば【頼まれて】という部分は一切聞き入れられない。
つまりわざと(自発的に)やった行為じゃなくても、【自分の意思でやった】事にさせられてしまうのだ。
何故か?何度もいうが彼らはそれが仕事なのだ。
あり得ない。馬鹿らしい。…そう失笑するのが大半の人間だろう。
ところがこれが【この中での常識】なのだ。
これが有名な弁護士によって弁護されるような人間なら話は別だ。
だが、そんな人間は数少ないだろう。
着手金に○十万。成功報酬○百万。全て現金。
払えるだろうか?
そしてごく僅かだと信じたいが冤罪の人間。
そう。自分が無実の場合は思考が違うだろう。
【無実なんだから弁護士など必要が無い】と。

そして更に泥沼にはまっていく事になる