不定期連載「蟹さんと読む韓国経済」 第1章貯蓄銀行構造調整 その6 | Korea Economic News by KANI

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ミ( ゚w゚)彡 <いよいよ今年の第三次貯蓄銀行構造調整に入ります。貯蓄銀行に巣くう有象無象たちを韓国国民はどのように見ているのでしょうか。ワタクシこの連載がまとまれば本にまとめたいと思っていますが、どこか出版社はないでしょうか。

「蟹さんと読む韓国経済」
 第1章 貯蓄銀行構造調整

4.2012年5月第三次構造調整

 2012年5月、日本ではゴールデンウィークの真っ最中だったが、金融当局の第三次構造調整によって、営業停止となる貯蓄銀行が近々発表されるという観測が流れ始めていたところ、対象になると疑われていたソロモン貯蓄銀行の林錫(イム・ソク)会長が、マスコミのインタビューにそれを漏らしてしまったために、5月3日からバンクラン(取り付け騒ぎ)を引き起こしてしまった。
 特に今回の構造調整は、2011年9月の第二次構造調整で改善の余地があるとして処置を猶予されていた、規模の大きい貯蓄銀行(当時ソロモンは業界トップ)だとされていたため、バンクランもまた大規模なものになった。結果的にソロモン貯蓄銀行の最後の営業日となった2012年5月4日は、順番を待つ預金客でロビーはもちろん周辺の道路までごった返し、怒号まで飛び交い騒然となった店舗まであった。一部では顧客の引き出し請求に応えるため、システム上の当日取引締め切り時間ぎりぎりいっぱいの24時直前まで営業を続けたりもしたが、すべての要望には応じきれなくなり、週明けの7日に受け付けの番号札を持ったまま順番待ちの預金客は返されたほか、インターネットバンキングも接続が殺到して延々エラーメッセージだけが表示されていたという。
 正式発表前であったために実名では報道されなかったが、対象だと噂されていた各貯蓄銀行の店頭にも預金客がつめかけ、程度の差はあるものの同様の状況だったと報道されている。

 こうして営業停止を目前としていた5月4日夕刻、未来(ミレ)貯蓄銀行のキム・チャンギョン会長が、中国への密航を試みていたところを海上警察に逮捕されていたことが、5月6日になって報道された。
 キム会長は4日に金融委員会経営評価委員会の審査に招致され、5日も審査での意見陳述を求められていた。金融委員会側はこの意見陳述を最後に営業停止を判断するとことになっていたため、キム会長はウリ銀行に預置されていた貯蓄銀行の資金を勝手に引き出し、ブローカーに密航を依頼したとされている。
 さらに続報では、キム会長は1981年にソウル大学法学部の学生として、同大法学部教授の媒酌で結婚していたが、実はニセ学生であったことも判明した。大胆にも学部活動にも熱心に出席し代表まで務めるほどであったという。結果的にニセ学生だったことはその後間もなく明らかになったが、その事実を知らない同窓生との連絡を絶やさず、実業界へ活動を広げて行ったようだ。

 韓国金融委員会は5月6日、ソロモン、未来、韓国、漢州の貯蓄銀行4行に営業停止処分を下し、監督下においた。
 ここで営業停止処分が下された4行の、2011年末時点でのBIS自己資本比率を見てみる。
 ソロモン 4.35% (純資産-1801億ウォンの資産蚕食状態)
 韓国 -1.36% (同 -383億ウォン)
 未来 -16.20% (同 -3177億ウォン)
 漢州 -37.32% (同 -616億ウォン)
これまた派手にやらかしたものである。しかも、この第三次構造調整で営業停止された貯蓄銀行4行はすべて、2011年9月の第二次構造調整時には経営改善の余地があるとして、改善策とその進捗を報告することを条件に処分を免れていたのだ。特に貯蓄銀行業界のトップだったソロモン貯蓄銀行の林会長と、上位に入っていた未来貯蓄のキム会長は同じマンションに住み、親交も深かったことがわかり、それぞれの配下貯蓄銀行だけでなく、その結びつきを利用した不正融資や増資、ロビー活動が次々と明るみに出た。

 まず未来貯蓄銀行の不正を、第二次構造調整を免れた時期からあげていく。このままでは構造調整対象になると金融当局に通知された未来貯蓄銀行は2011年9月、1300億ウォンの有償増資を実施し、ゴルフ・温泉リゾート業者K社への融資1400億ウォンの回収を行って、経営を正常化する計画を金融当局へ提出した。
 しかし、この有償増資はハナ金融持株のキム・スンユ元会長に接触し、ハナ金融配下のハナキャピタルに対し、年10%の利益を保証すると同時に、絵画数点とキム会長の弟所有のビルを担保に差し出したことでなされたものだった。検察は価値が不透明な絵画を担保としたことに対する疑問と、弟所有のビルの評価額が実際より水増しされていたことから、何らかの不正があったのではないかと見て、捜査を進めている。またハナキャピタルの増資参加を行内に公表し、将来に不安を持っていた行員を安心させると同時に、行員の退職金(※1)も有償増資に充てさせた。
 さらに、融資引き上げ対象となったリゾート業者K社は、土地と会員権を担保に未来貯蓄銀から融資を受けていたが、ゴルフ場を売却して返済に充てるとして売買契約書とともに、契約金250億ウォンの入金証明まで金融委員会に提出した。金融委員会は融資回収は確実になって、経営正常化も進んでいると判断したが、K社はキム会長が弁護士などと組んで借名で保有していた企業であり、契約金250億ウォンもキム会長が個人的に借りてきたもので、売買契約書もキム会長が知人の会社経営者に依頼して作ったニセモノだった。結局これらの事実を金融当局が知ったのは第二次構造調整の対象発表後であり、未来貯蓄銀行は処分を免れて生き延びることが出来たのだった。
 ただし、警察や検察のような強い権限を持たない金融当局ではあったが、比較的早く一連の偽装された経営正常化策を見抜いて、ひとまず法務部に対しキム会長の出国禁止処置を要請していた。捜査の手が自分に近づいてきていることを感じたキム会長は、仁川(インチョン)空港から出国を試みたが、出国禁止処置が取られていることを知り、正常化は遅滞なく進んでいると検察へ抗議をしたものの、当然拒否された。
 営業停止が目前に迫っていることを知ったキム会長は5月2日夜、ウリ銀行から会社の資金200億ウォンを引き出して行方をくらまし、密航ブローカーの手で小型船に隠れていたところを、金融当局から連絡を受けて捜査中の警察官に発見された。なおこの海外逃亡は、捜査の手から逃れるためだっただけでなく、契約金として偽装するために個人的に私債業者(※2)から借りた250億ウォンなどの返済が滞り、私債業者から脅迫を受けていたことも関係していたという。


※1 韓国企業において退職金は退職時に一括で受け取るだけでなく、一定期間勤務を続けていれば相応の額をいつでも引き出せる。
※2 貸金業者のこと。日本語で言うならば街金(まちきん)

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