No.246大分県由布院盆地の神々・天祖神(アマツミオヤノカミ)②

 
宮原誠一の神社見聞牒(246)
令和6年(2024年)05月01日
 

古事記・日本書紀の天祖神(あまつみおやのかみ)は伊耶那岐命(イザナギ)・伊耶那美命(イザナミ)として、神代記が始まります。
その前に、天地創造の神があり、天と地が造られ(天地開闢 てんちかいびゃく)、伊耶那岐命・伊耶那美命が降臨し、国産みが始まるのです。
古事記での天地開闢の神は天之御中主神(あめのみなかぬし)から始まります。
日本書紀での天地開闢の神は国常立尊(くにとこたち)から始まります。
 
古事記での天地開闢
天地初めて開けし時、高天原に成れる神
天之御中主神(あめのみなかぬし)
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
神産巣日神(かみむすひのかみ)
 
日本書紀の天地初めて開けし時の神
国常立尊(くにのとこたちのみこと)
国狭槌尊(くにさつちのみこと)
日本書紀の高天原に成れる神(第四の一書)
天御中主尊(あめのみなかぬし)
高皇産霊尊(たかみむすひ)
神皇産霊尊(かみむすひ)
 
天之御中主神・高御産巣日神・神産巣日神を造化三神と言っています。
 
百嶋学では、天之御中主神を白山姫、高御産巣日神を高木大神、神産巣日神を大幡主としますが、九州の神社を廻るかぎりでは、天之御中主神も、高御産巣日神も、神産巣日神も、奴国王様で正八幡大神・大幡主の異名同一神でした。
 
イザナギ神・イザナミ神を祀る多賀神社(たか 鷹神社or高神社)は、失礼ですが、神様不在に近い神社でした。さらに、イザナギ神、イザナミ神を別々に祀る神社では、イザナギ神は大幡主、イザナミ神は天照女神の置き換えでした。
 
正八幡大幡主・天照女神は国産みの天祖(あまつみおや)の神です。また、正八幡大幡主・天照女神は「結びの神」です。大宰府の宝満宮竃門神社の祭神でもあり、縁結びの神です。
正八幡大幡主は天之御中主神、国常立神の別称を持っておられます。天地始まりの神です。

 
 
 
湯布院の天祖神社
由布院盆地の東に金鱗湖があり、その水辺に天祖神社があります。本殿は金鱗湖の水に囲まれ、本殿の後ろでは、金鱗湖の中に鳥居が立ち、天祖神社は水神社または海神社のようでした。

 

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金鱗湖の水辺に建つ天祖神社

 

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本殿は金鱗湖の水に囲まれています

 

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天祖神社 大分県由布市湯布院町川上1750

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鳥居扁額「天祖神社」

 

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拝 殿

 

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本殿 鞘殿に覆われて彫刻は見れません

 

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神紋・大幡主の左三巴紋とその下には十六菊紋

 

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地紙紋(大幡主の神紋)

 

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景行天皇12年、遠津媛に勅して皇祖霊神を祀る
祭神 天御中主命、素戔嗚男命、軻遇突智命、事代主命
※素戔嗚男命は正八幡大幡主に置き換えです

 

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右手は由布岳(本殿の後ろから)

 

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由緒による祭神の表示は天御中主命、素戔嗚男命、軻遇突智命、事代主命であり、
素戔嗚男命を正八幡大幡主に置き換えると、これら四柱は大幡主の異名同一神となり、
由布院の天祖神社は海神の大幡主を祀ります。
本殿の後ろの水上に鳥居があり、金鱗湖を海に見立てられているようです。
 
国産みの天祖(あまつみおや)の神は正八幡大幡主・天照女神の男女神です。
正八幡大幡主を天祖神社の一柱の祭神(水神)、さらに南に位置する宇奈岐日女神社(水神)の祭神をセットで天祖神社とされているようです。

 
 
 
湯布院の神崎神社
情報の少ない神社です。創建は平安時代初期のようです。
祭神は天照大神、素戔嗚尊、稲田姫命となっていますが、宇賀神(稲荷神)の正八幡大幡主の神名が隠されいます。
 
神崎神社 大分県由布市湯布院町川上1621
祭神 天照大神、素戔嗚尊、稲田姫命

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神額の形式は天照女神か大幡主、火炎宝珠紋は稲荷社

 

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中央は大黒天(大国主=大幡主)を祀ります

 

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本殿への入り口

 

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本 殿

 

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神紋は大幡主の五三桐紋

 
神額の形式は天照女神か大幡主を祀ります。
拝殿の幔幕には火炎宝珠紋があり、稲荷社の性格を持っています。
拝殿の中央には大黒天(大国主=大幡主)が祀られており、本殿の神紋は五三桐紋の大幡主の紋です。拝殿は赤(朱柱)白の配色であり、この形式は天照女神と大幡主を祀る社殿です。
祭神表示は天照大神、素戔嗚尊、稲田姫命となっていますが、宇賀神(稲荷神)の正八幡神大幡主の神名が隠されています。
祭神表記の素戔嗚尊と稲田姫命は大幡主と天照女神の置き換えと見ると、
神崎神社の祭神は大幡主を主祭神に、天照女神の二柱を祀ると想定できます。

 

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拝殿左横に、鯉を抱く観音菩薩石像があります。
由布院は鯉の養殖が盛んで、鯉を守る観音菩薩像でしょうか、それとも、鯉に関係する観音菩薩は天照女神となります。奉納者の説明がないとわかりません。
 
波間の鯉の彫刻があるのは、大分県日田市天瀬町馬原に鞍形尾神社(くらがとう)があります。鞍形尾神社は日田市田島の大波羅(大原)八幡神社の元宮です。(No.158)
田島の大原八幡神社以前の古宮は大幡主と天照女神を祀る高良玉垂神社です。

 

鞍形尾神社 大分県日田市天瀬町馬原500

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佐賀の矢俣八幡神社 佐賀県三養基郡みやき町天建寺2069-3 石清水男山八幡宮を分祀
祭神 正八幡大幡主 比咩神(天照女神)

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本殿の飛龍、鶴、亀蛇の彫刻

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本殿の鳳凰、鯉と人(二対)の彫刻

 
 
 
覚書メモ 鰲頭観音と魚籃観音
神社を巡っていて、鯉の彫刻が天照女神に関係していると理解するのですが、その由来が不明でした。もしや、中国由来の鰲頭(ごうとう)観音菩薩にあるのではないかと。
日本では魚籃観音(ぎょらんかんのん)で表現されています。魚籃観音は魚籃を持つ観音菩薩あるいは鯉に乗る観音菩薩で表現されています。
 
※魚籃(ぎょらん):魚を入れるかご
 鰲頭(ごうとう):龍と亀と魚が合成された仮想水生動物
 
鰲頭観音は鯉のような魚に乗る観音菩薩で、鰲頭に乗って荒海を渡っている姿が想像できます。鰲頭観音は南海観音とも称されます。

 

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百嶋メモ 鰲頭観音(015)      禅研究会 2021-02-15 魚籃観音(望月佛教大辞典)

 
鰲頭観音は小枝と瑠璃瓶(るりへい)を持っておられます。
 
魚籃観音は魚籃を持つか鯉に乗っている姿です。日本での存在は少なく
東京都港区の魚籃寺、
三重県津市の初馬寺、
千葉県松戸市の万満寺、
滋賀県長浜市木之本町古橋(旧鶏足寺)、
長崎県平戸市生月町(生月観音)
などにあります。(Wiki)
魚籃観音は、仏が美しい乙女の姿で現れ、竹かごに入れた魚を売りながら仏法を広めたという故事に基づいて造形されたものであるという。
 
港区三田の魚籃寺(ぎょらんじ)  東京都港区三田4丁目8-34
本尊は魚籃観世音菩薩(空海作と口碑)右に馬頭観音碑、左手に薬師如来像
 
津市の蓮光院初馬寺(はつうまでら)  三重県津市栄町3-210
本尊は馬頭観音 如来堂の左に阿弥陀如来、右に大日如来 
境内に魚籃観音(豊漁・商売繁盛・縁結び)
伝承では推古天皇22年(614)、厄年で病となった聖徳太子が自ら刻んだ馬頭観音菩薩を祀ったのが始まりという。
 
千葉県松戸市の万満寺(まんまんじ)  千葉県松戸市馬橋2547
本尊は阿弥陀如来 鋳造魚籃観音立像
 
長浜市の鶏足寺(けいそくじ)  滋賀県長浜市木之本町古橋
己高閣(ここうかく)に本尊の十一面観音像、七仏薬師像
世代閣(よしろかく)に魚籃観音木造菩薩立像 左手に下げている魚籠は後補で、本来の像名は定かでない
 
平戸市の生月観音堂 長崎県平戸市生月町山田免570-1
生月大魚籃観音(いきつきだいぎょらんかんのん)
昭和55年(1980)に海難者と魚介類の霊・世界平和を追悼・漁船の航海の安全を祈って建立
 
 
魚籃観音が祀られているお寺の本尊は馬頭観音か十一面観音か本仏の魚籃観音で、魚籃観音は大幡主(馬頭観音、阿弥陀如来)、天照女神(十一面観音)に関係しています。すると、魚籃観音は天照女神の垂迹と想定できるのです。
魚籃観音の由来が鰲頭観音であるとするならば、鰲頭観音はインドシナから船で伽耶国に嫁いできた許(ほ)黄玉と想起するのです。許黄玉の母系子孫が大日女・天照女神で、鰲頭観音・魚籃観音と許黄玉・天照女神が連携するのです。