No.218 北野町土居の八幡宮(公民館が社殿を兼ねた神社)

 
宮原誠一の神社見聞牒(218)
令和5年(2023年)03月29日
 

福岡県北野町赤司(あかじ)の八幡宮と日比生(ひるお)の豊姫(豊比咩)神社は時々紹介してきました。
豊姫神社の南に土居地区があり、福岡県神社誌によると、ここに事代主神社があるようになっていましたが、今は存在しません。1990年(平成2年)5月の昔、土居地区を廻り、事代主神社を捜し求めましたが、見つけることができず、そのままになっていました。
ところが、最近3月初め、JAみい農協の組合員向けの月間冊子に土居地区の八幡宮の紹介記事がありました。
「あぐりピープル」2023年3月VOL383 郷土のあゆみ「土居の八幡宮」久留米市文化財保護課監修によると「現在の八幡宮が鎮座する場所には、かつて公民館があり、その中に神様が祀られていたそうです。公民館が西の集落センターに移転し、その跡地に八幡宮が建てられました。」とあります。
公民館当時は鳥居もなく境内造形物もなく、公民館が社殿を兼ねていましたので、土居の神社を見つけることが出来なかったのでしょう。公民館の横には観音堂がすでにありました。
公民館が拝殿を兼ねる神社はよく見かけます。
その祀られていた神様が、福岡県神社誌による事代主(神社)だったのかもしれません。
実際には、正八幡大幡主を祀る八幡宮だったのです。正八幡大幡主は赤司の八幡宮に八幡大神としても祀られています。
鳥居には「平成8年6月建立」とあり、平成8年(1996年)に社殿も建造されたのでしょう。

土居地区の南の船端地区には、午頭天王=今宮八幡神=正八幡大幡主を祀る今宮八幡神社があります。

 

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北野町土居地区の家屋配置図(現在)

 

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国土地理院空撮写真 1987-1990年(平成2年) 公民館時代

 
 
土居の八幡宮 福岡県久留米市北野町大城(土居)809

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左は観音堂、鳥居の扁額は「八幡宮」

 

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敷地一杯に立っています、神社を特徴づける造型物はありません

 

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観音堂

 

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左が十一面観音様(本地垂迹は天照女神)

 
初期の宇佐宮からの勧請で、祭神は正八幡大幡主となります。(勧請時期不明)
公民館等に他地区の人知れず祀られて来たことになります。
本殿左の観音堂は十一面観音様を祀ります。本地垂迹は天照女神です。
正八幡大幡主と天照女神が並んで祀られていることになります。
土居地区の氏子さんは小坪さん、久富さんが大部分です。

 

熊野十二所権現
社殿       神座      祭神名        本地仏
上四社  第一殿 西御前(結宮)  天照大神(白山姫)   十一面千手観音
     第二殿 中御前(速玉宮) 速玉大神(大幡主)   薬師如来
     第三殿 証誠殿     家津御子大神(耀姫)  阿弥陀如来
     第四殿 若宮(若一王子) 彦穂々出見尊     如意輪観音
中四社  第七殿 児宮(このみや) 彦穂々出見尊     如意輪観音

 
こうして大城地区を俯瞰しますと、この地域は大幡主、豊玉彦、豊玉姫、事代主、豊姫(ゆたひめ)と大幡主ファミリーを祀る地域となります。大城は古代筑後地域の中心地でした。高良玉垂命宮を朝妻の井に最初祀ったのも水沼君ですが、神功皇后の記録はあるものの、玉垂命(開化天皇)の痕跡が見当たりません。開化天皇に因む大城(王城)と言う地名が残っているだけです。

 
 
資料
「No.174 福岡県北野町・赤司の八幡神社と蛭尾の豊姫神社 2021年6月1日」から
 
日比生の豊姫(豊比咩)神社 福岡県久留米市北野町大城字日比生1115
祭神 豊玉姫
開基 不詳、赤司八幡神社の古宮

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赤司の八幡神社「止誉比咩神社本跡縁記」では、
「道中(みちなか)の中瀛宮(なかつみや)の田心姫(たこりひめ=豊玉姫)は、筑紫水沼君が祭る神、筑後国御井郡河北庄止誉比咩神社」とあります。
神功皇后は「筑紫中津宮」の蚊田の地(北野町大城)において応神天皇を御出産。その後、宇美八幡宮で誕生祝をなされた、と言われています。また、神功皇后は妹の豊姫(ゆたひめ)を「筑紫中津宮」に留め、西海(九州)の鎮護にあたらせました。このことが、平安時代以降「豊比咩神社」と呼ぶようになった。

豊(止誉)比咩神社の祭神は「豊玉姫」です。豊玉姫(田心姫)は道中の「道主貴 みちぬしのむち」でもあります。豊比咩神社の社号起源は、豊姫を道主貴の神形代となしたものでした。豊比咩神社(中瀛宮)は現在「とよひめ神社」と呼んでいますが、「とよひめ」と「ゆたひめ」が混合使用されています。豊姫(とよひめ)は豊玉姫の略称です。

 

※豊姫(とよひめ)と豊姫(ゆたひめ)
大城日比生の豊比咩神社は由緒から言って「とよひめ神社」であり、祭神は道主貴=田心姫=豊玉姫です。社号を「とよひめ神社」と呼ぶは、祭神の豊玉姫(とよたまひめ)=略称豊姫(とよひめ)から来ており、祭司者は神功皇后の妹である豊姫(ゆたひめ)となります。
かつて高良大社の本殿左脇にあった豊比咩神社は「ゆたひめ神社」であり、祭神は豊姫(ゆたひめ)であり、玉垂命の配偶神です。

 
豊比咩神社がある大城日比生(ひるお)の古名は蛭尾(ひるお)であり、蛭尾は事代主に関係した地名です。北野町大城は豊玉姫(田心姫)と事代主が基底にあり、次に崇神天皇・五十鈴姫(荒木しず姫)・誉田別王の時代、次に開化天皇・神功皇后・豊姫(ゆたひめ)の時代と変遷があります。
往古以前は、豊姫(豊比咩)神社が鎮座する「日比生 ひるお」を「蛭尾 ひるお」と記しています。大城日比生の古名は蛭尾であり、蛭尾は事代主に関係した地名です。
「大城」「蚊田」「蛭尾」は事代主に因む地名、そして、豊玉姫に因む地名、乙丸、乙吉があり、北野町大城には「豊玉姫」と「事代主」に関する地名称が揃っています。
事代主ゆかりの地名称には、「山田」「八重津」「桂」「桂木」「桂川」「片縄」「片延」「片田かだ」「蚊田かだ」「大城」「王城」「蛭ヒル」等があり、「カタ」の神であり、この地名称がある所には事代主ありとなります。
 
豊姫神社の南に土居区があり、ここに事代主神社がありましたが、今は存在しません。
 
日比生の豊姫神社(1990年5月5日撮影)

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境内の西側には背の低い蜜柑の木が植えてありました

 

日比生の豊姫神社(2000年5月5日撮影)

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鳥居は1991年(平成3年)の台風19号によって倒壊し、新たに建てられました
旧鳥居には江戸中期に大阪の商人によって再興された旨が刻まれていました

 
 
今宮八幡神社 福岡県久留米市北野町大城(船端)622

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本殿左の境内社が正八幡大幡主の今宮八幡宮(午頭天王社)

 
 
公民館が社殿を兼ねている神社例
 
吉井町庄園の天満神社
拝殿本殿共に公民館の中に奉安、鳥居があるので公民館が社殿を兼ねているのがわかる

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小郡市二タ(ふた)の天満神社
公民館が拝殿を兼ねている(奥が公民館)、本殿は公民館の裏に設置

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鳥居の扁額は「天満宮」ですが、境内に入ると大幡主、大山祗の物部神社です

 
 
稲数天満神社(蚊田天満宮) 福岡県久留米市北野町稲数107

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康保年間(964~967)に鎮座、右は水徳元霊社(2020.05.08)、本殿内左側に天満神、右側に蚊田神が祀られています(No.171)

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水徳元霊社(2020.05.08) 祭神・豊玉彦(別名荒五郎水神)
水徳元霊社は徳満宮の本宮の可能性があります。
現在は市道拡幅のため社殿は北に移動し新築されています。水徳元霊社も移動し新築され、ご神像も化粧直しがされていますが、菅原公の姿になっています。
 
移転新築された稲数天満神社(蚊田天満宮)

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