No.169 大幡主を祀る筑紫野市山口の大歳神社



宮原誠一の神社見聞牒(169)  
令和3年(2021年)04月21日  
令和5年(2023年)07月16日修正

 

筑紫野市古賀・萩原の扇祇神社(おうぎ神社) をさらに南に下ると、山口に大歳神社(おおとし神社)があります。途中、右手(西)に天拝湖のえん堤がみえます。のどかな中山間地です。
大歳神(おおとしがみ)は大幡主です

 

 

天拝湖

 

天拝湖は福岡市内およびその周辺への飲料水の安定的な供給を目指して築造された、飲料用の調整池。筑後川からの導水の一部をここに導き、取水制限が行われたときの不足分をまかなう役目を担う。このことから、通常のダムと違い湖面は常に満水状態だ。平成11年に完成した。

 



大歳神社 福岡県筑紫野市山口1924
祭神 大歳神 大鷦鷯尊(仁徳天皇) 素盞嗚尊 大山祗神
   火結尊 奥津彦 奥津姫 埴安命 事代主命 倉稲魂神

 

 

本殿左は八幡神社、本殿右は貴船神社

 

由緒の石碑の文言は間違っています。要注意です。

 


御祭神大歳神
大歳神は素戔嗚尊の御子で御母は大山津見神の御女 大市比賣であります。
宇賀之御魂神(豊受皇大神宮及稲荷神社の御祭神)とは御兄弟で共に穀物の守護神であります。


大歳神は大幡主で、別神は宇賀之御魂神です。
大歳神の御子は次のようになります。
大山咋神(おおやまくいのかみ) 母・市杵嶋姫(いちきしまひめ)=天照女神

 

 

 

  拝殿蛙股(かえるまた)社紋 五瓜唐花紋          五瓜唐花紋


拝殿向拝の唐破風屋根には大幡主の六葉亀甲紋があります。田神社合祀の名残でしょう。
五瓜唐花紋の祇園社も須賀社も大幡主を祀ります。

 

拝殿神額 大歳神社(大幡主) 大山積神社(大山祗神)

 

拝殿神額右 七郎神社(事代主) 荒神社 若宮神社(大山咋神)

 

拝殿神額左 宇賀神社(倉稲魂神) 田神社(埴安彦) 須賀神社(大幡主)

 

 

合祀神社
大山積神社 大山祗神 山口村大字山口字小林
荒神社  火結尊 奥津彦 奥津姫 山口村大字山口字免ヶ原
田神社  埴安命 山口村大字山口字木屋町
七郎神社 事代主 山口村大字山口字平山
宇賀神社 倉稲魂神(稲荷様) 山口村大字山口字小石
須賀神社 大幡主
若宮神社 大山咋神


福岡県神社誌による祭神一覧と実際の合祀神社を総合しますと、大歳神社の祭神は大幡主となります。
左側摂社に八幡神社がありますが、この八幡神は正八幡神大幡主でしょう。


三郎天神社 祭神 埴安命(大幡主)
五郎天神社 祭神 荒五郎(豊玉彦=豊国主)
七郎天神社 祭神 事代主
九郎天神社 祭神 黒男大明神(大国主=大穴持命=杵築大神)


福岡県神社誌

 

 

     八幡神社(本殿左側)

 

      貴船神社(本殿右側)


摂社・貴船神社
摂社として、本殿左側に八幡神社、本殿右側に貴船神社があり、それぞれの神社前(本殿の両側)に大幡主の六角灯籠があります。ここ山口も大幡主(埴安彦)の地盤のようです。

 貴船神社の祭神
 高淤加美神、高龗神(たかおかみ)=大幡主
 闇淤加美神、闇龗神(くらおかみ)=天照女神

 


貴船神社の扉には地紙紋(ぢがみもん 扇紋)が打ってあります。
福岡県で「地紙紋」の家は 田中・高宮・篠原・藤・井上・半田・藤野・西岡・青木・木村・安永・古賀・武内・和田・三宅などが挙げられる。
参考「家紋Word http://www.harimaya.com/kamon/」
地紙紋は大幡主奉斎の家紋です。



倭国大乱の前兆(素戔嗚尊と神俣姫と長髄彦の対応)
ことは素戔嗚尊が、わが姉・神俣姫(かみまたひめ)の処遇に腹を立てたのが発端です。
神俣姫は阿蘇の神様・神沼河耳命の妃であり、その間に天忍穂耳命の御子があった。
神沼河耳命には兄の神八井耳命がいた。(天忍穂耳命・神沼河耳 百嶋神代系図参照)
当時、神武天皇の皇后は金山彦の姫・吾平津姫でした。神武天皇は皇后・吾平津姫を神沼河耳命に下賜され、吾平津姫は名を蒲池姫に変えられ、間に生まれた御子が建磐龍です。
結果、神沼河耳命は天皇家並の扱いとなります。そして、神俣姫は離縁され、丹生津姫と改められる。
元々、天王(てんのう)と云われた素戔嗚尊、神武天皇と同等の天子の資格を持つ出自の素戔嗚尊は姉・神俣姫の処遇に激怒される。
素戔嗚尊の激怒を知った天忍穂耳命の妻であり素戔嗚尊の娘である瀛津世襲足姫は、夫・天忍穂耳命に神沼河耳との親子を離縁して、兄・神八井耳命の養子になることを勧められる。
結果、天忍穂耳命は阿蘇の惣領を弟の建磐龍(阿蘇神社)に譲ってしまわれる。そして、名を彦八井耳と変えられます。
かくして、素戔嗚尊は武塔神となり、巨旦将来こと神沼河耳命の討伐となります。茅の輪説話の裏舞台です。
素戔嗚尊の暴挙の結果、櫛稲田姫と罔象女は素戔嗚の妃の座を捨てて、豊玉彦のところに助けを求められる。素戔嗚尊のヤマタノオロチ紛争の仲裁が裏目に出てしまった。
「神武の失政」と言われる出来ごとです。
この状況下、父・素戔嗚尊、伯母・神俣姫の姿を見かねた息子・長髄彦がいました。
素戔嗚尊と同様に怒りは心頭に達した。倭国大乱の前兆である。


大歳神の神代系図

19-2



荒神社(こうじんしゃ)
祭神 火結尊 奥津彦 奥津姫


大歳神社の西隣に荒神社の鳥居があります。本殿は大歳神社に合祀されてありません。
荒神社の存在は珍しいです。

 百嶋学での荒神社の祭神
 火結尊(ひむすびのかみ)=火之迦具土神(金山彦)
 奥津彦(おくつひこ)=大山咋神(おおやまくいのかみ) 父・大歳神、母・市杵嶋姫
 奥津姫(おくつひめ)=鴨玉依姫(かもたまよりひめ) 大山咋神の妃

金山彦と埴安姫の御子が櫛稲田姫で、豊玉彦と櫛稲田姫の御子が鴨玉依姫です。
さらに、大山咋神と鴨玉依姫の御子が崇神帝です。

世間一般では荒神様を三宝(仏法僧)荒神ともいい、竈神(かまどがみ)と火の神で修験者の間で生まれた荒神信仰です。また、荒神は「牛馬の守護神」でもあり、牛荒神の信仰ともされます。
三宝荒神は一人の神様を火神に、二人の神様を竈神に据えることが多く、火神には、素盞鳴尊、彦火々出見命、金山彦が当てられることが多くあり、竈神には奥津彦神、奥津姫神(長髄彦姉弟、大山咋神・玉依姫)を当てるのがみられます。

福岡県大宰府北谷内山に鴨玉依姫を祭神とする寳満宮があります。昔は寳満宮竈門神社といいました。竈門山の名は、竈門岩と太宰府天満宮方面から見る山の姿が竈に似ていることに因む、とあります。
昔の家の台所・炊事場の柱には火炎を背に、右手に剣を持った「いかめしい大明王」の護符が貼ってありました。火災防止の神様で「竈荒神」様です。

宝満宮竈神社の祭神は表記上
 奥津彦(おくつひこ)=大山咋神(おおやまくいのかみ)
 奥津姫(おくつひめ)=鴨玉依姫(かもたまよりひめ)
てすが、実際に祭られているお神は大幡主、天照女神ですので、

荒神社の祭神は
 火結尊(ひむすびのかみ)=火之迦具土神(大幡主)
 奥津彦(おくつひこ)=大幡主
 奥津姫(おくつひめ)=天照女神
となります。