不妊手術大作戦!(3) 手術、ヒエーっ!

 俺は元来犬派で猫と関わった事は一度も無いのだが、離島では近所ののら猫たちと仲良くする事になった。

最近、仔猫たちも増えて、俺も忘れがちなので続柄をまとめてみた。

 

3月中旬、俺は宮古島のボランティア団体「みやーくTNR」の依頼で、伊良部島・佐良浜地区での一斉TNR(避妊手術)大作戦に参加する事になった。

 

2日目(木)、曇のち雨、21~25℃

7時半、俺は自宅にエサを食べに来る12匹(メス5匹はTNR済み)のうちオス5匹を捕獲完了した。いつも来るオス6匹のうち何故か茶トラ3だけが姿を見せなかった。

 

そして魔女のように賢い白ミケも現れなかった。とほほ。

(詳細はブログ「あこがれの離島生活(76) Sさんの憂鬱」参照下さい)

 

仕方ないので、オス5匹のみをペットキャリー入れ、会場(前里添多目的共同利用施設)まで運ぶ事にした。

 

既に手術済みのメスたちが寄ってきた。心配して見守っている?


或いは、「ざまあみろ、今度はあんた達よ!」かもな。ハハハ。

 

会場まで徒歩10分位かかるので、5つのキャリーを持って徒歩で運ぶのは無理だ。


仕方ないのでオープンカーで運ぶことにした。屋根をオープンにするとギリギリ5台載った。

2人乗りではなく4人乗りのオープンにして良かった。ハハハ。

 

会場に到着すると、ボランティアの人達から「のら猫をオープンカーに積んで来たへんなおじさん」という目で見られたようだ。ハハハ。

 

俺が会場にペットキャリーの5匹を運び込むと、そこには何故か35匹分の捕獲機が並んでいた。

昨日帰る時には5匹しかいなかったのに??


Nさんに確認してみたら、昨夜我々が帰宅した後もNさんとYさん(男性、40歳代後半、東北出身?大柄、自衛隊員?)の二人で21時までと今朝7時からも捕獲を続け、計30匹を確保したのだそうだ。

 

その後、Nさんが事前に依頼しておいた地域の方々5名が別途捕獲してくれた10匹を連れて来てくれたので、

本日の手術対象は合計50匹となった。


Nさんは70匹の目標達成に近づいたので、表情に余裕が出て来たようだ、ハハハ。

 

 

9時、50匹への手術開始。

本日の参加者は、

医師、4人(東京から参加、男性1名、女性3名) + 看護師が2人(うち1名は東京から参加)、計6人。

ボランティアは、女性x12人+ 男性3人(Aさん + Yさん+俺)、計15人だ。

 

 

猫たちへの手術の手順は;

 

1)    麻酔: 捕獲機に入れたまま床に置き、ボランティアが棒で猫を隅に追い詰めて動けないようにして、看護師が臀部に麻酔薬を注射する。

4, 5分で猫は動かなくなる。捕獲機から引きずりだした各猫事に「個体識別とマイルストーン管理用タグ」を前足に取り付ける。

 

2)    剃毛: 麻酔状態の猫を床のペットシーツの上に寝かせ、電動シェーバーで猫の手術患部の毛を剃る。

オスは陰嚢の周辺5cm四方だけだが、球状なので意外と時間がかかる。

メスは腹部の15cm x10cmを剃るので簡単だが乳首を傷つけないように慎重に。

 女性ボランティアたちは、まるで幼い息子の散髪でもするように「はいはい、いいこでちゅねー」とか呼びかけながらタマのまわりを丁寧に剃っていた。

 

3)    消毒: 専用デスクに寝かせ、消毒用に剃毛された部位を消毒液を浸けた医療用コットンで2回拭く。

 

4)    固定: 各医師のデスクに設置された発泡スチロールで作った臨時の手術台に猫を寝かせ、四肢を紐でデスクに固定する。

 

5)    手術: 計4人の医師が1匹づつ手術を担当し、ボランティアが1名づつ補助につく。


オスは陰嚢を約1cm切開し睾丸を摘出。メスは腹部を7cm程度切開し子宮を摘出。

手術完了時に、さくら耳のカットをオスは右耳で、メスは左耳だ。そしてノミ取り薬をクビに塗布する。

 

6)    機器の消毒: 手術用機器は1匹毎に交換するので、使用済み機器を定期的に集めて、別室の流し台へ持って行き、歯ブラシで洗浄した後煮沸消毒し、戻って専用の消毒液パッドに浸して置く。

 

7)    登録: 手術が完了した猫を1匹づつ写真撮影し、「性別・毛色・捕獲者名・捕獲場所」をNさんのスマホに記録する。

 

8)    覚醒: ペットキャリーに入れ、「性別・毛色・捕獲者名・捕獲場所」を明記したガムテープをキャリー毎に張り付ける。

その後「覚醒おねがいしまーす!」と看護師を呼んで覚醒薬を臀部に注射してもらう。


10分位で猫が目覚めると、ロビー入口のリターン猫置き場へ移動させる。

 

9)    リターン: リターン猫置き場でエリア毎に分けて、車に積んで、捕獲した場所に戻す。基本的に捕獲した者が捕獲した場所へ戻す。

 

10)  捕獲機の回収&洗浄: 麻酔が終わった捕獲機とリターンが終わったキャリーを水道水で洗浄し乾かす。

一晩閉じ込められた猫たちの糞尿がペットシートに溜まっていたりもする。

 

以上、全10のパートとなる。

 

Nさん 「前回参加して頂いたボランティアの方は、基本的に同じパートを担当して下さいね!」

 

ボタンティア1 「じゃあ、わたしは剃毛で」

ボタンティア2 「私は消毒でした」

ボタンティア3 「私は手術の助手でした」

 

Nさん 「Kさんはどのパートを担当したいですか?」

 

俺 「いやー、繊細な作業は苦手なので。皆さんのご迷惑になりそうでー・・・」

 

Nさん 「では、私と一緒に9)捕獲機の回収&洗浄をお願いします」

 

俺 「それならば、できそうですね。ハハハ」

こうして、俺は捕獲機の回収&洗浄、および、猫のリターンを担当する事になった。

 

その頃、ボランティアのMさん(女性、30代後半、関東出身?宮古島でネコカフェを運営)が切り花を買ってきた。

 

俺 「あのー、その花は何に使うのですか?」 素朴な疑問を聞いてみた。

 

Mさん 「実は、3月は猫ちゃんたちの出産期なので、堕胎する例が多いんですよ。なので、胎児たちを弔うための気持ちなんです・・・」

 

俺 「なるほど。そうなんですね」 さすが女性は気遣いが繊細だ!

 

 

すぐに、手術が始まり、4人の医師により次々と猫たちの患部が切開されて行く。

俺は余り見たくは無かったのだが、目の前にある4つの手術台でついつい見えてしまった。

オスの場合、陰嚢の中心部を1cm程度切開する。

 

医師が指で押して飛び出す睾丸(タマ)は白くて直径1.5cm位のタマゴ形だ。どこかで見たような気がしたら、銀杏の実に似ていた!

 

 

驚いたのは、雄の陰嚢は切開後殆ど出血は無く、タマを取り出した跡にも縫合していない!


俺 「あのー、オスの陰嚢は縫わないのですか?」 素朴な疑問を聞いてみた。

 

医師2 「はい、切開部位が小さいので放っておいても勝手に引っ付くんですよ。ハハハ」

なるほどオスの扱いは大雑把だ。そのせいで、オスの手術時間は意外と短い。

 

メスの場合、開腹部から子宮を撤去して縫合する。

しかし、3月は時期的に出産間近の猫が多く同時に堕胎手術も必要となり、開腹部から慎重に引きずりだされた子宮には胎児が3~4匹分つながっていた。

 

どこかで見たような気がしたら、ボイルする前のウインナーソーセージ状だった。勿論それなりに出血もしていた。

 

(んー。当分、銀杏とウインナーソーセージと生レバーは食べれないかも・・・) つい心の中で考えてしまった。

 

 

1日目は4人の医師で50匹を手術する事になる。特に妊娠中のメスの堕胎手術は余計な時間がかかるので医師たちは時間との勝負だ。みんな無言でせっせと手を動かしていた。


しかし、使用する椅子は「会議用の茶色い折り畳み式パイプ椅子」なのでクッション性は乏しく、長時間座り続けている医師たちは「おしりが痛くなってきたよー!」とこぼしていた。

ご苦労様です!

 

 

俺は、午前中は屋外の水道で使用済みの「猫の糞尿」で汚れた捕獲機の洗浄をしていたが、昼前から雨が降り出して、屋外での作業は中断となった。


代わりに、返却済みでやはり猫の糞尿で汚れたキャリーをロビーの片隅で消毒のスプレーで洗浄し、内部に新聞紙とペットシートを敷き直し、再度使用できる状態にする作業を続けた。

 

 

13時、手術の合間に、手の空いている人から別室でランチを取る事になった。支給されたのは「鶏南蛮弁当」で、見た目よりも各菜の味付けが繊細で、かなり美味かった。

 

(そう言えば、今手術中のうちに来る猫たちも鶏肉が大好きだなー)とか考えながら食べていた。

 

午前中俺は身体を動かす作業で大汗を書いていたので、自分でも「汗臭いなー」と認識していた位なので、ボランティアの女性たち3人に囲まれて食べるのは「強い加齢臭がしているかも?」とやや緊張した。

しかし、ボランティアのAさんは嫌がって離れずに雑談してくれていたので、大丈夫そうだ、ハハハ。

 

この間も医師たち4名は一切休まず、手術を継続していた。3月のメスは堕胎手術の割合が多いので予定より大幅に時間がかかっていたらしい。結局、医師たちはランチを摂らなかったようだ。

 

 

14時頃、食後に各自作業を再開し始めた頃、突然TVカメラを担いだレポーターB(女性、20代半ば、小柄、低姿勢)が手術場に入って来た。

 

レポーターBは、代表Nさんに挨拶して、色々とインタビューして、手術場面を動画撮影していた。


約30分遅れて、宮古島では珍しい「スーツを着た」レポーターA(男性、50歳前後、メタボ体型、不愛想)が手術場に入って来て、レポーターBから状況報告を受けていた。

その後、Bは大きなビデオカメラを抱えAの一歩後ろに付き従って場内を移動していたが、Aは早々に帰っていった。

 

しばらくして、ロビーで捕獲機を洗浄していた俺の所にもBがやって来て、手術後キャリーに入れられて玄関でリターンまで待機している猫たちを撮影しながら、質問してきた。

彼女は容姿がマンガ系なのでアイドルの卵かと勘違いした。ハハハ。

 

レポーターB 「ここに並んでいる猫たちはこの後どうなるのですか?」

 

俺 「1匹づつ捕獲した場所まで連れて帰って、リターンします」

 

レポーターB 「えー! わざわざ連れて帰るんですか??」

 

俺 「そうなんです。猫には各自縄張りがあるので、自分の縄張り以外の場所に放すといじめられるみたいですね。ハハハ」

 

レポーターB 「ねこの社会も上下関係が厳しいんですねー! フー」 深いため息が、彼女の職場での苦労を物語っているようだ。ハハハ。

 

俺 「そのようですね。

  ところで、今日の撮影分はいつ放映されるのですか?」

離島ではそもそもネタが少ないので、「のら猫の不妊手術」でさえもテレビで放映されるニュースになるのかなー??

でも銀杏とウインナーソーセージは食事時の放映がNGかも、ハハハ。

 

レポーターB 「明日以降になります。ニコッ」

 

俺 「ほー、なんチャンネルですか?」

 

レポーターB 「ケーブルテレビの宮古テレビです。宜しくお願いします」 愛想よくお辞儀していた。

 

 

宮古島では台風の影響で電波塔や高い建物が無い。なので、テレビ放送は家庭用アンテナだけでは受信が困難の為、殆どの家庭ではケーブルテレビと契約して受信している。

 

俺 「了解しました」 

俺の家にはTVが無いので、多分見る事は無いが。ハハハ。

 

 

15時頃、AさんとBさんが昨日自分で捕獲した猫たちをリターンへでかけて、15分位で戻ってきた。

Aさん 「引っかかれちゃいましたー!」

 

俺 「?? どうしたんですか?」

 

Aさん 「キャリーから出してあげようとしたら、爪で引っかかれましたー」

左手の薬指にバンドエイドを巻いていた。

 

俺 「それは、大変でしたね」 ちゃんと共感している態度を示しておく。

 

Aさん 「一番使う指なのにー・・・」

 

俺 「??」

  (ランチの時に、「東京から転勤で宮古島に来た」と言っていたが、薬指を使う職業とはなんだろう?

  やはり、薬屋さんかな?ハハハ)

 

 

16時頃、うちに来る猫たちオス5匹がTNR(不妊)手術が終わった。雨が強くオープンカーは無理だ。Yさんのバンに乗せてもらい「命根御嶽(んちなーうたき)」の公園まで連れて帰り、ゆっくりリターンした。猫たちは麻酔で下半身をフラつかせながら、いつも昼間遊ぶ空き地に戻って行った。

 

 

18時半、50匹の手術が完了し本日のボランティアは終了した。

直前に、地域の住民の方が捕獲してくれた5匹の猫が運び込まれたが、本日の手術には間に合わないので明日に持ち越しとなった。

 

 

結局、予定していた「うちに来るメス1匹(白ミケ)とオス1匹(茶トラ3)」は捕獲できなかった、残念!