◆謎の大型美女?
4月上旬、俺はいつものように伊良部島のWホテルのレストランで勤務していた。
このホテルには欧米人・台湾人・韓国人の旅行客が多い。その日の予約客は3組で日本人2組と外国人1人だった。
日没後、予約して1人の女性Aさん(白人、30歳代前半、黒い瞳、彫が深い、高身長、セリーヌ・ディオン似
こんな感じ)
がやって来て、3番卓に案内された。ここが一番エアコンの風が涼しい。
その日はタイミーのアルバイトの男性Bさん(日本人、30歳前後、関東出身、フリーカメラマン)が来てくれたので、
ホール(接客、オーダー確認、料理提供)はBさんに任せて、俺は後ろ(ドリンク作り、食器洗浄、食器格納、調理補助)を担当する事にした。
Bさんがオーダーを取りに行き、スマホの翻訳アプリを使って色々とメニューの説明をしていたようだ。
俺はキッチンの中にいて業務用食洗器で洗い終わった食器を棚に格納していた。
数分後、Bさんがホールから困った風の顔でキッチンにやって来た。
Bさん 「Kさんって、英語いけますか?」 すがるような目で見ていた。
俺 「少しは」
翻訳アプリの方が俺より語彙力は高いはずだと思い、辞退するつもりだったのだが。
Bさん 「じゃあ、助けて下さい! あのガイジンさんに、上手く通じなくてー・・・」
俺 「んー。
じゃあ聞いてみますね」
仕方ないので、俺はAさんのいる3番テーブルに向かった。
俺 「失礼します、マダム。
何かお手伝いしましょうか?」
相手に早口で話されると聞き取れないので、俺は意識的にゆっくり話しかけた。
Aさん 「あー、(とても不機嫌そうな顔をしていた)
この『島ラッキョウ』ってどんな料理なのか分からなくてー・・・」
俺 「おー、島らっきょうですかー!
(白人にしてはツウなものを選ぶ人だなー! 確かに、それは翻訳アプリでは難しいのかもな。「らっきょう」って英語で何て言うんだっけな、忘れたわ。
それと、「酢漬け」って何だっけ? 忘れたわ、ハハハ)
あー。これはですね。ハンバーガーのバンズの上に乗せたビーフの上に乗せる、あれで、えーと」
Aさん 「もしかして、ピクルスの事?」
あきれながらアシストしてくれた。
俺 「そうそう、ピクルスの一種ですね」
Aさん 「ふーん、そうなんだ。じゃあ、この『カツオの塩辛』って何かしら?」

俺 「これはカツオ・フィッシュの塩漬けですね」
Aさん 「じゃあ。その2つとそれと、ジンをソーダ割りで1つお願いね」
とても不機嫌そうだった。オーダー内容からして、相当酒が強そうだが・・・。
俺 「了解しました」
とりあえず、なんとかオーダーを聞く事はできたのだが、まだ不機嫌そうだ・・・。
チャットで恋人とケンカでもしたのかもな、ハハハ。
数分後、退屈そうにスマホをいじっているAさんにオーダーした品を提供する時に、俺は起死回生の為に彼女に質問してみた。
俺 「1つ質問していいですか?」 ゆっくりと、丁寧に確認した。
Aさん 「?なにかしら?」 意外そうにこちらを見上げた。
俺 「あなたがとても綺麗なので、どこから来られたのかなー?と思いまして」
まずは、褒めておく。
Aさん 「まー! (顔の表情が少しゆるんだ)
私は今プエルトリコに住んでいるんだけど、私の両親はギリシャの人よ」
「キレイ」と言われたので、まんざらでもなさそうだ。
俺 「おー、ギリシャですか!! なるほど、それでそんなに見目麗しいんだー!」
ダメ押しで加えておく。
Aさん 「ふふっ」
気分が良くなったのが表情からはっきりと見て取れる。
俺 「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」
うやうやしく一礼してキッチンに戻った。
その頃既に、ガイジンコンプレックス状態に陥ってしまったBさんが、ホールからキッチンに引きこもって食器洗いに精を出すふりをしていたので、
後ろはBさんに譲って俺はホールを担当する事にした。
十数分後、Aさんから合図があったので、俺は3番卓に向かった。
Aさん 「このカツオは塩からすぎて、私には無理だったわ。折角作ってもらったのに申し訳ないんだけど・・・」
白人が自分から東洋人相手に謝るなんて珍しい。
俺 「そうでしたかー・・・。ちょっとお待ちください!」
カツオ塩辛の小鉢を下げて、俺はキッチンに戻った。すぐに「タコわさ」を小鉢に盛って、3番卓に出かけた。
俺 「代わりに、これを試してみて下さい。私からのサービスです!」
Aさん 「あっ! これタコでしょ?」
彼女はすぐに気づいたようだ。
20代前半、俺は1年間大学を休学して欧州・北アフリカ・小アジアをあてもなく放浪していた事がある。その時に聞いたのは;
「欧州ではイカはよく食べるが、タコは別名「デビル・フィッシュ」と呼ばれ見た目が気持ち悪いので一般的には食べない。欧州でタコを食べるのは、ギリシャだけだ」との事だった。
俺 「おー、正解です!」
その時、1番卓の日本人客から呼ばれたので、俺は会話を中断しないといけなくなった。
俺 「後で感想を聞かせて下さいね」
Aさん 「ありがとう。了解よ!」 大分機嫌が戻ったようだ。
約10分後、1番卓の日本人客に「ハイビスカス・ビール」を提供し終わった時、Aさんからお呼びがかかった。
Aさん 「タコわさは、クールだったわ!
他に何かヘルシーな料理を紹介して欲しいんだけど」
俺 「そうですね。「モズク酢」はいかがでしょうか?
これは海藻の一種で、宮古島の特産です」
この女性は、ヘルシー志向で肉より野菜が好きそうなので、お勧めしてみた。
Aさん 「そうね、じゃあそれを頂くわ。それとジンのロックを一つお願いね! うふっ」
やはり、酒が強そうだ。
俺 「承知しました」
Bさんが準備してくれたジン・ロックとモズク酢をAさんに提供してから、5番と6番卓のわがままな日本人団体8人への対応で俺はしばらく追われていた。
約1時間後、Aさんは最後に「やんばるチキンのソテー」を食べて食事を終えた。
俺 「マダム、本日はありがとうございました。
最後に1つ質問して宜しいでしょうか?」
Aさん 「(まってしたと云う表情で)
ええ、どうぞ!」
俺 「沖縄に来て食べた料理で、一番気に入ったのがどれですか?」
Aさん 「おー、それはちょっと難しい質問ね!」
(真剣に考えこんでいた)
でも、今日のモズク酢はとても気に入ったわよ、うふっ」
席を立ったAさんをキャッシャーまで案内しながら、短い雑談もした。彼女は175cm位で均整の取れたモデル体型だった。
何故一人で宮古島に来たのかを聞こうかとも思ったが、話が長くなりそうなので止めた。ハハハ。
俺 「本日はありがとうございました」 丁寧に一礼した。
Aさん 「おかげ様で、とても楽しかったわ。ありがとう!」
謎の大型美女が笑顔でエレベーターに乗り部屋に戻って行った。
俺が30代ならば、思わず明日の食事に誘ったかもしれないな、ハハハ。
Bさん! 売れるカメラマンになりたいのならば、まずは『女性をほめる』事を学ばなきゃねー・・・。
ヤレヤレだぜ。
◆蝶の季節!
俺は元来犬派で猫と関わった事は一度も無いのだが、離島では近所ののら猫たちと仲良くする事になった。最近、仔猫たちも増えて、俺も忘れがちなので続柄をまとめてみた。
3月中旬から気温がドンドン上がって、モンシロチョウが飛ぶようになった。
八ワレ4がその蝶々を追いかけてしきりに猫パンチを繰り出していたが、空中を飛ぶ蝶々には全然届いていない。それでも諦めずに追いかけまわす様子は人間の幼稚園児みたいだ。ハハハ。
4月初旬、朝ごはんの後、八ワレ4が何かを咥えて戻って来た。
大型のアゲハチョウだった。 
去年7月の猫カゼに罹って以来、八ワレ4は成長が遅く、1歳(人間で16-17歳)になったのに、他の猫たちより2回り位身体が小さいままなのだが。
ようやく、人並み(いや猫並み?)に獲物を捕獲する事に興味を覚えたようだ。
ジタバタする蝶にねこパンチを出して狩りの練習をしていた。
こうして見ると「やはり猫は肉食の猛獣なんだ!」と感じた。
しばらくして、八ワレ4が静かになって入口のドアーから出ていった。蝶を食べてしまったのか、心配だったので入口付近を見に行ったら、羽根が半分とれた蝶がジタバタと動いていた。
「そうか、蝶は食べないんだ」 少しホッとした。
離島の仔猫たちよ、元気に生き延びてくれよ!
