◆離島でエアコンが壊れた
 4月14日、連日気温が29℃まであがった。
17日は休みで自宅で昼寝していた時室内が暑いので、去年の10月以来半年ぶりにクーラーをつけて寝た。
しかし、1時間後蒸し暑さで目が覚めたら室内に熱風が溜まっていた。どうやらエアコンが壊れて熱風が出ていたようだ。このエアコン日本製で今年9年目のものだった。


2日後、もう一度試してみたが、やはり熱風しか出ないので、大家のNさん(男、65歳、伊良部島出身、アバウトな性格、大酒飲み、兼業農家、元下地島空港の電気工事士)に電話した。

俺 「クーラーが壊れたようです」

大家Nさん 「あー、そうか。じゃあ直す人を行かせるから。次の休みはいつさ?」

俺 「火曜日と水曜日です」

大家Nさん 「分かったー」

翌日また大家さんから電話が来た;

大家Nさん 「今日は仕事かい?」

俺 「はい、仕事です。18時に終わります」

大家Nさん 「じゃあ、1年経ったし、今日飲みに行こうか。
  今日から宮古島に『宮古横丁』という飲み屋街がオープンするらしいし」

俺 「はあ?
 そ・そうですね。18時半なら出れます。どこに行けばいいですか?」

大家Nさん 「近くまでタクシーで迎えに行くから」

伊良部島には18時以降は公共交通機関が無いので、宮古島へ飲みに行く時は往復タクシーか帰りは代車となる。やれやれだせ。


俺 「はい、了解しました」
実は、大家さんは大酒のみの酒乱で、「飲み始めると意識が無くなるまで飲み続けてしまい、どうやって帰宅したかも分からない」そうなので、酒が強くない俺としては余りご一緒したくは無いのだが・・・。
今ここで機嫌を損ねてしまうと、ひと夏クーラー無しで過ごす羽目になってしまう恐れもあるので、断る事ができなかった。建設ブームの宮古島市内では致命的に貸家不足なので、圧倒的に売り手市場だ。とほほだぜ。

18時過ぎ、うちに戻って、仔猫たちに餌を与え終わり、出発の準備をしていたら、18時25分に大家さんから電話が来て、うちから3分の路地で集合した。

伊良部島の佐良浜地区から宮古島の平良港周辺迄はタクシーで約30分で3,000円位かかる。
19時前に宮古横丁のあるホテルアートアベニューに到着したら、そこは既に自家用車やタクシーで渋滞していた。


ホテルの1階に「焼き鳥屋、タイ料理屋、韓国料理屋、琉球創作料理屋、鉄板焼き屋、創作ゴーヤーチャンプルー屋、炉端焼き屋」の7つの店が入っており、各店舗毎に15席程度のスペースがある。宮古でこういうフードコート形式の店は初めてだそうだ。が、既に満席だった。


暫く、焼き鳥屋で2人で立ち飲みしてみた。
隣にTVのCMで良くみかける沖縄のコメディアン『護得久 栄昇』さんが座っていた。
 
 
俺 「あのコメディの人が来てますね。TVでよく見る」

大家Nさん 「いやいや、あの人はプロの沖縄民謡歌手なんだよ。ハハハ」

俺 「えー! そうなんですか。てっきりお笑い系の人かと思っていました。
  でもあの人を見るといつもマンゴー農園のYさんを思い出しますよ。似てますよねー」

大家Nさん 「いやー、全然似てないさー」 
Yさんと、大家さんは中学校の同級生だそうだ。

俺 「そうですか? 『ザ 沖縄のおっさん』という感じの容貌が似てるじゃないですか。ハハハ」

大家Nさん 「んー、そうかー?
  あっ、奥の席が開いたから行こうか。
精算おねがい!」

そうやって、2人で3つの店をめぐり、21時迄色々な料理をつまみながら
 
色々な泡盛のソーダ割りを飲んだ。
 

俺の予想では、この後大家さんの行きつけのスナックあたりに移動し、24時頃に帰るパターンだと思っていたが、大家さんから意外な提案が;

大家Nさん 「明日はレンタカーの仕事があるんだよな。
  じゃあ、今日はこれ位で帰るとするか」

俺 「(おおー、こんなに早く解放してもらえるんだー)
  そうですね、明日も仕事なので。
  Nさんはこれからどうされるんですか?」

大家Nさん 「今日はこれから伊良部島に戻り、別の飲み会があるから、そっちに参加するさー」

俺 「お疲れ様です」 

(助かったー!)

大家Nさん 「じゃあ、これからもちょくちょく行くかー。ハハハ」

俺 「ハハ、ありがとうございます」 丁寧にお辞儀した。
(いやいや、そんなに頻繁にこの人と飲みに行ったら確実に肝臓を壊しそうだ!)

その後2人で外にでてタクシーを拾って伊良部島に戻った。
今夜はなんとか、早く帰れて、大家さんとの付き合いも果たしたぞー。


翌週の火曜日、エアコン修理のAさん(男、30代後半、伊良部島出身、電気工事士)がやってきた。

修理屋Aさん 「こんにちは、Nさんの依頼で来ました。
  これが室外機ですかー。
あー、これはもうダメですね。塩害で本体の底の部分が腐食して崩れてますし」

俺 「そうなんですか?? 一応電源入れてみましょうか。ポチっと」

修理屋Aさん 「ダメですね。ファンも回らないし。
  そもそも、このクーラーは9年目なので、もう無理ですね」

俺 「?? 内地だと10年位は使えますけどね??」

修理屋Aさん 「いやー、島では塩害がひどいので、普通5年が限界ですかねー。ハハハ」

俺 「やはり、塩害に弱いんですか??」

修理屋Aさん 「勿論、このクーラーも塩害仕様ですけどね。ハハハ」

俺 「なるほど。じゃあNさんにそれを説明してあげてもらえますか。
  私は決定できないので」

修理屋Aさん 「了解です。
  『あー、Nおじさん。これはもうダメだね。うん分かった交換しておくよ』
  はい、交換する事で決まりました」

俺 「Nおじさん?? 大家のNさんとお知り合いなんですか?」

修理屋Aさん 「うちの母がNさんの奥さんの姉なんですよ。ハハハ」

俺 「なるほど。ご親戚なんですね。
  Nさんお酒好きですよねー」

修理屋Aさん 「そうですね。僕も大酒のみなので、昔はよくNおじさんに飲みに連れていってもらいましたが。
  最近は奥さんに厳しく管理されているようで、昔のようには自由気ままには飲めないようですよ。ハハハ」

俺 「なるほど」
(だから、飲みに行く『言い訳』が欲しくて、俺を誘ってくれたんだ、納得!!)

この後、Aさんに色々な「島の裏事情」を聴きながら、約1.5時間でクーラーの取り換え工事が終わった。
勿論新しいクーラーも「JRA耐塩害仕様」だった。
 

俺 「ありがとうございます。助かりました」

修理屋Aさん 「ハハハ。何かあったら電話下さいね」

よーし、大家さんと飲みに行ったかいがあって、エアコンが新品になったし。

これで今年も夏が越せそうだ。ハハハ。



◆黒3を養女に
俺は元来犬派なのだが、離島では近所の猫たちと仲良くする事になった。

最近、猫たちも増えて俺も忘れがちなので続柄をまとめてみた。
 

3月下旬、マンゴー農園のY社長から電話が来て、「4月~7月の間週1日でもいいのでアルバイトに来て欲しい」との事だった。現在レンタカーの仕事で手一杯なのだが、Yさんには色々な意味でお世話になったので、俺は引き受ける事にした。
(詳細はブログ「終の棲家は南の島?(5) 宮古島へ移動」 参照下さい)


Yさんは去年マンゴー農園でノラ猫を飼っていたが、23年4月頃から行方不明になった(多分虹の橋を渡った)ので次の猫を欲しがっていた。それを思い出して俺はYさんに聞いてみた;
俺 「あの猫はその後戻ってきましたか?」

Yさん 「いやー、帰らないさー」

俺 「うちの近所にノラの仔猫が一杯いるのですが、1匹要りますか?」

Yさん 「おー、早く持ってこい」

俺 「色々な模様の猫がいますが、どんな色がいいですか?」

Yさん 「不細工でなければ、なんでもいいさー。
  雌がいいな。自分一人でも生きていけるから」

俺 「了解しました」

まゆげの仔猫達(第0グループ、23年5月生まれ、4匹)のうちメスが2匹いる。
うちにエサを食べにこない第0グループや第3グループの仔猫達は、いつも腹を空かしているようで、ガリガリだ。
そのうち黒3(雌、黒、小柄、美猫)がどうやら妊娠しているようなので、この子を養女に出す事にした。
 
農園にもらわれればエサには困らないはずだ。

翌朝、俺は第0グループの縄張りにでかけて行き、いつものようにキャットフードを与えた。
第0と第3グループの仔猫たち計6匹が一生懸命食べている時に、黒3をそっと抱き上げてうちまで連れて帰り、ペットキャリーに入れた。
その後、車で10分でマンゴー農園に移動して、農園の倉庫内部に居たYさんに説明した。

俺 「Yさん、メスの仔猫を1匹持ってきましたよ。
  一番きれいな黒ネコです」

Yさん 「えー、黒かー。
  黒じゃないのが良かったなー」

俺 「(今頃言うかー??)
  この子が一番きれいな仔猫なんですよ。今妊娠しているようだし」

Yさん 「まあ、いいさ」

俺 「じゃあ、キャリーから出しますよ」
黒3はここに来る迄にとても緊張していたようで、キャリーから出してやると、直ぐに走り去り倉庫の隅に隠れてしまった。

Yさん 「まあ、そのうち出てくるさー」

俺 「そうですか。じゃあこの子を宜しくお願いしますね」
俺は黒3を養女に出して、その日は家に帰った。

2週間後、1年ぶりにマンゴー農園のお手伝いをした。
1本の枝に10個位ついたマンゴーの実から大きくて良い実を1, 2個選び、後は摘花してしまう。
最後に、残した実を1個ずつ糸で吊り下げて行く作業だ。
午前の仕事の合間の休憩中、Yさんに聞いてみた;

俺 「あの仔猫はその後どうしてますか?」

Yさん 「そうそう、あの猫は窓の隙間から外に出たようで、なかなか戻って来なくてなー」

俺 「そうなんですか。逃げてしまったんだ」

Yさん 「それで、昨日農園の入口の道で倒れてたんだ」

俺 「えっ」

Yさん 「何か悪いものを食べたようで、口の周りにゲロを出していたさー」

俺 「そうでしたか。(この辺は普通に農薬とかが撒いてある)
  可哀そうな事をしましたね」
一番きれいな娘が一人で虹の橋を渡ってしまったようだ。(合掌)
 

Yさん 「代わりの仔猫を連れてきていいから」

俺 「そ・そうですか。探してみます・・・」

ここの農園にもらわれればエサには困らないはずだと思ったのだが、他の仔猫を連れてきても、ここで生き延びていけるのだろうか??

離島の猫が生き残っていくのも大変だなー。