俺はまたクビを言い渡された。
◆社長が危険?
5月下旬、我がままな会長(70代前半)から毎日のように叱責され、社長見習い中のS社長(40代半ば)がノイローゼや対人恐怖症になったそうで、電話にも出なくなってきた。
俺は会長から何度か電話で言われた事がある;
会長 「若いS社長を鍛えてるんじゃー! あんたからも色々指導してやって欲しい」
俺 「いえいえ、指導などとは大それた事はできませんが・・・。気が付いた時にはご報告させて頂きます」 このじじいはマウンティングしないと気がすまない人なので、一応謙遜はしておく。
会長 「どうしてもSが使い物にならないのならば、あんたが代わりに社長をやればいい!」
俺 「いいえ、私はもう年寄りですので、社長は若いSさんが良いと思いますよ!ハハハ」
(この我がまま会長と毎日直接のやり取りは疲れるから、是非避けたいしー!。ハハ)
◆老害の会長
我がままな会長からまたやっかいな電話がきた;
会長 「S社長は一体何をやっておるんじゃ。さっき、も𠮟りつけておいたわい!」
俺 「そうなんですかー・・・」 叱るだけでは人間は委縮してしまい、能力が出せなくなるのになー。
会長 「ところで、わしの計画が外れ市役所との提携が延期となり、当面売上の見込みも立たないので、あんたの住宅補助手当等を減額する事にした」 このじじいは突然無茶苦茶な事を言い出す。
俺 「えっ、それは困ります」
会長 「じゃあ、どうする?」
俺 「どうするといわれましても。
住宅補助手当は入社時に合意した条件ですので、提携の延期とは無関係で払っていただかないと。証拠の文章もありますし」
(年寄りは数か月前に自分が言った事を平気で忘れる。俺もそうだからよく分かるが(苦笑)
会長 「勝手な事いいやがってー。じゃあ、本当に証拠があるならば、文章で提出してみせろよ!」
(「認知症の周辺症状のひとつに、暴言と暴力がある」そうだ)
うちの父はとても温和な人だったが、80歳前から認知症がひどくなった。
特養に入所後はドンドン怒りっぽくなり、所内の同年代の人達とよく口論をしていたそうだ。
俺 「分かりました。では、文章で提出させて頂きます」
その後すぐに、入社2ヶ月前から入社直後迄のeメールのやり取りなどを1つづつ列記して「嘆願書」という形で会社に提出した。
翌日S社長から提案のメールが来た。
S社長 「会長から妥協案を引き出しました。なんとかこれでご理解下さい。
金額は補助手当:8000円+交通費5000円で計13000円です」 やはり、認知症で忘れていたようだ。やれやれだぜ。
その内容を記述した「雇用契約書の改訂版」も送られて来た。
俺 「本来の合意内容は住宅補助手当が20000円で、交通費が実費約3000円で、スマホの通話放題費用は1650円、合計24,650円でしたよね??
金額の多寡よりも、『一旦両者が合意した事をどうしてもう一度交渉する必要があるのか』が理解できません。それについて回答を希望します」
翌日S社長から回答が来た
S社長 「会長に確認しました。もう一度交渉する理由は、
マンゴー農園に(業務委託契約書を締結していなかったので)Kさんが作業補助した2ヶ月間の金額が農園から回収できませんでした。なので、その不足分の為だそうです」
俺 「(えー、会社がマンゴー農園とどんな業務委託契約を約束したのかは知らないが、それは俺の雇用契約の手当等とは無関係だろ??
こいつら頭がおかしいのでは?? もうまともに議論するのも嫌になってきたぜ・・・。トホホ)
俺 「そうですか・・・。
ではとりあえずその妥協案でお願いします」
◆解雇通知
翌日30日午後、S社長からメールで急な指示が来た;
S社長 「スーパー台風2号接近の為停電の恐れがあるので、Kさんが宮古島の倉庫会社へ移動して、冷凍保存してあるマンゴーを別の冷凍庫に移動して下さい」
俺 「(そんな話は昨日中に言えよなー・・・)
現在強風の為、バイクで伊良部大橋を渡る際に横風で転倒の可能性が多く、危険です。
タクシーも台風対策のお客様で満杯だそうです。代案として、自家用車でならば移動は可能ですが」
数分後S社長から意外な返事が来た。
S社長 「自家用車での移動は会社で禁止されています。タクシーも一杯ならば、農園か提携会社に依頼して車を出してもらって下さい」
そう言えば、4月初旬にS社長が宮古島に来た際に、一緒に俺のオープンカーで日帰り出張した事を何故か会長が激怒して、
『外車のオープンカーだー?? そんなものは宮古島では必要ない。すぐに処分しろ!
車が必要ならばわしが軽自動車を支給してやるわい』 と言っていたそうだ。
それ以来宮古島支社では、バイク通勤はよいが、『自家用車の使用は禁止』とされていたな。自分の価値観を他人に押し付け過ぎやー。これだから老人ってやつは! トホホだぜ。
仕方ないので、電話でS社長に最終代案を提案した。
俺 「今日は関連会社の人達も台風対策の準備で忙しいので、我々の為だけに車で送迎などしている暇はありませんよ。
明日は暴風で伊良部大橋が閉鎖される見込みなので、自家用車でも移動はできません。なので、今日中に宮古島の冷凍庫の作業を実施するならば方法は1つしかありません。
『風が一時的に収まったので私がバイクで宮古島へ移動した』事にして、実際は自家用車で移動して台風対策を実施します。この事は会長には絶対言わないと約束して下さい」
S社長 「たしかに、僕ならば商品を守る為に最後はそうしますが。Kさん1人にそのリスクを負わせるのはー・・・」
俺 「他に方法が無いですよ。これでいいですね?
会長には絶対言わないと約束して下さいよ!」
S社長 「分かりました。約束します! それでお願いします」
俺はすぐに自家用車で伊良部大橋を渡り、宮古島の倉庫で台風対策の処置を完了できた。
その日の17時半、突然S社長から「解雇予告通知書」が届いた!
何故今日なの?? 台風準備で忙しい時に・・・。
俺はこれ以上彼らと関わるのがバカらしくなって来たので、一切反論せずに
「解雇理由証明書も交付して下さい」、と依頼のメールを出しておいた。
そう言えば残業手当も全然支払われないし、まんまブラック企業やんけー!
まあ、6月末で俺は自由だー!(笑)。
◆関係者にご報告:
翌日農園の台風対策作業をお手伝いした後、俺はYさんに報告した。
俺 「昨日、突然会社をクビになりました」
Yさん 「?? なんで??」
俺 「分かりません。
会長が何かを怒っているそうですが・・・。詳細は不明です」
Yさん 「んー。
あんたはホテルで働けー! その方が合ってるし、収入もいいだろ。
伊良部島に新しい高級ビラがオープンして、求人募集していたさぁー」
俺 「そうなんですか。ありがとうございます。応募してみます。
Yさんには色々とお世話になりました。ありがとうございました」 深くおじぎしてから農園を出た。
その後、大家のNさんにも報告に行った。
俺 「報告があります。
私は東京の会社を辞める事になりました」
N大家 「ふーん、それで、内地に帰るの?」
俺 「いいえ、伊良部島に残ります。
お借りしてる家はとても気に入っていますので、このまま住み続けてもいいですか?」
N大家 「俺は全然かまわないさぁー」
俺 「ありがとうございます。では今後も宜しくお願いします」
N大家 「Yは何と言ってるの?」 N大家とYさんは同級生で、俺をN大家に紹介してくれたのはYさんだ。
俺 「伊良部島で新しいホテルが求人しているからそこに行けばいい、と言われました」
N大家 「そうさぁー。今日も新聞のチラシに新規オープンホテルの求人募集があったよ」
俺 「そうなんですね。じゃあ応募してみます」
N大家 「空港の設備担当の仕事も紹介できるけど、まず電気工事士の資格を取ってからさ」 N大家は空港で勤務していて、定年退職後も週に2, 3日は空港でアルバイトしているそうだ。
俺 「ありがとうございます」 深くおじぎしてN大家のビニールハウスを出た。
これで住む場所は確保できた。やっぱり、伊良部島ではオーシャンビューやでー(笑)
俺が赴任時に会社が借上げ社宅の手続きをせずにモタモタしていたので、「自分で大家さんと直接に賃貸契約を締結」しておいてよかったー(苦笑)。
帰宅してから例の高級ビラへメールで履歴書を送付し、応募してみた。
翌日高級ビラから返信が来た;
「この度はご応募頂き、誠に有難うございます。
K様のご応募情報から社内で慎重に検討しました結果、
K様のご年齢ですと、どうしても弊社でイメージしているスタッフチームの造成につきまして、バランスが取れない状況でございます。
誠に残念ながら今回はご期待に添いかねる結果となりました」
との回答だった。
「おいおい、少子高齢化の離島なんだから、もっと年寄りを活用しろよなー!」
一般的に宮古島の若者達は、高校卒業前後に那覇へ移動し就職か大学へ進むので、宮古島には19~35歳位の働き手がとても少ない。那覇での仕事に馴染めず30歳過ぎてUターンする男性もいるが、多くはない。
その代わりに老人達は80歳位迄のんびりと労働を続けている。男は漁業や農業や配送業務。女は飲食店やサービス業の手伝い等が多いようだ。
もう一つの空港設備保全は、電気工事士の資格を取るのに半年以上かかるようなので、今回はパス!
◆とりあえずタクシー運転手?
コロナが収束後、宮古島では急激な観光客の回復の為、「ホテルのスタッフ、タクシー運転手、飲食店の店員、等が慢性的に人手不足状態」と言われている。
今回、他に面白そうな求人はなかったし、近い将来「自動運転システムが確立されれば、タクシー運転手という職業は無くなる」ので、
次が見つかる迄の間「老人タクシードライバー」として初体験してみる事にした。(笑)
勿論、「二種免許」は持っていないので、教習所か、一発試験で免許を取る必要がある。
ネットで調べたら、宮古島には一発試験を受ける試験場が無く、那覇まで飛行機で通う必要があるので、これは諦めた。
一方、自動車教習所には「合宿制」というのがあり、都市部の若者達が四国、九州や沖縄方面等に来て、リゾートしながら約1週間で免許をとるようだ。
気分転換に俺も九州辺りの教習所に合宿制で行ってみるのも面白そうだと思った。
しかし、6月末迄は建前上「宮古島で引継ぎなどの業務中」なので、会社から急に業務指示が来て、「宮古島に居ない」のがばれたら面倒になるので、これも諦めた。
◆猫たちにエサを!
それに、毎日外猫達に餌も与えんとあかんしなー。(笑)
結局、宮古島にある普通の教習所に入学し、6月中に二種免許取得を目指す事にした。
教習費用は「最短で208,800円」だそうだ。九州の合宿制(約24万円、飛行機代別途必要)より随分安いかも(笑)
さあ、6月からはまた学生になって、一生懸命勉強してみるか。認知症予防の対策にもなるし。(笑)
離島生活、焦ってもみてもどうなる訳でも無いしな。ハハ。