俺は28日に会社をクビになったみたいだ。

 

 

◆意外な通知

 28日ランチ後に午後の農園作業を手伝いに15時からマンゴー農園に戻ったら、農園社長Yさんから意外な事を言われた。

Yさん 「さっき、あんたのところのS社長と電話で話してたら、『Kさんの給料を払えないからKさんはクビにする』と言ってたさぁー」

 

俺 「えっ!! なんですかそれ??」

 

 

 

◆全体像

 俺の宮古島での仕事の関係はこんな感じだ;

 

会社:

 東京にあるスタートアップ企業。「IT系の組み込み開発等」を受託している。

創業者のM会長(70代前半、福岡出身、元松下電器の名物営業部長、ノリがよく押しが強い、朝令暮改が多い)がコロナ前に「宮古島のマンゴーを首都圏で販売するECビジネス」を構想して、計画に着手。強力な営業ネットワークを駆使して、大手百貨店、等で「幻のキーツマンゴー」をブランディング化に成功直前。

実務はS社長(45歳、福島出身、元ITエンジニア、我儘なM会長のおもりで関係各所との調整に疲労困憊、結構アバウト、詰めが甘い)が回している。

 

農園:

 社長のYさん(64歳、伊良部島出身、元漁師・大工、面倒見がいい、親分肌、超頑固者、早とちり&短気)が、13年前からマンゴー農園始めた。主に売れ筋のアーウインマンゴー(別名アップルマンゴー、宮崎マンゴーもこれの種類)を栽培している。

 

M会長と仲良くなり、受託生産で幻のキーツマンゴーも造り始めた。

しかし、「宮古島のホテル建設ラッシュ」の影響による慢性人手不足状態で、マンゴー栽培を拡張できないでいる。

 

俺(62歳、兵庫出身、元自動制御コンピュータのエンジニア、中国や京都で多くの新規事業立上げを経験、スキューバダイビング歴34年):

会社からの依頼で「新規事業立上げの現地責任者」として3月に宮古島(正確には伊良部島)に赴任。農園の生産を安定させる為に、1日の半分以上をマンゴー農園で「研修」という名目で作業補助中。

今後、宮古島市の中心部に「マンゴー」の販売店をオープンさせ、宮古島に群がる日本人観光客やインバウンド観光客へマンゴーを爆買いさせる「仕組み」造りにチャレンジの予定。

 

 

 

◆販売店が中止?

 会社から依頼されたのは、5月から宮古島の中心部で宮古島市が設置している「公設市場」

 

の一角を借りて「マンゴー」を販売する計画の立上げだった。

その為事前に、公設市場の下見、厨房機器の企画&見積依頼、収支計画、アルバイト募集方法、勤務スケジュール、その他の観光ポイントの調査・比較リストの作成、等を実施して入居決定を待っていた。

 

28日昼、マンゴー農園での午前の作業が終わり、島に数軒ある「ランチが食べれWi-fiがつながる場所」の1つ「レストランさしば」で食事をしていたら、S社長からメールが届いた。

「公設市場の採択が不採用になったということを行政から伺いました。 次の一手を考えております」 と言う情報だった。

 

この人は社長なのに、部下である俺に丁寧語でメールを送ってくる。推測できる原因はM会長・Yさん等周囲は年よりばかりなので色々気をつかっておられるようだ。(苦笑)

 

俺 「残念でしたね。では次の候補地については、私が先日提案した調査・比較リストを参考にして頂ければ幸いです」

 

その直後、S社長から電話がきて、俺に依頼があった。

S社長 「先ほど農園のYさんと電話しました。パソコンが大嫌いなYさんとの間で、色々と問題が発生しているので、相談したいです。

Yさんは当社から支給した農園のパソコンをKさんが勝手に使用して、私からYさん宛てのメールを無断で自分のスマホに転送していると誤解しておられるようでした。実際には私からYさん宛のメールはKさんにもCCで送付していますから、勝手に転送する必要等ないのですが・・・、トホホ」

 

俺 「そうですか。大変ですね。

  私の意見としましては、

  Yさんは会社のボスはSさんで、農園のボスは自分だと考えています。

  なので、Sさんと私が農園の『インボイス制度への対応方針』等を直接話し合って、私から結論をYさんにお伝えするような場合、『自分が中抜きされた』とYさんが早とちりされてしまい、

不愉快になってへそを曲げてしまわれるみたいですね」

 

S社長 「えー! そうでしたか。

  じゃあどうすればいいんでしょうかね?」

 

俺 「Yさんに業務の提案をする時は、誰がどのようにやるのか? つまり『手法や手順』を伝える前に、何故それをやる必要があるのか? つまり『目的』を先に説明する必要があると思われます。

なので、一度YさんとSさんと私の3人でWebミーティングを開き、今後は農園でも;

1)FAXは使わずにeメールで情報を伝える。

2)インボイス制度に対応する為、伝票等をデジタル対応させる手順を決める。

という話し合いをすればいいのではと思われます?」 

 

実際に、普段でもS社長は、「状況」と「問題点」だけを丁寧な言葉で伝えるが、S社長から相手に「依頼したい事項」を省略してしまい、相手が「自分で行間を読んで」対策を推測して動いてもらいたい、というような言葉足らずな説明をするので、俺も戸惑う事がよくある。

 

S社長 「そうですよね。ではWebミーティングの日時はいつがいいですかね?」

 

俺 「明日からゴールデンウイークなので、私の次の出社日は5月2日です。YさんはGW中も休まずに農園に来るそうなので、2日の10時休憩の頃が一番時間が取りやすいと思われます」

 

S社長 「了解です。ではYさんに2日10時と伝えておいてもらえますか。 それと農園のパソコンでZoomが使えるように事前設定もお願いします」

 

俺 「了解です。

  あと別件ですが、私の1回目の給与振り込みありがとうございます。給与明細をみましたが、残業手当が入っていませんでしたので、再度確認お願いします」

 

S社長 「はい、残業については、M会長から色々横やり入っているので、困っていまして・・・。

  別途メールでご相談させて下さい」

 

俺 「ご相談??

  そうですか。ではメールお待ちします」 S社長も我儘会長のおもりが大変やなー、ハハハ。

 

 

◆遺産整理

14時半レストランを出てバイクで農園へ戻る途中に大手不動産仲介会社から電話が来た。

3月初旬に依頼した「父の遺産である実家の売却」の件だった。

 

Fさん 「ここ2ヶ月間xxxの状況でして、客付けがうまく進んでいないのです・・・。

 明日からのゴールデンウイークが最後の山場とみていますので、売主様には大変申し訳ありませんが販売価格を3780万円から3480万円に値下げをさせて欲しいのですが・・・。

当社としましては、最終着地金額は3400万円と予想しています」 とても言いづらそうだった。

 

俺 「状況理解しました。

 素人考えですが、3780から3480への値下げならば1割に届いていないので、買主候補たちへのインパクトが少ないのでは? いっそ3380に下げて、最終着地を3350位に交渉すればいいのでは?」

 

Fさん 「それは勿論! 売主様にそこまで譲歩して頂ければ、当社もより一層頑張れます、はい!」

 

俺 「ではそれで行きましょう。GWで買主候補を多く捕まえて、5月中に売却を完了させて下さいね」

 

こうして、俺は農園へ戻った。

 

 

◆転職のアドバイス

15時に農園に戻り作業補助を再開した時、Yさんから上記のような「超意外な」通達をされた。

俺の給料が払えない? クビ? どうしてそれを俺に言わずにYさんに言う必要があるんだろう?

それが事実ならば、S社長も相当な疲労困憊でそろそろ危ないのかもなー・・・。

と言うのが正直な感想だった。

 

Yさん 「会社を止めても、午前中だけここにアルバイトしに来ていいさぁー。

  時給は1000円しか払えないけどね」 マンゴーの実を吊りながら、話が続いた。

 

俺 「お気遣い、ありがとうございます」

 

Yさん 「でも、あんたなら(外国人向け観光ホテルの)フロントでもすぐに採用されるだろうな。

  そっちの方が給料はいいんじゃないか? 宮古島では今大手ホテルは人は足りなくて困っているみたいだからさぁー」

 

俺 「なるほど、そうかもしれませんね」 ホテル業務は京都で少し経験したが、若者の方が向いてるだろうなー・・・。

 

Yさん 「それとあんたの家主のNさんが『空港ではいつも求人募集がある』と言ってたな」

 

俺 「そうですね。そんなアドバイスを頂いた記憶があります。

  Nさんは今も空港で働いておられるんですか?」

 

Yさん 「定年退職した後に、再雇用制度で週に何日かは勤務しているさぁー」

 

俺 「なるほど。ありがとうございます。

  以前宮古島のタクシーの運転手さんに聞いたのですが『夜間のタクシーや代行の運転手が全然足りないので、いつも募集しているよ』との事でした」 これは全経験がないので、一度チャレンジしてみたいかも。(笑)

 

Yさん 「そうさぁ。島では犯罪が殆ど起こらないから、警察はやる事が少なくて、飲酒運転の取り締まりに全力をかけているからなー」

 

俺 「犯罪、少ないんですね?」

 

Yさん 「そうさぁー。物を盗んでも、島の外へ逃げる方法が無いさぁー。ハハハ」

 

俺 「なるほど」  シンプルな理論に納得した。

 

Yさん 「まあ、あんたなら色々仕事は探せるさ。

 でも会社もあんたの給料が払えないようじゃあ、今後大変だよな・・・」

 

俺 「そうですよねー」  しかし、転職後1ヶ月でクビになったと伝えたら、彼女に笑われるかもなー。

 

Yさん 「ショックだろうけど、なんとかなるさぁー」 結構気にかけてくれているようだ。

 

俺 「そうですね。ありがとうございます

  実は明日から2泊3日で彼女が遊びに来るんですよ」

 

Yさん 「3日で帰るのか? ずっといればいいじゃ」

 

俺 「いやー、彼女は京都に仕事があるので」

 

Yさん 「何を言うかー。結婚すればいいさぁー」

 

俺 「いやいや、私はもう結婚はいりませんよ。ハハ

  それに彼女には問題があるし」

 

Yさん 「問題? 何がー?」 親分肌で世話焼きが好きだ。

 

俺 「彼女は私より32歳年下なんです」

 

Yさん 「32歳下!! 加藤茶みたいだな。

  なら、ホテルに泊まれ! あんなボロ家はダメさぁー」

 

俺 「いやいや、私は芸能人でもないし、資産も無いので。

 彼女は古民家好きだと思いますよ、多分。ハハ」

 

Yさん 「彼女の親は何て言ってるの?」

 

俺 「親には『付き合っている人がいる』と私の事を伝えてあるそうですが、年齢だけは言って無いそうです。

  彼女の母親は私より2歳年下だそうなので。

  私が親だったら、聞いたら怒るでしょうね。ハハ」

 

Yさん 「そうだろうなー。俺も怒るさぁー」

 

こんな雑談をしながら、マンゴーの実を吊っていく。

吊る目的は、「陽に当てる、葉や他の実に触れてキズものにならないようにする、マンゴーの重さをささえる」の3つだそうだ。

この農園には7棟のパイプハウスがあり、1棟には6列 x 17本のマンゴーの木が植えてある。1つの木には30~50枝があり1~2個の実が成っているので、全部で4万個~7万個のマンゴーが収穫できるようだ。

そのマンゴーの枝全てに対し「葉、花、小さい複数の実、1つの大きな実」と4回吊る作業が発生するので、マンゴー栽培は手間がかかるようだ。

 

 

さて、ゴールデンウイークが終わったら、会社に最終確認を入れて、

退職の手続きと転職先探しでもするか。

 

離島生活なかなか落ち着かないでー。ハハハ