2021年2月23日(火)、

 父(91才)が痴呆症で入所している「特別養護老人ホーム(特養)」の管理者から電話が来た。

「車椅子から転倒している所を発見された。その時は異常がなかったが暫くして本人は左足に痛みを訴え始めたので最寄りのK救急病院で精密検査をします」と言う事だ。

 

◆背景:

・父は2017年から兵庫県の実家近くの特養に入所している。当時は母がガンで他界した後歩行が出来なくなり「要介護5級(一番ひどい状態)」と判定されていて、

「宅配弁当配送者x1人 + 介護ヘルパーx2人 + ケアマネジャーx1人 + 訪問看護士x1人 + かかりつけ医師x1人」の6人がかりで在宅介護を受けて生命を維持し、特養への入所を待っていた。

入所までは通常3年待つ必要があると言われているが、約1年で入所できたのはとても幸運だった。

 

・利害関係者である「姉63才は東京都在住。弟58才は愛知県在住」で、京都在住の俺(長男)が兵庫県に一番近いので、父関連の窓口は俺が代表で実施している。毎年、役所への書類作成、各種費用の送金、空き家の掃除、庭の雑草刈り、等結構重労働かも。(苦笑)

 

・弟は幾つかの利害関係が折り合わず、この3年程は(すねて?)音信不通になっている。具体的には;

1)自分が大学受験に挫折した劣等感の裏返しで、他の2人(姉と俺)より母から認められ評価してて欲しかった。

2)嫌がる父を愛知県の特養に入所させたかった。

3)父の面倒と父のお金の管理は弟の嫁に看させたかった。

4)父名義の「実家の家・土地」を売却し、3等分して生前贈与で早期に現金が欲しかった。

5)上記1)の反動で息子を英才教育しようとしたが長男が大学受験に失敗し世間の目が気になった。

*このうち1)は亡き母の気配りで実現できたが、2)~4)は姉と俺が反対で却下されたのがどうしても気にいらないようだ。(苦笑)

 

 

◆23日(火)、転倒事故発生→入院:

13時 特養の管理者から2回目に詳細の連絡が来たので、急ぎ姉と弟にグループLineで通知する。

 

俺: 父が骨折したそうです。

日時: 本日午前中

場所: 特養内(食堂?)

状況: 車椅子から転倒した。

その直後は特に痛みが無かったが、暫くして父が強い痛みを訴え始めたので救急病院で検査実施。

検査結果: 大腿骨転子部骨折(太腿の付け根に近い部分)

対策: 即入院。今後手術が必要になる見込み。

家族の対応: 手術の場合、同意書への署名が必要となるので、私Kが救急病院へ行く事になります。

但し、本日は祭日で急患として診断を受けたので、専門の整形外科の医師が不在のようで。

症状や手術内容の詳細説明が聞けない可能性がある為、私が同席するのは明日の午後になる見込みです。取り急ぎ。

 

姉: 御手数かけます。しかし、どうして、骨折なんてびっくりです

俺: 何故父が車椅子から転倒したのかは、まだ不明です。

 電話をくれた特養の管理職の人は「何かを拾おうとしたのかも?」と言ってました

姉: あー、、、(驚き)

俺: 今、病院に付き添ってくれている特養の看護師さんから再度電話がありました。

 面談日時:  本日は整形外科の医師が居るが、急患を担当しているので、話をする時間が取れない。

明日の朝に救急病院の看護師から直接に電話が来るので、何時に打ち合わせするのかを決めて下さい、との事でした。

手術の有無:  特養の看護師の話では、

「寝たきりの老人の場合は手術はせずに安静にしていれば良いが、お父様は車椅子で動きたがるので痛みがあり、手術を受ける必要があるだろう」

との事でした。

 

その後、救急病院の看護師と電話でやりとりし、24日11時に俺が訪問して医師から説明を受け、手術の合否を決定する事になった。

 

 

◆24日(水)病院訪問:

俺: 11時にK救急病院を訪問する為に、俺は9:45に車で出発するよ。

 Nは一緒に行くのか?

N: 行かなーい。

俺: 去年行った兵庫県尼崎市のお菓子屋にも近いから、どうせならついでに買いに行ってもええで。

N: えっ、リビエールにも行ってくれるの(きゃぴっ)

 あ、ダメ。昨日トミカのお買い物でお小遣いを使い果たしてしまったから、行ってもクッキーが買えない(涙)

俺: そうか、残念やったなー。じゃあ、俺は一人で行くかー

N: うー、じゃあ、お土産で買って来てくれるんだよね、、、

俺: 女性客ばかりの洋菓子屋に一人で入るのは嫌やー。

 仕方ないからNも一緒に行くなら、買ってあげてもええけどな。

N: 行くー!(きゃぴっ)

 

11時 救急病院に到着。

30分待たされて、整形外科のS医師(60才前後?説明は丁寧)、及び、H看護師長(40代?押しが強い)と約30分間面談。

「手術をしない(保存療法)場合」は、痛みが3ヶ月位続き、その間は安静にしておく必要があるので、特養には戻れない。なので、医師も特養の担当看護師も手術を勧めしている」という事実が判明した。

 

S医師: 手術の場合は金属のネジを入れて骨を固定します。それで多少動いてもよくリハビリもできるので治りも早くなります。

手術を選ばれる場合は、なるべく早い実施の方がよいので明日25日11:45に空きがあるので、おさえてあります。

保存療法か手術かどうしますか?

俺: 利害関係者があと2名います。

 姉は東京、弟は愛知県在住です。私が京都在住で一番近いので本日は私が代表で来ましたが、これから私がメールで状況と選択肢を報告し、2人の意見を確認してから最終的に決める必要があります。私個人の意見では手術の方に傾いています。

師長: そうですか、、、

 では、とりあえず今手術の予約を入れておけば、後でもキャンセルはできますよ。

俺: 分かりました。ではとりあえず手術の予約を入れておいて下さい。キャンセルの場合は本日中に連絡します。

父本人の考えも確認したいのですが、面会は可能ですか?

師長: コロナの関係で、現在入院患者との面会は禁止されています。

俺: (えー、ここまで来たのに、、、)

そうですか、了解しました。

 

父本人の顔を見る事もできずに手術の手続き書類に署名・押印だけをして帰る事になった。


元々俺は「父は91才の高齢者なので、今更痛い思いをして体内に金属を入れるような手術をする必要は無い」という考えだったが、結局「手術を選ぶしかないと姉弟に提案」する事にした。そうしないと、特養に戻れないし、、、

根本原因は骨粗鬆症なので、もし保存療法を選んだ場合、ひびが入った部分に余計な力がかかると、ひびがひどくなる事もあるようだ。

 

13時 面談終了。病院の待合室で待っていたNを連れて病院を出てランチ。

俺: 病院の隣に焼肉レストランがあるな。或いは洋菓子店迄移動するとモスバーガーもあったな。

N: 焼肉が食べたい!(やったー)

俺: OK。

 

隣の「熟成焼肉いちばん」に入り食べ放題ランチを注文。

 

Nは久しぶりの焼肉に気合をいれて色々と肉を選んで焼いている。

その間に、俺は姉弟へグループLineで手術の必要性を報告する;

どうせすねた弟はまともに返信してこないだろうから、時間期限を明記しておく。

 

俺: 明日手術を受ける方向です。

お願い:反対意見があれば本日15時迄に教えて下さい。

連絡が無ければ賛成と見なします。

症状:左大腿骨転子部骨折(ひび)

 

手術のメリットデメリットは、

A.手術しない場合、

メリット:手術の痛みがない

デメリット:3ヶ月間安静にする必要あり。

その後のリハビリで骨折前の状態まで戻すのに多く時間がかかる。

3ヶ月間は特養では受け入れ不可。(別のリハビリ病院で治療必要)


B.手術する場合、

メリット:治りが早い。

翌日からリハビリができる。

3週間後から特養で受け入れ可

デメリット:手術の傷痕3箇所(x 2-3cm程度)。

!希に持病(高血圧、心臓肥大、高脂血症)や合併症等で肺血栓等が出来て危篤化する可能性もある。

入院期間:3週間(救急病院では3週間が限度。その後は特養でリハビリ)

費用:治療費=3万円/月程度(高額医療控除適応)

入院費=1万円/3週間程度(医療保険適応)

以上、救急病院にて。

 

その後、気合一杯のNとたっぷりの焼肉に没頭していたら気づいたら14時近くになっていた;


俺: 今日Nはお仕事やったな。

 後10分以内に出発しないと洋菓子屋経由で京都に15:30迄に到着は難しいで。

N: えー、仕事に行く前に髪の毛を洗いたい。どうしよう。

俺: 髪の毛は仕事から帰ってから洗えばー、、

N: いやだー。

 じゃあ、リビエールは今回諦める。

俺: 次回いつ来るか分からんけど。ええんかー?

N: 仕方ないし、、(涙)

俺: 了解。じゃあ、15時迄に京都に戻るで。

N: そんなに時間かかるの?

俺: 高速道路を標準的な速度で走ればな。

 急げと言われれば、速度違反して速く走れば10分位は早く到着できるけどな(笑)

N: 怖いから、普通のスピードでいいっ!(怒)

俺: 了解です!(やれやれだぜ)

 

14:45 京都市伏見区の自宅に到着。予定より5分早かった。

 帰宅後Nは急いで洗髪し、準備して京阪電車で出勤。

 

 

Nが出かけた後、姉からLineで回答が来た;


姉: 高齢の場合、手術はしない、とききましたが、今回の場合はしたほうが、良いのですね!宜しくお願いします

俺: 確認ありがとうございます。そうですね。

特養の専属看護師も「手術をしてもらわないと、特養では受け入れ出来ない」との見解ですので、

手術をしないと別の受け入れ先を探す必要があります。

姉: とりあえず…助かりましたです…

 

弟は仕事中なのか?すねて何かが気に入らないのか?或いは、(自分の3年間の反抗的言動が)恥ずかしくてコメントできないのか?

グループLineの「既読」が1つしかつかないまま、返信が来ない。

58才のいい大人が。中学生かっ!(やれやれだぜ)

 


17:30 救急病院の担当看護師から最終確認の電話が入った。

看護師: ご姉弟から賛成は得られましたか?

俺: 姉は賛成の意思表示をしてくれましたが、弟とはまだ連絡がつかない状態です。

看護師: そうですか、もう職員の帰宅時間なので、できるだけ今決めて欲しいのですが、、、

俺: そうですよね。

では3人中2人が賛成ですので、多数決で手術実施に「決定」とします。宜しくお願いします。

看護師: 了解しました。もし明日にでも変更があればご連絡下さい。

 

 

◆25日(木)手術実施日


8:30 救急病院の看護師長から電話が来た;


看護師長: その後ご家族の方との連絡は如何でしょうか?

手術についてのキャンセルはありませんでしょうか?

俺: ???

 その件については昨日担当看護師さんに電話で

「過半数が賛成しているので手術をする事で決定した。宜しくお願いします」と言ったのですが、この情報は伝わっていますか?

師長: そうでしたか。担当看護師が聞き間違えたようなので、本日再度確認させて頂きました。

俺: 手術実施で決定していますので、宜しくお願いします。

師長: 了解しました。

 患者様は今朝の体温が37.5℃ありました。昨日ご説明させて頂きましように「人は骨折すると微熱がでますが。現在はコロナ感染防止の為、38℃を超えると手術が実施できない」事になっていますので、今後様子を見て判断させて頂きます。

俺: はい、お任せします。


師長: あと、「入院に関する書類」でまだご署名頂いていないものがあるので、ご都合の良い日時にご来院下さい。

俺: ??

 昨日30分近くかけて「指定された10枚以上の書類」に署名しましたよね。その中に入って無かったという事ですが?

師長: 、、、

 他にも必要な書類がありまして、、、

俺: 昨日も説明しましたが、私は兵庫県内ではなく京都在住のために、そちらまで行くのには1時間以上かかります。また仕事の都合で今後来院できる時間がなかなか取れないので、該当書類を郵送で送ってもらえますか。

師長:  お待ちください、、、

 済みませんが、この書類は郵送できない為、退院の時でもいいので、ご来院して署名下さい。

俺: ???

 (なぜ郵送できな程重要な書類なのに、退院迄確認・署名しなくて大丈夫なのかなー??めんどくさいなー)

了解しました。そう言う事ならば、次回来院時に署名させて頂きます。

(行っても父と面会できないのだから、当面行く気はないけどなー、、)

 

電話後Nに状況を説明した;


N: あのね、Kさん。

 病院勤務の人はみんなコロナ対応で疲れているんだよ。

私の働いているS病院も大変なんだよ(どやぁ)

俺: はいはい。(そっちかー)

N: はいは1回でしょ。

俺: はーい。(やれやれだぜ)

 

13:30 K救急病院のS医師から電話が来た;


医師: 予定通り手術が終わりました。問題はありません。

俺: ありがとうございます。

 では今後3週間はそちらで「痛みの治療&経過観察」をしてもらい、その後特養に戻りリハビリするんですね?

医師: 特養側はリハビリについてそのように言っていましたか?

俺: 昨日特養の看護師さんに直接確認しましたが、

 「保存療法の場合は3ヶ月間は特養では受け入れはできないが、手術を受けた場合はリハビリも含め特養で実施できる」との事です。

医師: そうですか。では特養に戻る時期も含め、今後は病院と特養と直接相談して調整します。

俺: はい、そのようにお願いします。

(話が長くない。この医師の思考力はまだまともだな(苦笑)

 

 

◆2月26日(金)術後の確認

 

11:30 今後の費用負担について特養に電話で確認する;


俺: 23日の転倒骨折について父がK救急病院で手術・入院しています。この費用について特養で適応できる保険があれば教えて下さい。

事務局: うちでは損害保険に加入していますが、「事故が発生した時にうちの所員がいた」のであれば適応されますが、お一人での事故であれば適応外となります。

俺: そうですか。では事故当時に職員の方がどうされていたのかはまだ聞いていなかったので、詳しく教えて下さい。

事務局: そうでしたか。それは申し訳ありませんでした。

 ではケアマネージャーのSがランチから戻り次第折り返し電話をさせます。

俺: 急いでいる訳ではないので、今日中にお願いします。

 

12:10 ケアマネのSさんから電話がきた。

S: この度は色々とご迷惑おかけして大変申し訳ありませんでした。

俺: いえいえ、父は24日に手術を受け、特に問題は無いと聞いています。

S: もう手術は終わったのですか??

 それも知らなくて、済みません。

俺: そうですか。忙しんですね。

 今日はいくつか教えて欲しいのですが、

緊急病院では入院は3週間以内しかできないそうなので、3週間以内に特養に戻りリハビリを受ける事になるそうです。タイミングについては病院と特養で直接話し合って調整してくれるそうです。

S: そうなんですか。うちにはリハビリの担当者は1人しかいないので、お父様をどれ位ケアできるか、、、

 それにお父様は痴呆症がでてきておられますので、怒りっぽくて、なかなか職員の言う事を聞いてくれないんですよ。ですので、術後に早期にうちに戻ってきて頂いても、十分な対応ができるとは思えなくて、、、

俺: そうなんですか。父は頑固ものですので、、、

 色々ご迷惑をおかけしてます(苦笑)

24日に特養の看護師さんに直接確認しましたが「手術を受けない場合は特養では3ヶ月は受入れは困難ですが、手術を受けた場合はリハビリも含め受入れが可能」との事でした。

S: うちの看護師がそうお伝えしたんですね。

 分かりました、後で詳細を確認しておきます。


俺: もう一つ、手術・入院の費用についてですが。

 「特養の保険が適応できるのか?家族が費用を負担しないといけないのか?」を事務局に確認したら「職員が一緒にいたら適応で、いなかったら適応外」と伺ったのですが、事故発生当時の状況を教えて下さい。

S: 事故発生当時は、9:30にお父様が一人で車椅子で食堂に来られたのを職員が目撃しています。

 9:35に食堂のテーブルとテーブルの間に倒れているのを職員が見つけ、2人ががりで車椅子に戻しました。

車椅子はブレーキがかかっておらず周囲はこぼれたお茶で濡れていたようです。

お父様ご自身は「お茶を飲もうとしてこぼしてしまった」と言われていたそうです。

俺: なるほど、こぼしたお茶を拭こうとして転倒したのですか?

S: そこは誰も目撃していなかったので不明です。

俺: そうですか、状況理解しました。では周囲に職員の方がおられなかったので保険は適応外という事でしょうか?

S: 私の理解では、うちで加入している保険の条件は、

 「職員の過失による事故の場合は適応可能。過失ではなく入所者様の不注意による事故の場合は適応不可」のはずですが、詳細を確認して再度連絡させて下さい。

俺: そうですか。それではお願いします。

 

1.5時間後 Sケアマネから再度電話が来た;


S: お待たせしました。保険の適応条件を確認してみましたが、やはりうちで加入している保険は

 「職員の過失による事故の場合は適応可能。過失ではなく入所者様の不注意による事故の場合は適応不可」という条件でした。お力になれず大変申し訳ありませんでした。

俺: 確認ありがとうございます。

 手術や入院の費用を家族で負担する場合、利害関係者である姉と弟に報告し同意を得る必要がありますので。

条件が分かりましたので、そのように報告して理解を得るようにします。

S: すみませんでした。

俺: 今後、入院完了のタイミングとリハビリについては、病院から特養に直接連絡をして調整してもらいますので、対応宜しくお願いします。

S: はい、分かりました。関係者に伝えておきます。

俺: 宜しくお願いします。

 

さてさて、痴呆症がでてからめっきり頑固者になった父はこれから3週間以内に無事特養に戻れるのやら(苦笑)

 

 

こんな父を見てきたこの5年間、俺はすっかり「痴呆症の患者が周囲にかける多くの負担と、患者自身の幸福感の無さ」を実感し、痴呆症への恐怖を覚えるようになった;


俺: もし自分がそうなった場合に、周囲にどれだけ迷惑をかけるかを十分実感できたし、家族との会話も全然喜んでいないし、食べる事以外に楽しみは感じ無いようだし、父が無駄に長生きしても本人が幸せには見えないし、、

 俺は「自分はムダに長生きするのが絶対嫌だ」と感じている。

!75才迄にピンピンコロリが理想やな!(どやぁ)

N: 嫌よ、Kさんがいないとつまんない。

 少しでも長生きしてもらわないと、、、

この間出雲大社で買った長寿のお守りを部屋にかけておこっと。(うふっ)

俺: おいおい、、、

 俺がぼける前に死ななかったら、延命治療はせずに、尊厳死させてくれよ。

N: ふーん、Kさんは今のうちに私を大事にしておかないと、ぼけてからも長生きさせるからねー(どやぁ)

俺: ひえー、、

    (やれやれだぜ)