薄ぼんやりと明けた空から、霧の様な冷たい雨が降っている。
右肩にカメラバッグ。
左肩に三脚ケース。
一歩一歩27キロが肩に食い込む。
パーカーのフードを被り俯いて歩く。
傘要らない。
外を歩くのは駅までだ。
これが俺の毎日で、
これが俺の仕事。
好きでやってる。
けど、
渋谷の先で地上に出た地下鉄は横浜向け。
雨は上がったようだ。
ドアが開く度に冷たい空気が入って来る。
席取りゲームに負けたスーツのおっさんが「むっ」としたまま立ち尽くす。
そんなに座りたかったのか?
俺はまだマシか。
「自由が丘で急行の待ち合わせを」
「お急ぎのお客様は」
別にいいや。
早く着いてもやることねえ。
喫煙所の場所もわからんし。
集合には充分間に合う。
だろ…
高架から見下ろすグレーの街。
遠い地平線が橙色。
じき晴れるんだろう。
多摩川の水量が多いなぁ。
隣の体格のいい白人が大きな指でいじるiPhoneの画面に放射状のひび。
どうして皆んなiPhoneのディスプレイ割っちゃうんだろ?
どうやったら割れるんだろ?
すごい混むんだなぁ。
ぎゅうぎゅう詰だ。
床に置いたカメラバッグが申し訳ない。
あ。
・・・いや、まぁ、いんだけど。
他人の趣味だし知らない人だし。
そういうことに寛容なつもりだし。
見たんじゃなくて『見えちゃった』
この白人さん
『芸』だ。
ふぅ~む。
シャキッとしない。
こういう日はいい仕事しちゃうんだよな。
てめえ女子高生エスカレーターでスカート抑えて振り向くんじゃねーよっ。
お前の後ろは俺しか居ねーよ。
誰も見ねえよんな青臭いケツ。
パンツ穿いてなくたって見たかねえ。
お金貰ったって見ねえよっ。
馬鹿にすんな。
ふんがー
ちょっといらいら。
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