ポラリス | 五月雨のち五月晴れ

五月雨のち五月晴れ

自作の詩などを発表していますので、読んで頂けたら嬉しいです。

流れ星を探していたんだ、君と二人で
「でも、前もって訪れる時期が決まっている
流星群じゃ、見つけても御利益がないと思う
いつ降ってくるのかわからない
孤高のひとつ星に願いを掛けてこそ
望みは叶うと思うんだ」
そんな途方もない僕のわがままに
君は嫌な顔ひとつしないで一緒についてきてくれた

厳しい現実の前で行き詰まっていた
この状況を変えるため
もう流れ星なんかにも、すがりたくなるほど
小高い丘の上、真剣に夜空を見上げ続けて
どれくらい経っていただろう

「あの星、さっきから全然動かない
他の星や月は、段々と位置を変えてゆくのに」
不思議そうに尋ねる君に、僕は答えた
「ああ、あれは北極星だよ
地球の自転軸の真北に位置しているから
常に沈むことなく
北半球のどこから見ても、同じ場所で瞬いてるんだ」
「そうなんだ、だからかな
あの星を見ていると、見守られているようで
なんだか安心する」
「かもしれないね、まだ船が遠方への
主な交通手段だった昔
嵐などで大海原で遭難したとき
帰るべき方角を教えてくれる、道しるべとして・・」

そこまで言いかけて
僕は言葉に詰まってしまった
思えば君は、北極星のような人だった
僕がどんな状況に置かれても
常に変わらず、寄り添って
穏やかな笑顔で、優しく見守っていてくれる
そんな確かな星があるのに
消えゆく儚い流星に
いったい僕は、なにを願おうとしていたのか・・

「そろそろ帰えろうか」
「えっ、でもまだ流れ星を見つけてないよ」
「もういいんだ、やっぱり望みは
自分の力で叶えるものだし、それに・・」
「それに・・?」
「もっと大切なものを、見つけることができたから」



>この冬に流れ星を探していて、思いついた物語です
明日はホワイトデーですね!いい日になりますように