立川流の真打・二ツ目の約50名が、談志と立川流について寄稿したものをまとめた一冊。文章を書かせると、その人となりがよく分かる。設立40年でこれだけの弟子を輩出したのだから、やはり凄い。他にこんな落語家はいないし、最後の部分にまとめられた談志の言葉も重みがある。談志の名前はきっと誰も継げないはず。それで良いし、それが良い。

 

 

安西水丸さんが生前に集めたアイテムを、写真付きで一挙に紹介した一冊。南青山のスペースユイにて開催された個展で発見した際は、その装丁に思わずにやりとした。

 

私の民芸好きは水丸さんの影響。後を追って、鳥取まで行ったり、都内でもいくつも買い集めた。後書きで娘さんが書いてるように、こうして並べてみると、とても水丸さん「らしさ」が映える。青山と鎌倉の事務所の写真が最後に載っているが、今でも当時のまま保存されているのか。そうだとしたら素敵だなと思った。

 

 

久々に読んだ歌人・穂村弘さんのエッセイ集。こういう力の抜けたエッセイを書かせたら天下一品。身の回りで起きた些細なことや、ふと耳に入った違和感のある言葉を、短くまとめて書く技術が凄い。どの話でも、情景がありありと浮かんでくる一冊。

 

 

ハードアクションの大家・矢月秀作さんによる新作。ここ数年で増えてきた貴金属強盗の裏側には半グレとヤクザがいて、それを追う側の視点で書かれている。潜入捜査から謙虚に至るまで、流れるような展開なので、スイスイ読める一冊。

 

 

単行本でも読んだが、10ページ以上に及ぶ赤江珠緒さんの解説が読みたくて文庫本でおかわり。2017年〜2020年の連載をまとめた本なので、コロナ禍の出来事なんかが懐かしい。サクサク読めるので、電車の移動中に最適な一冊。

 

 

松本清張の短編集。基本、人が死ぬのだが、なぜそうなるのか、どこに原因があるのか、どうやって殺害されるのかという「過程」に読み応えがある。地方の新聞社記者の話なんかは、自身の体験が色濃く反映されてそう。現代でも「分かるなぁ〜」とうなづいてしまう箇所が多数の一冊。

 

 

S&Mシリーズの第九弾。700ページもあるので数日かかったが、最後まで飽きずに読めた。森さん本人の経験が存分に活かされた舞台設定がまず良い。鶴舞の名古屋市公会堂には行ったことがないが、情景がありありと浮かんできた。今作は萌絵の好奇心に端を発した危なっかしい行動に少々苛ついた。それだけ読者の心を動かす筆力があるということか。

 

 

数字が出てくるだけで拒否反応を示し、聞こうともしない人が多い国民性だが、それが自身の損につながるので、ほんの少しでも聞く耳を持ちましょうね、ということを、あの手この手で書いた新書。

 

執筆時期が東北大震災の直後なので、原発関連の話は興味深く、森さんもある筋から意見を求められた、というのも生々しい。占い師を痛烈に皮肉った箇所が個人的には好き。これに反論できる占い師はきっといないはず。

 

 

二人の作家が五篇ずつ選んだ松本清張の短編集。日本屈指の作家は、松本清張のことをこんな風に見ているんだなと分かるので、巻末の対談が興味深い。孤独、切なさ、やるせなさといった感情が滲み出ている作品が多く、作者本人の心の葛藤が透けて見えるよう。

 

 

JR信濃町駅前の本屋さんで発掘。松浦さんの著書は久々に読んだが、良い意味であまり変わってない。意地の悪い人には「きれいごとばっかり」と思われそうだが、こういう抽象的でふわっとした言葉が好きな人も大勢いるので、これはこれで良いのかも。個人的には、読み終わった後に何も残らなかった。この人の本って、いつもこんな感じ。