今年に入って明らかに出撃数は減っている。
3年目にも入ると活動のマンネリ化が生じたり、このマイナスな社会情勢の風潮や脱サラ・独立を経ての日常の変化に忙殺されているというのもある。
そんなこともあり活動傾向に伴ってブログを執筆することも減ってしまったが、それでも他のクラスタのナンパブログはちょくちょく拝見したりはしている。
今年になってからは即系をいかに弾丸即するかということを第一に考えるようになり、服装の系統や声掛けのスタイルの大幅な変更や、箱に行く機会が増え(それでも数回程度だが)、自分なりにナンパの環境の変化を楽しんでいたりする。
去年までの美女への誠実系ナンパや丸の内・銀座・恵比寿・コリドーで綺麗めのOLメインで声掛けをしていたのが懐かしい。
今年はこんな感じでナンパ以外のことを重点に置き、少しナンパとは距離を置いた生活になりそうな気がしたりしなかったりする。
まあそんな最近のあれこれの長い前置きはさておき、ナンパ人生初となる遠征について振り返っていこうと思う。
事の発端は8月の初旬、世間がお盆休みに入ろうかとしている頃である。とあるクラスタから一通のLINEが来た。
「来週、仙台へ遠征に行きませんか?」
誘われたときは色々と考えたが結局は二つ返事で行くことにした。今年はイベントもなかったので部活の合宿に行くような感覚があった。
行きの道中での新幹線車内でも、仙台の女の子の反応率や泊まる場所からの導線、声掛け場所のことなど話題は尽きなかった。
そんなこんなであっという間に仙台に到着。
8月のお盆シーズンで夏真っ盛りではあったのに、新幹線を降車したとき肌に感じた風はとても涼しかったのを今でも覚えている。
降車するやいなや、新幹線や駅名をスマホでパシャパシャと撮り、年甲斐もなくキャッキャとはしゃぐナンパ師3人組。それはまるで学生時代の修学旅行を彷彿とさせる。
宿泊するホテルに到着し、軽くシャワーを浴びて、すぐさまナンパ用の服装に着替えて、髪をセット。取り付く島もなく一向はそそくさと街へ出た。
声掛けをメインとするスポットはアーケードとなっている商店街、駅へ一直線となっている一本道である。既に地元クラスタであろう人物が何人かと往復しているのを見かける。
仲間からの紹介により地元の重鎮であるクラスタや、たまたま同時期に遠征に来ていた地方クラスタなどと挨拶を交わし、仙台でのナンパ攻略の秘訣の談義を楽しんだ。
とまあざっくりとした概要はこんな感じで、随筆ベースの記事は読みごたえがないので、いつもの小説ベースの記載に戻そう。
なるべく短編になるようまとめてみた。
<Scene A>
各クラスタ達との挨拶を済ませ、薬局で購入したエナジードリンクでKPをしたのち、一同は散らばるように商店街へ。
東京とは違った反応率に驚きながらも、淡々と声掛けを続け、エンジンが掛かり出した頃、一人の女性が前からやってくる。
髪色は明るく茶色い、背丈は小さくミニスカートを履き、両肩掛けの白いカバンを背負っている。小顔で目はパッチリとして可愛い、「THE 女子大生」という感じ。
彼女が目の前2〜3メートルのところに到達したところですかさず声掛け。
KEN「こんにちは!」
フロントから片手を前に上げ、いかにもがっつりナンパしてますオーラ全開での声掛けだ。
彼女「えっ、あっ、はい?」
彼女は驚きと戸惑いの表情を浮かべ、それと同時に両耳に掛けていたイヤホンを外した。
KEN「僕 今日 初めて仙台へ来たんですよ。」
彼女「そうなんですね。」
特に不快や怪訝そうな表情は浮かべず、受け入れを見せる彼女。
KEN「東京から来まして。」
彼女「それは遠いところからわざわざ。」
初めての会話に関わらず、まるで来訪客をお出迎えをさせて頂きましたと言わんばかりに応対してくれる。
KEN「親戚がこっちに引越してきたので遊びに来て今その帰りなんですよ。」
彼女「はい。」
KEN「それでこれからどうしようかなと思っていて。」
彼女「はい。」
KEN「素敵なお姉さんが前からやってきたので思い切って声掛けた訳なんです。」
彼女「あー、それはありがとうございます。」
全く人を疑う姿勢を見せない彼女、しかしKENはこのときからある違和感を憶えていた。
それは反応率そのもの自体は高いが、興味関心はそれほどあるわけではないということ。
声掛けをすれば7〜8割はオープンする。驚きや戸惑いを見せられることはあるが、ガンシカをされるということはほとんどなかった。
しかし、満面の笑みや照れを見せることもほとんどなかった。何というかこちらを一人の人間として見てくれることはあったが、男として見てくれている訳ではなかった。
東京では基本ガンシカで反応してくれた子は少なからずこちらに興味を持ってくれている素振りはあった、しかしこちらでは違う。
温かく迎えてくれてはいる。しかしそこまでである。これが東京との大きな違いである。
それが如実に表れるのは次の瞬間である。
KEN「そんなわけで、せっかくだしどこかで少し休みましょう。」
ふわっとした打診を試みる。
彼女「いえ、これから買い物に行くので。」
ここで初めて断りを入れられる。
KEN「友達と約束?」
彼女「いえ、一人で行きます。」
淡々と真顔で答える彼女。
KEN「だったら二人で行こうよ。」
再度、提示をするKEN。
彼女「いえ、大丈夫です。」
表情は変わらない彼女。
ここで連れ出しは難しいと判断したKEN。
KEN「そっか、じゃあとりあえずLINEだけ交換しよう。」
彼女「いや、大丈夫です。」
ここで初めてマイナスな表情を表す彼女。
KEN「めんどくさかったらブロックすればいいんだからさ?」
そういってスマホを彼女の前に差し出す。
彼女「うーん…」
あまり乗り気ではない表情を表すもスマホを取り出す彼女。
そして、お決まりのスタンプだけ送り合う。
KEN「それじゃ気が向いたら返してくれればいいから。」
そう言って、彼女に別れを告げた。
ここまでしめて200〜300メートルは並行トークしていたと思う。この子に限らず仙台案件はオープンすればこれが当たり前であった。
買い物が終わるであろう1時間後に追撃をしてみるも「既読」の2文字がそこに点灯することは二度となかった。
<Scene B>
仙台でのナンパにも少しずつ慣れ、導線や感覚を噛み締められるようになってきた。
仲間から遠征初即の報告があり、こちらも奮起していたときである。
彼女はKENの前に現れた。
黒髪で背丈は小さく黒髪のツインテール、ピンク色の両肩掛けのカバンに黒い厚底のブーツとミニスカートを履いている。
去年の自分ではまず声掛けることがなかったタイプである。界隈では「ド即系」とあがめられている、いわゆる「ぴえん系」だ。
しかし、今年の自分は違う。初めて弾丸即を決めることができ、案件の系統やスト値も選ばずやってきたため、新たな結果を生み出すことができた。
弾丸即を決めることができても、まだ「THE びえん」という子はゲットできていない。
あいにくだが仙台は反応も良い。ナンパ人生で一度は通ってみたい、もっと幅広い視点を持ちたい、そういう気概から思い切って彼女の元へ。
KEN「こんにちは!」
いつもより気持ちテンション高めにフロントから片手を上げて声掛けをした。
彼女「えっ?笑」
初動から笑みがこぼれ、視線をこちらに合わせる彼女。
KEN「いやーお姉さん、めっちゃかわいいね!こんなかわいい子なら男だったら絶対 声 掛けるでしょ!いや、本当マジでめっちゃかわいい!」
普段の5割増くらいにハイテンションになり、これでもかというほどかわいいと褒めまくった。
界隈では「かわいい」はタブーとされ言わない方が良いと言われているが、いわゆる「ぴえん系」にはこれは当てはまらない気がする。
彼女たちのメイクやファッションは最先端を走っている、しかも美容に関しては普通の女の子よりは明らかに努力をしている。つまり周りからかわいく見られたい願望は人一倍強い。
そこの過程を褒めてあげることは、媚びでも何でもなく素直に喜んでくれる子が多い。そういった意味で、対ぴえんのとき「のみ」かわいいという言葉は頻繁に使うようにしている。
彼女「えー、ありがとうございます笑」
暴言を吐いたり舌打ちをしてきそうな見た目とは裏腹に、モジモジとした照れの表情を見せ、女の子としての顔をあらわにする彼女。
うむ、普通にかわいい。
KEN「あれ、こっちに向かってるってことはこれからホスト?」
土地勘は全くないが、駅とは逆の飲み屋街の方向へ歩いていたため、お決まりの決め付けトークを展開し、彼女の歩いている方向を指差すKEN。
彼女「えー、違いますよー笑。でも私よくホストのキャッチとかに声掛けられるんですよ。」
KEN「えっ、何それ?私いつもよく声掛けられるから遠回しに良い女なんですよ、っていう自慢?やめてよー、そういうの!笑」
こんな感じではっちゃけてテンション高く彼女をイジり倒す。
彼女「えー、何でですかー!違いますよー笑」
終始笑顔でこちらも楽しい気分になってきた。
KEN「俺 今日 出張で仙台に初めて来たんだよね。それで休みだからかわいい子とかと話したくなるじゃん、つまりナンパ!」
相変わらず話の論理性はないが、最低限の自己開示をするKEN。
彼女「えー、そうなんですか?私でも初めてナンパされましたよ笑」
KEN「えっ、絶対うそでしょ?こんなかわいかったら絶対 声 掛けられるでしょ。そしたら周りの男が見る目なさすぎるわ!」
彼女「笑」
何を言ってもずっと笑ってくれる彼女。東京だったらとりあえずそんな嘘をつく子もいるが、この子の場合は本当にそうかもしれないとさえ思えた。
彼女「でも私、買い物したら帰らなきゃいけないんです。」
KEN「まだ帰るの早いって、夕方だから大丈夫だよ!」
彼女「ママが夕ご飯作るから材料買ってきてって言われてるんです。」
時刻にしてまだ17時過ぎ、東京では完全なオンタイム、むしろこれからナンパの書き入れ時である。しかし忘れてはいけない、ここは仙台である。
すこぶる反応は良いものの、こちらの打診に対しては受け入れてくれるものではなさそう。タカリやスレた印象は全くなかったため一度、彼女の用件を呑むことを決めた。
KEN「そっか、じゃあとりあえず俺も買い物に付き合うよ。」
そう言って、彼女と一緒に買い物に付き合うことに。
彼女「欲しいものなかったです。」
KEN「そっか、じゃあ買い物とかで疲れたでしょ。満喫とかで休もうよ。」
並行トーク中に自分が泊まっているホテルは過ぎてしまったため、導線の中で一番近い満喫を打診した。
彼女「ダメ…」
今まで敬語だった彼女がタメ口になった瞬間でもある。
ずっと笑顔だった彼女が視線を外して横目で地面を見つめている。個室打診をされ初めて女として見られていることに気づいたようだ。
彼女「怒られちゃう…」
KEN「大丈夫だよ、誰にも言わなければ。俺らに共通の知り合いもいないことだし。」
彼女は全く視線を合わせなくなった。
彼女「彼氏に怒られちゃう…」
KEN「まあまあ、とりあえず行こうか。」
彼氏という言葉に臆することなく、むしろ受け流して淡々と打診するKEN。それと同時に彼女の手首をさっと引いたがそこに抵抗はなかった。
彼女「ダメ…ママにも帰るって言ったんだから…」
葛藤と戦っているのが表情から見て取れる。決してノーではない、迷っているのがわかる。
KEN「わかった、じゃあとりあえず止まって。」
そう言って、商店街の端に彼女を寄せてシャッター前に立ち止まらせた。
KEN「この際だからハッキリ言うよ、俺は抱きたいと思ってるから。」
彼女の目を見て真剣な表情で思いをぶつけるKEN。
彼女「…」
体や顔はこちらだけ向いているが、相変わらず視線だけは斜め下に外す彼女。
彼女「ダメ…」
彼女「怒られちゃう…」
いけないことをしているとわかってるが興味はある、でも自分は決して悪者になりたくない、絵に書いたようなグダで体をふるふると震わせる。その姿はとても愛おしく見えた。
KEN「魅力的な人だから抱きたいと思ってるんだよ?」
彼女「…」
彼女のグダもお構いなしに淡々とギラつくKEN。
KEN「どうでもいい人だったら、そもそも声なんか掛けないし。」
彼女「…」
KEN「俺もそこまで暇じゃない。」
彼女「…」
彼女からは何も変化がない。
KEN「俺は二人の邪魔をするつもりはないよ。」
彼女「…」
KEN「面倒なことにしようとは思ってないから。」
彼女「…」
ずっと俯いていた彼女だったが、やっと口を開いた。
彼女「付き合ってるかわからないの。」
KEN「どういうこと。」
視線は合わせないが、会話をしようとしてくれた。
彼女「連絡だけは来るの。」
KEN「彼氏面してくるみたいな?」
彼女「…」
言葉に詰まる彼女。
KEN「あぁ、一線だけは越えたみたいな?」
彼女「…」
ずっと黙っていた彼女だったが
やがて
彼女「うん…」
うつむきながら、そうつぶやいた。
KEN「あぁ、そう。」
特に感情を出さず、淡々と答える。
KEN「彼氏のこと好きなの?」
問いただすKEN。
彼女「…」
少しの沈黙のあとに
彼女「うーん…」
力なくそう答えた。
KEN「…」
これが最後だと思った。
KEN「それじゃ行こう。」
そう言って、彼女の手を取ろうとする。
彼女「(サッ)」
近づいてきたKENの手から自分の手を遠ざけた。
KEN「…」
俺の力もここまでか。
KEN「わかった、じゃあ駅まで送るよ。」
彼女「…」
KENは駅に歩き出し、彼女も無言のまま足並みを揃えた。
KEN「…」
彼女「…」
KEN「…」
彼女「…」
信号待ちの間、沈黙は続く。
そして
彼女「(スッ)」
二人並んで立ち尽くしていたが、KENから少し離れるようにして再び立ち尽くした。
KEN「…」
そして全て察した。
KEN「わかった、じゃあここまでかな。気をつけて。」
彼女に手を振った。
彼女「それでは。」
軽く会釈だけをして、駅に向かう途中で別れた。
互いに振り返ることもなく。
このような系統にここまで持っていくことができたのは自信になったが、上手く崩せずゲット出来なかったことへの自分の未熟さに歯がゆさもある。
KENは商店街のイスにゆっくりと腰掛けた。
<Scene C>
時刻は20時頃を迎え、辺り一面は閑散としている。都内では一番のアツい時間にも関わらず、このような状況はとても困惑した。
そして仲間二人からは即報が上がり、焦りの一面がかなり出ていたときでもある。
初遠征とはいえ坊主は叩きたくない、となると案件を選んでいる暇はない。そんな思いで声掛けをしていた。
前から一人の女性がやってくる、商店街の店内も段々と店じまいが始まっており、視界は暗くなってきている。
ただ今のKENは焦りに焦っていた、何としても結果を出したかった。案件がどういう子かもわからず、おもむろに声を掛けてしまったというのが正しい。
KEN「はーい、こんばんは!」
彼女「!」
いつものようにフロントから声を掛けたら、反応が取れたというより、驚きのあまり立ち止まってしまったという感じだ。
彼女「はい!?︎」
KEN「あっ、ごめんなさい。脅かすつもりはなくて、今日初めて仙台に来たので。」
彼女「はい!?︎」
KEN「どっか呑める店ないかなと思いまして、それで。」
彼女「はい!?︎」
まず自分は怪しい者ではないということを相手に示して、ゆっくりと丁寧な口調で話すことを心がけた。
KEN「今、お姉さんが目の前に通って、地元の人かなと思って、それで声掛けました。」
彼女「はい!?︎」
こちらはかなりゆっくりなテンポで話しているが、彼女はずっと驚いたような表情と声のトーンで返事をしている。
KEN「お姉さん、地元の人ですか?」
彼女「はい、そうです。」
やっと状況が飲み込めたのか、彼女は落ち着きを取り戻した。
勢いで声掛けてしまったが、これまた去年の自分では絶対に声掛けして来なかったタイプの女の子である。
色白で黒髪のセミロングを後ろで束ねている、白いTシャツにシンプルなワンピース、これまたシンプルなトートバッグに白いスニーカー。
化粧っ気はほとんどなく、おそらくすっぴんで、メガネを掛けているがおしゃれメガネではなく市販でよくあるようなもの。
垢抜けた様子はなく、おそらく恋愛はしてこなかったであろうタイプ。学校も教室の端でこじんまりと友人とお話を楽しむ感じ、図書委員っぽいというのが一番近い。
KEN「ざっと商店街を見てみましたけど、お店ほとんど閉まっちゃってますね。」
彼女「そうですね。」
KEN「仙台はこんな感じなんですね。」
彼女「はい。」
今まで対峙してこなかったタイプだけに攻略の糸口が見つからない、そのためまずは当たり障りのない雑談をすることに徹した。
KEN「お姉さん、これからお買い物とかですか?」
彼女「あっ、いえバイトが終わって今から帰るところです。」
こういうタイプだからなのか、仙台という地方の特色なのかはわからなかったが、質問一個一個には丁寧に答えてくれる彼女。
KEN「そうなんですね、こんな時間にバイト終わるって早いですね。」
彼女「そうですね、そろそろバスが終電なので大体この時間で終わりです。」
KEN「そうですか、じゃあバイト終わってお疲れっていうことで少し何か飲んで休みますか。」
彼女「えっ、あっ、はい。」
彼女を立ち止めた場所がコンビニの目の前だったため、すぐさまKENはそちらを指差した。驚きながらも、彼女はついてきた。
KEN「飲み物どれにします?」
彼女「えっ、あっ、じゃあこれにします。」
KEN「女の子って感じの飲み物ですね。」
彼女「えっ、そうですか。でも何か悪いですよ。」
KEN「いえ、これくらい大丈夫ですよ。」
飲み物を買って、コンビニの前に出る二人。
KEN「まあ立ち話も何ですから、ちょっと座ってゆっくりしましょう。」
彼女「えっ、あっ、はい、えっ?」
そう言って、彼女が歩いてきた方向に向かって歩き出した。それはすなわち自分が泊まっているホテルの方向である。
彼女は戸惑いながらも、ゆっくりKENの後ろをついてきた。
KEN「バイト大変ですか?」
彼女「はい…色々と…」
KEN「まあ接客だと色々ありますよね。」
彼女「はい…」
ホテルへの道中も他愛もない話でつないでいく。
KEN「ここですから。」
ホテルの入口に入るKEN。
彼女「あっ、いや、でも私行けないです。」
少しのためらいを見せる彼女。
KEN「まあちょっとゆっくり話すだけなので。」
彼女の言葉を間に受けず、エレベーターのボタンを押すKEN。
彼女「…」
言葉を発するのを辞める彼女、しかし帰ろうとするわけでもない。
KEN「とりあえず乗って。」
彼女「…」
彼女はゆっくりとエレベーターに向かって歩み始めたら。
KEN「今日ついたばかりだから、ちょっと散らかってるけど。」
ベッドの上に散らばった衣服をまとめ、彼女が座れるスペースを作るKEN。
KEN「まあ、とりあえず座って。」
ベッドの奥側に手を向け、こっちと合図するKEN。
彼女「はい…」
うつむきながら、ゆっくりとベッドに座ろうとする彼女。
KEN「…」
彼女「…」
KEN「…」
彼女「…」
ホテルに到着するやいなや、早速沈黙の時間が表れる。
KEN「今までどんな恋愛してきたの?」
二人の空間は出来上がっていると思ったので、まずは突破口を開いた。返ってくる答えはもちろんわかっている。
彼女「あっ、いや…」
また緊張した声のトーンになり、言葉が詰まる彼女。
彼女「今まで付き合ったことがないです…」
ぽつりとそう答えた。
KEN「そうなんだ、今まで良い人がいなかった?」
彼女「いや、というか…」
KEN「うん。」
彼女「恋愛に興味がなくて…」
いつも通りゆっくりと内面に触れていくことを意識する。
KEN「でも少し何か気になるなって人くらいいたでしょ?」
彼女「いえ、それもないです…」
ここまでは予想通りの答えである。
KEN「そうなんだ。」
そう言って、彼女の顔を見る彼女。
KEN「せっかく楽しい女の子の時期なのにもったいないね。」
そう言って、彼女との間の距離を詰める彼女。
彼女「えっ?」
驚きの表情を見せる、しかし抵抗する訳ではない。
そして肩をゆっくり抱き寄せる。
彼女「えっ?」
相変わらず戸惑いは変わらない、しかし嫌がる素振りもない。
KEN「かわいいですね。」
彼女「えっ?」
彼女の目を見てゆっくりと言った。
KEN「メガネ取って下さい。」
彼女「はい…」
そう言われ彼女はゆっくりとメガネを外し机に置いた。
KEN「メガネ取ったのもかわいいね。」
彼女「えっ、はい…」
出会った頃のように声に上ずりが表れる彼女。
KEN「目閉じて。」
彼女「はい…」
そして、ゆっくりとまぶたを閉じる彼女。
キス
KEN「目開けて。」
彼女「はい…」
KEN「少しだけ口開けて。」
彼女「えっ、あっ、はい…」
もう一度、口を近づけるKEN。
彼女「ん…」
彼女から舌をゆっくりと入れてきた。
それを受け入れてから、彼女の体をゆっくりと触れていくKEN。
KEN「?」
彼女を支えている左手にわずかな震えを感じた。
左手を下ろし、彼女を見るKEN。
KEN「もしかして…怖い?」
と聞くと
彼女「はい…」
彼女はゆっくりとそうつぶやいた。
KEN「そうか、俺は怖がらせるつもりはないよ。無理矢理するようなことは絶対にしない。」
彼女「はい…」
KEN「そんな揉め事をおかすようなことは絶対にしない。」
彼女「でも付き合ってないのにそういうことはできません。」
KEN「…」
ここにきて初めて彼女から出たグダに戸惑うKEN。
彼女「もう終電なのでそろそろ帰ります。」
KEN「こうなってしまったのは俺が悪いからタクシー代くらいは出すよ。」
本当に自分でもバカなことをしたなと思う。
目先の即に焦り、自分からお金を出すと言ってしまった。
本当にダサいなと今でも思う。
彼女「いえ、それは悪いですよ。」
KEN「いや、悪いのは俺の方だから。」
しがみつこうとするのが見え隠れするKEN。
彼女「…」
KEN「…」
またしても静寂な時間がやってくる。
そして、やがて
彼女「やっぱり私、帰ります!」
そう言って、彼女はその場で立ち上がった。
立ち上がった彼女を見て、KENは戦意を失った。
KEN「わかった、せっかくだし駅まで送ろう。」
彼女「今日はありがとうございました。」
そう言って頭を下げ、彼女は机の上に置いたメガネを取り出し、再び掛けだした。
KEN「それじゃ行こうか。」
彼女「はい…」
部屋の扉を出て、エレベーターに向かう。自然と手を繋いでいる二人。
KEN「もしかして初めてのキス?」
彼女「えっ、あっ…」
少し戸惑いを見せ、やがて
彼女「はい…」
ゆっくりと頷いた。
彼女「ん…」
降りるエレベーターの中で二度目のキス、しっかりと彼女の方から舌を入れてくる。
KEN「今日は楽しかったよ。」
彼女「はい、私もです…」
駅に向かう道中は正に付き合ったばかりのカップルのそれだった。
KEN「バス停はこの辺?」
彼女「あっ、ここ降りたとこです。」
KEN「そっか、じゃあLINE交換しとこうか。」
彼女「あっ、はい。」
そう言って、彼女はトートバッグからスマホを取り出した。
KEN「○○って言うんだ、どういう字書くの?」
彼女「あっ、普通に本名もひらがなです。」
KEN「そうなんだ、俺が一番好きな名前だわ。」
彼女「笑」
バス停には何人かの人が待っている。
KEN「じゃあ、ここでお別れだね。」
彼女「はい、今日はありがとうございました。」
KEN「じゃあ、気をつけてね。」
彼女「えっ?」
人目もはばからず三度目のキス、その時だけは二人だけの時間。
KEN「そろそろ時間だと思うけど、まだバス来ないな。」
彼女「ちょっと時間見てみますね。」
そう言って、彼女は時刻表を確認する。
やがてして、こちらに戻ってきた。
彼女「何か最終のバス行っちゃったみたいです…」
KEN「えっ、マジか。帰れるの、大丈夫?」
彼女「はい、電車を乗り継いで行けば何とか帰れます…」
KEN「まあ、それならいいけど。じゃあ改札まで行こうか。」
そう言って、改札の方まで歩き出す二人。
KEN「でも○○が電車乗り過ごして、俺は嬉しいな。」
彼女「えー、何でそういうこと言うんですかー?」
少し残念そうにこちらを見る彼女。
KEN「だって、もう少しだけ○○と一緒にいられる時間ができたってことじゃん。」
彼女「そう言ってくれるなら嬉しいです。」
本当に恋愛慣れしてない子なんだとつくづく思う。
KEN「じゃあ、ここで本当にバイバイだね。」
彼女「今日はありがとうございました。」
彼女は丁寧に頭を下げた。
KEN「じゃあ、気をつけてね。」
彼女「えっ?」
周りも明るく人混みの多い改札前で最後のキス、今までのキスよりほんの少し長い時間だった気がする。
KEN「バイト頑張ってね。」
彼女「ありがとうございます。」
そう言って彼女に軽く手を上げ、彼女は改札へと消えていった。改札に入ったあと一度こちらを振り向き、再度お互いに手を振り合った。
今日は色々な層と色々なことが起きている。数追いをすることにより、今までとは違う世界が見えることに楽しみを感じた一面だった。
<Scene D>
今までにない経験を積めたことにナンパの楽しさを実感しながらも、坊主がずっと続き辛い思いをしていた。このとき既に万歩計は5万歩以上を示していた。
時刻は22時を過ぎ、街は完全に廃墟と化している。東京でいうと終電後の繁華街に近い。店は完全に閉まっており、周りの明かりもほとんどない。
そんな疲労と落胆が入り混じって、商店街のベンチで休んでいるときである。
Mさん「KENさん、どうしたんすか。座り込んじゃって?」
背中をパンと叩かれ、見上げるとMさんがそこにいた。
KEN「いやー、ホテルまで弾丸で行けたんですがインして負けましたわ。」
Mさん「ホテイン負け、まぁしゃーないっすわ、次行きましょ、次!」
KEN「悔しいっすね、でもまだやりますよ。」
そう言って、KENはベンチから立ち上がった。
Mさんは仙台にインして1声掛け目でギャルを弾丸即した凄腕だ、案件が少ない中でもガンガン声掛けしている。見習わなくてはならない。
そんなこんなで何声掛けかしている時である。
二人組の女の子がゆっくりと前を歩いている。
Mさん「あの二人組行きますか。」
案件を選べるほど案件はいない、何が何でもという思いで、二人組を追いかけた。
Mさん「いやー、こんばんは!これから飲もうかなって感じ?」
KEN「こんばんは!」
KENもMさんのあとに続く。
A子「えっ、あー、まあ、はい。」
相変わらずの反応の仕方だが、特に嫌悪感を示すわけでもない。
KEN「何か二人とも似てない?もしかして姉妹?」
A子・B子「笑」
ちょっとふざけた感じが功を奏した、顔はもちろん違うが背丈や服装が同じ系統だったので、これが効いたのかもしれない。
B子「これから後で友達が来るので、それまでどうしようかなと思ってたんです。」
Mさん「そうなの、じゃあそれまで軽く呑もうよ。」
そう言ってMさんは先導を切るようにして居酒屋に向かって歩き出す。
KEN「そうそう、とりあえず入ろうよ。」
A子「えっ、でも…」
MさんがB子に話しかけたのを見て、KENはA子に話すのを心がけた。
B子「どうする?」
A子「どうしようか?」
お決まりの私はナンパに応じませんオーラでお互いに確認し合う二人。しかし、そこまで拒否する姿勢は今のところ見られない。
Mさん「ここ良いじゃん、ここ行こうよ。」
A子「じゃあ、まあ、はい…」
Mさんのスマートな流れに賛成するA子、B子もそれに合わせてついてくる。
Mさん「あっ、ダメ、もう終わり?ダメみたい、もう店終わりっぽいわ。」
店内に入って、店員とやり取りをするMさん。
KEN「向こうにも飲み屋があったから、向こうにしようか。」
すぐに機転を効かして代替案を提案する。距離もすぐ近くであったため覚えていた。
Mさんとそっちの店に歩き出すと、二人もゆっくりめではあるが着いてきた。
KEN・Mさん「とりあえず乾杯。」
男二人それぞれが女の子に一杯だけおごり、お互い向かい合わせで席についたのである。
が、ここからがイバラの道である。
KEN「お酒とか飲む方?」
A子「えっ、あぁ、まあ…」
最初は軽いジャブを打つも空振り。
Mさん「どんな人がタイプ?」
B子「うん、まあ、特に…」
Mさんも話を広げようとするが、全く盛り上がりの気配が見えない。
極め付けには
A子「ねえ、これ見てぇ。」
B子「あー、かわいい!」
スマホを見せ、二人で盛り上がってしまっているのだ。
場の雰囲気も一問一答の質問形式のようになってしまい、味気ない場となってしまった。
Mさんが軽いイジリを入れて一笑いが生まれる一面もあったが、次の瞬間には無の境地になってしまう。
連れ出しから30分も立たない頃である。
Mさんの方をチラ見するKEN。
それに気づいてMさんもこちらを見る。
KEN「(これもう無理ですね。)」
軽い口パクでMさんに伝える。
Mさん「(コクリ)」
無理だね、と口パクをしてうなずいた。
KEN「そろそろ友達来るでしょ?」
終電で来ると言っていたが、相手にもこの場を解散させやすいフレーズを投げ掛けた。
B子「あー、そうですね。そろそろ来るみたいです。」
こちらの帰りたいムードを察したのか話を合わせる女子二人組。
Mさん「じゃあ、とりあえずLINEだけ交換しとこうか。」
A子「あぁ、はい…」
相変わらず気のない返事をする。LINEの交換も互いの目の前に座ってる子だけとの交換になった。
KEN「じゃあ、気をつけてね。」
店を出て二人組に別れを告げる。
A子「それでは。」
感情のない言葉をこちらに向けた。
Mさん「いやー、最悪でしたね。」
KEN「まあ、しょうがないですわ。」
2人で軽くウダウダと言いながら、仲間がいると連絡が来た商店街の方に戻っていった。
その後は残りに残された案件に逆4で行ったり、商店街ですれ違ったクラスタと即席コンビで突撃するも、コロナグダなど泣かず飛ばずの結果だった。
仲間「そろそろメシ食いましょうか。」
時刻はそろそろ日付が変わろうとしている。夕方から休憩なしでぶっ続けでナンパをしているため、みんなの疲労は本当に限界であった。
まあ、そんなこんなで結局は坊主で2泊3日の初遠征が終わった。
少しモチベが下がっていた時期に誘われて、かなりモチベを盛り返すことはできた。
結果的に負けたわけだが、今まで戦えなかった案件にも健闘することができたのは非常に大きい。
今年は特別な一年だったが、また少し落ち着きを見せたら、また来年も遠征に行きたいなとは思う。