中村けんです。

 

 

西尾市方式PFI事業は今年度末をもって契約解除となりますが、それに関連した中村眞一議員との議会でのやり取りが3月2日付の三河新報で掲載されました。

 

 

しかし、記事の見出しにもなっている中村眞一議員の発言内容は、明白に事実と異なることが分かりました。

 

 

 

 

 

 

中村眞一議員は、西尾市のPFI見直し問題と酷似しているということで、徳島県徳島市の再開発事業をめぐって再開発組合側が提起した損害賠償請求訴訟(以下「徳島市損害賠償請求訴訟」)を紹介し、その判決について、「事業撤回を公約に掲げたからといって、民意はあくまで政策判断の材料に過ぎず、民意で契約を変更することはできないという判決です」と発言していますが、明白な誤りです。

 

 

徳島市損害賠償請求訴訟は、不法行為に基づく損害賠償請求事件であり、判決は、「地方公共団体が定めた一定内容の継続的な施策 (中略) の変更により社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被ることとなるときは、これにつき補償等の措置を講ずることなく上記施策を変更した地方公共団体は、それがやむを得ない客観的事情によるのでない限り、上記の者に対する不法行為責任を免れないというべきである」という規範を定立し、それにあてはめて徳島市の不法行為責任を認めたものです。

 

 

裁判所が「長年本件事業を推進してきたF市長に代わって、本件事業に反対するG市長が当選したという事実は、単なる政策決定の基盤となる政治情勢の変化を示すものにすぎないから、これがやむを得ない客観的事情にあたるものと認めることはできず、他にかかる事情を認めるに足りる証拠はない」と判示したのは、徳島市の反論のうち、「本件政策変更は市長選挙によって示された民意に従ってなされたものであるから、やむを得ない客観的事情に基づくものである」との主張は、損害賠償義務の発生を阻害する要件としての「やむを得ない客観的事情」には該当しないということであり、「民意で契約を変更することはできない」というものではありません。

 

 

なお、徳島市損害賠償請求訴訟以前に再開発組合が提起した権利変換計画不認可処分取消等請求事件の判決では、「そもそも政策の当否は裁判所の判断しうる事柄ではないうえ、 (中略) 本件事業の継続が争点となった市長選挙の結果、本件事業の白紙撤回を主張していたB市長が当選したことなどの経緯に鑑みれば、被告が本件ホールの買取りを白紙撤回したこと自体は不合理なものであるとはいえない」、あるいは、「地方公共団体において、一定内容の将来にわたって継続すべき施策が決定され、実施された場合でも、その後の社会情勢の変動等に伴って当該施策が変更されることがあることは、住民自治の原則からすればもとより当然であって、従前の政策により関係当事者間に形成された信頼関係が不当に破壊された場合に、地方公共団体が何らかの賠償責任を負うことはあるとしても、地方公共団体が従前の政策決定に常に拘束されるということはない」などとして、「本件処分についての市長の判断について裁量の逸脱濫用と認めうる事情はなく、その他の原告の主張する違法事由はいずれも認められない」から、原告の処分取消請求は棄却されています。

 

 

上記2つの判決について、やや粗くまとめるとすれば、民意で契約変更はしていいけれどもその時はしっかり補償する必要があるということで、三河新報の記事の見出しにもなっている中村眞一議員の発言内容は明白に事実と異なります。