中村けんですニコニコ


今回は、西尾市民病院が抱える問題について、4年間勤務していた経験を踏まえて考えてみたいと思います。


突き詰めて言ってしまえば、医師不足につきます。


これは、充実した医療を受けられるかどうかという観点だけではなく、経営赤字をどうするかという観点から考えても、結論は同じです。



よく、市民病院は毎年何億円もの赤字を出しているという声をお聞きします。

それだけの赤字を出しているのは事実ですが、市からの繰入金をもらった上での決算であり、繰入金の額(無制限ではなく、一定の基準に基づいて算出)次第で、ある程度何とでもなってしまうと言えなくもありません。


公的医療は、採算性だけで考えてよいものではないと僕は考えていますので、税金を投入すること自体には異論はありません。

ただ、赤字云々ということを語る際には、そういった仕組みがあることを頭の片隅に入れていただければと思います。



医師が一人増えれば、収益が1億円増えると言われます。

また、医師が増えれば、その分、医療の質・量も充実していきます。


コスト削減をしていくことなども当然大事ですが、一番大事なのは医師不足の解消なのです。


では、医師不足を解消するためにはどうすればよいか。

ここが一番大事なわけです。


以下では、自分なりにできることを考えてみました。


まず、医師を採用するルートについて、①大学の医局から派遣してもらう、②大学を卒業して国家試験に合格した研修医を採用する、③その他、に分けて考えていきます。



①について


医局とは、大学医学部の附属病院での診療科ごとの、教授を頂点とした人事組織のことをいいます(Wikipediaより)。


県内には、名古屋大学、名古屋市立大学、愛知医科大学、藤田保健衛生大学の4つの医局があり、例えば西尾市民病院なら名大系列、のようになっています。

常勤医の多くは、医局から派遣してもらっていますが、臨床研修制度という制度の内容が大きく変わって以来、全国的にここ何年も医局員が足りないという傾向にあります。


医局員が足りないということになると、無い袖は振れないわけで、系列病院に充分人員を派遣できないことになってしまいます。

医師不足が深刻な地域に優先的に派遣してもらえるとしても、医師不足は全国的な傾向ですし、西尾が深刻だから西尾にというわけにはいきません。


その場合にモノを言うのが、交渉力だそうです。

病院だけが惨状を訴えるのか、市長・議会も一体となって訴えるのかでも違ってくるし、地域レベルで地域医療を守るために取り組み・活動をしているかどうかでも違ってくるようです。


いきなり、地域をあげての市民活動をというわけにはいかないかもしれませんが、市側・病院側が良い情報も悪い情報も積極的に公開し、一人でも多くの皆さんが自分たちの問題としてこのことをとらえていくことが、まずは大事ではないでしょうか。



②について

国家試験に合格した医学生は、研修医として、大学病院または市中病院で2年間の研修を受けることが義務付けられています。

以前であれば、大多数が大学病院で研修を受けていたのですが、制度(臨床研修制度)が大きく変わって以降、市中病院(この辺りでは、西尾市民病院、安城厚生病院など)で研修をする研修医が増えました。


これが、大学の医局員不足の大きな理由でもあるのですが…。


西尾市民病院のような市中病院としては、直接医学生をリクルーティングできる大きなチャンスです。

もっとも、競争原理が多分に働きますので、研修医を多く採用できる病院とそうでない病院との二極化が進みます。

残念ながら、ここ何年かの西尾市民病院は後者の方になってしまっています。


大病院に比べてハード面が劣っていることや、都心からのアクセスの点などで不利な条件はありますが、PR不足・知名度不足ということも大きいように感じています。

市民病院として、引き続き今後も努力していかないといけない大きな部分と考えられます。


また、地元出身の医学生を大事にし、教育の分野と連携して、「地元に貢献したい」と思ってくれる人材を増やしていく取り組みも必要かなと個人的に思っています。

例えば、市内の中学・高校で出前授業をするとか、進路担当の先生たちと定期的に会合を持つなどです。


家族・親戚で医師を目指す人がいたら、西尾市のために働いてほしい旨お願いするような、草の根的な取り組みも少なからず効果があるかもしれませんね。



③について

特定の病院や医局に属していないフリーの医師を採用するなど、主要なルートとは言えないのですが、ただ一つ言えることがあります。


それは、医師が働きたいと思える環境・働きやすい環境を作っていくことが重要だということです。

※①や②においても重要なことですし、採用という視点だけでなく、辞めていく医師を減らすという意味でも重要です。


お金を払っているのだから、診療してもらうのは当たり前だと考えている方もいるかもしれません。

その考え自体を否定するつもりはありませんが、過酷な労働環境の中、社会的な使命感に支えられて仕事をしている医師はたくさんいます。


診察をしてもらったら、「先生、どうもありがとうございます。」、「大変だと思いますが、頑張ってください」などの言葉をかけていただくだけでも、医師からすれば全然違うのです。


感謝や激励の一声をかけることは誰にでもできることですし、そこから始まり、住民レベルで地域医療を支えていく体制ができれば、それは大きな力となります。



住民の皆さん一人ひとり、市民病院の職員(医療職、事務職)、政治家のそれぞれが、自分にできること・自分がやるべきことを自覚し、この地域の医療をどう守っていくか一体となって考えていくことができれば、必ずやこの西尾市民病院は再生できると信じています。



みなさん、一緒になって西尾市の医療を守っていきましょう!