薄暗いからか、目を細めては本を近くにしたり遠くにしたりして、苦心しながらわざわざ暗闇の中で本を読んでいる。
家に居場所がないのか、そもそも、家がないのか、虚しくどんよりした何かを醸し出している。
そのおじさんは、1年間通ってきたお笑いの養成所の所属審査というものに先日落ちたらしく、落胆で肩を落としている。
そう、そのおじさんは、、、オレだ!!!
おじさんの肩書きは、36歳、アルバイター。
とうとうヤバい響きになってきた。
まぁ、所属できていたとしてもその肩書きには変わりはしなかったが、所属出来るできないでは未来への期待や安心感みたいなものが変わってくる。
所属ができなかったことで、嗚呼、オレはフリー芸人になったんだ、、、いや、フリー芸人に戻ったのか、とため息をつきながら考えてしまう。
フリーのツラさ、というかなんというか、フリーでやり続けていくには大変なモチベーションが必要になってくることがわかっている。
なんてったって、どこの目標に向けてやっていればいいのかわからなくなったりするからだ。
暗闇の中、無我夢中に走りまくるようなモノだ。
ましてや、半年間を全力で費やしたコンビの相方からも「大学生をエンジョイしたい」と宣言され、途方に暮れるしかなかった。
これからどうしようか。
正直、落ちることを前提に考えていなかったので、落ちた後の対処の取り方を今から考えなくてはいけなくなった。
さて、これからどうしようか。
そんなことを考えるために、昼は就活生たちがやるような膨大な自己分析の質問に答えたりしてみた。
やることなすこと、すべてが今更ながらなことではあるが、やってみて、自分の心の内がどうなっているのかがわかってきたり、自分が今まで歩んできた人生の反省点やらが明確に見え、良い意味でも悪い意味でも明瞭化できた。
そんでもって、自分がこれから本当にやりたいことはなんなんだろう?という一番大事な議題においては、、、漠然とではあるが、それなりに浮かび上がってはきたりした。
そんな中、夜に沈む公園でオレは何をしていたかと言うと、偉人たちや成功者たちの名言などが書いてあるある本を読み、落ち込む心をなんとか奮い立たせていた。
少しでもポジティブな気持ちにならないと、家に帰る気も起きなかった。
すると、そんなオレの前に、同じ歳ぐらいのおじさん(男性)が公園へとやってきた。
こんな薄暗い公園に何をしにきたんだろう?
他人のことを訝しがれる立場ではないが、先に公園にいたということで先輩ヅラしてそんなことを思っていると、そのおじさんは、ブランコに乗るなり全力で漕ぎだした。
「なっ、なんだアイツ、、、!?」
読書どころではなく、その人から目が離せなくなった。
その男性は、ブランコに勢いがつきすぎて一周してしまうのではないか、というほど全力でブランコを漕いでいる。
〝ぎぃーーーぎぃーーーぎぃーーーぎぃーーー!!〟
獣が叫ぶような雄叫びをブランコは挙げながら、その人はなぜか完全なる無表情だ。
何もかもがミスマッチすぎて、ワケがわからなくなった。
普通、あれほどの全力漕ぎをしていれば、表情は笑顔に決まっている。
だけどそのおじさんは、虚を見つめるような目で前方の一点を見つめ、こちらまで風が届いてくるのではないかというほど全力でブランコを漕いでいる。
嗚呼、もしかしたらあのおじさんも、何か辛いことがあったのかもしれない。
この夜に沈む公園は、そういう人たちを集める場所なのかもしれない。
そう思いながらも、その全力おじさんを見るのも飽きてきたので帰ろうとしたら、オレが座っていたベンチの左側に、何やら違和感を感じた。
フッと見てみると、なんと、左端に申し訳程度にあった小さなベンチに、無表情のお爺ちゃんが佇んでいた。
「はっ!?えっ、うわっ、え!?」
あまりの怖さに、変な声が出た。
その声に、お爺ちゃんは反応することなく、無表情で前方を眺めている。
ヤベー、ヤベー、ヤベー。
やっぱり、この公園は悩める人たちを集めていたんだ。
ちなみに、お爺ちゃんの目は虚ではあったが、頭皮はピカピカに磨かれたダイヤの宝石のように、キラキラと輝いていたのだった。
まだ諦めないぞ、と、、、オレはそのキラキラと輝いた頭皮を見て思ったのだった。
おしまい。
って、なんだこれは!!!!
と思われた方も多いとは思いますが、僕も自分で書きながら「なんだこれは」と思って書き終えました。
そんなわけで、これからは日記を書くのではなく、趣味的にこういう文章を書けたらなーと思います。
まぁ暇つぶし程度の気持ちです!
では、また!