【5月9日 金曜日】
8時半、めずらしくアラームなしで勝手に目が覚める。
なので、せっかく目が覚めたので昨日読みかけで寝てしまった「古今亭志ん生~艶ばなし」のつるつるを読み直す。
が、その噺を二度も読んでいるはずなのに内容がよくわからないというダメっぷりをみせ、ネットで調べてみることに。
そして、ネットで調べたことを、
「うーん、なるほどな、志ん生の〝つるつる〟は説明を省いているんだな」
と、よくわかっていないくせにわかっているような気分でネットを閉じたのでした。
で、そのあと録画していた番組を視聴して、付き人へ。
今日は、殿はあるレギュラー番組の収録と打ち合わせを。
すると、イーストの吉田さんもいらっしゃり、ご一緒に殿をお出迎えすることに。
そして、吉田さんにご案内をして頂くカタチでエレベーターへ。
すると、エレベーターに入るなり殿が吉田さんにこんなことを仰られたのです。
「中華料理屋の大将が案内してんのかと思ったよ」
ち、違いますよ、なんて吉田さんはボソッと仰られながらエレベーターは目的階へと到着し、殿は楽屋へ。
そして、楽屋に入られると殿はさっそくお着替えを。
すると、殿の履いてらっしゃったブーツが新品だったのか、殿の足から一向に離れる気配がなかったのです。
なので、ボクはすぐさま殿の足元へとスッと擦り寄り、そのブーツをこれでもかというぐらい勢いよく引っ張ってみたのです。
すると、殿は「イテ!」という言葉を口切に、こんなことを仰られたのです。
「イ、痛いよ、お前!このやろ!おい、今、足を抜こうとしたろ!このやろ!」
そして、そう言い終えると殿はご自身の足を抑えながらボクを睨みつけられるのです。
こ、こ、こ、こここれはまずいぞ!とさすがにそこでボクの危険信号も鳴りはじめ、今度はこれ以上ないというほどのやんわりとした感じでブーツを引っ張ってみたのです。
すると、殿はさらにこんなことを仰られたのです。
「だから抜くんじゃね!おい、抜くんじゃねって!」
ほんの少しですが、その殿のお声の響きがネタモードになっているような気がし、ボクは一か八かで殿のブーツを再度引っ張ってみたのです。
すると、殿は、
「だから抜くんじゃねって!おまえ、足ごといくんじゃねって!」
とネタ口調で仰ってくださり、ボクはなんとかゆっくりと引っ張りながら殿の足からそのブーツを引っ張り抜くことが出来たのでした。
そして、殿は収録を2本撮られ、打ち合わせを。
すると、その打ち合わせには北郷さんがいらっしゃったのですが、殿は北郷さんを見るなりこんなことを仰られたのです。
「おい北郷!これ見ろよ」
すると、殿はカバンから大切そうにクリアファイルを取り出し、北郷さんに何かを見せられたのです。
「どうだ?すごいだろこれ?」
そのクリアファイルを殿が見せられた瞬間、楽屋は大爆笑になったのです。
なので、ボクもそれが何なのか気になり、なんとかそのクリアファイルを覗き見てみたのですが、なんとそこにはどこからどう見てもカツラだろうというお方の写真が挟まれてあったのです。
「こ~れはどう見ても怪しいだろ?」
殿はカツラの方を発見したことがよほど嬉しかったのか、名門大学を出ているであろう真面目なスタッフさんにまでその写真を見せびらかしていらっしゃるのです。
しかも、殿はその方のことが大変気に入ってしまったらしく、その方の写真が載ったTシャツまで作られるご予定らしいのです。
すると、殿は急に何かを思いついたかのように、ふとこんなことを仰られたのです。
「あ、お前らもいるか?」
そして、そう仰られるや否や、なぜか殿は北郷さんとアタルさんと北村かつらさんにその大切に持っていた写真を大事そうに配り始められたのです。
まるでそのお姿は、イエスキリストを普及させるために純真に奔走するキリスト教信者の活動のようにも見え、ボクはほんの少しですがその写真に信仰心めいたものを抱きそうになってしまったのです。
もし万が一、時代が変わりカツラの方の写真を踏まなくてはならないというような激動な時代が来てしまったとしても、きっと殿は隠れキリシタンのようにその写真を普及させるような気がしたのでした。
そして、その写真で十分に楽しませて頂いたあとは、そのまま打ち合わせを。
で、30分から1時間ほど打ち合わせをされて、殿は帰られたのでした。
そして、ボクは北郷さんにお誘い頂き、荻窪へ。
店員さんが二人ともすごいマッチョな方がいるお店。
シャリバイス、という初めて聞く飲み物を北郷さんに教えて頂き、飲みました。
すると、そのシャリバイスの発音がボクは変らしく、北郷さんがこんなことを仰られたのです。
「シェパード君、発音はシャリバイスじゃないよ。シャリバイスよ、シャリバイス」
ただ、ボクはそのトーンの差がよくわからなかったのです。
ですが、次に頼む時はすぐにやってくるもので、その数分後かにはまたそのシャリバイスを注文しないといけなくなってしまったのです。
なので、ボクはそこで恐る恐るも、なるべくさきほどと同じような発音のままで言ってみることにしたのです。
「あの、すみません、シャリバイスください」
すると、それを聞いた北郷さんがこんなことを仰られたのです。
「って、そこは二回目も一回目と同じ発音で言えよな!」
ただ、相も変わらずボクにはその一回目と二回目のトーンの差がよくわからないのです。
というより、一回目に寄せたつもりで言ったのです。
ただ、そんなボクと北郷さんのやりとりを聞いていたマッチョな店員さんは大爆笑をしていらっしゃったので、やっぱり、ボクの発音がおかしかったのかもしれません。
「シャ~リバイス…シャリ~バイス…シャリバイスッ…シャリ…」
何度心の中で復唱してみても、その差がわからないままボクは帰路についたのでした。
そして、自由が丘のブックオフにて「私の男/桜庭一樹」を買って帰ったのでした。
では。