先日、付き人のため事務所へ行くと、ちょうど取材でいらっしゃっていた三又さんにばったりお会いしたのです。


すると、付き人終わり三又さんに、

「お茶しようぜ」

なんてお誘い頂き、喫茶店へ連れて行って頂きました。


三又さんとお会いするのは久しぶりなので楽しみにして行くと、三又さんはお店に入るなり僕にこんなフリをしてこられたのです。


「で、最近どうなんだよ、江頭さん」


まだお店に入って1分も経っていないのです。


というかまだ席に着いたばかりで、ミルクやシロップも入れていないのに…なのです。


しかも、別に僕は江頭さんのモノマネがうまいワケではないのに、なぜか三又さんは僕に会うと必ず江頭さんのモノマネを要求してこられるのです。


そんなワケで、その日もいつものように僕は似ても似つかない江頭さんのモノマネをさせて頂いたのです。


「おぉぉぉぉい!着いて早々かよ!早いよ!」


なんとも情けない返しではありますが…僕なりにモノマネを必死に返すのです。


ですが、三又さんのフリは続きます。


「で、最近どうなんですか?」


「どどどどどうって!どうもこうもねぇよ!」


もう、ヘタクソすぎるモノマネに加え返しも最低なのです。


するとさらに、


「ふーん、じゃあお前は調子どうなんだよ、北郷」


と、またまた無茶ブリをしてこられるのです。


そして、僕はとっさにこんなモノマネをしてしまいます。


「おおおおお、シェパード~!」


先ほどの江頭さんが完全に残ったままでの北郷さんなのです。


というか、北郷さんはゼロに近い…。


そして、そこから江頭さん北郷さんと交互にフラれ、似ても似つかないモノマネを僕は三又さんに披露し続けるのです。


すると、そんな僕のヘタクソなモノマネに飽きられたのか、三又さんは急にこんなフリをしてこられたのです。


「で、最近調子どうなんだよ、三又さん」


三又さんは真顔なのです。


三又さんには色々な方のモノマネをフラれてきましたが、正直、このモノマネが一番過酷でした。


だって、ご本人のモノマネをご本人の前で…もう、パニックです。


なんだか、モノマネ番組でよく見る光景のような…。


そんなことをふと思った自分に、


「いやいや、この状況はそれとは明らかに違うだろう」


と冷静に言うもう一人の自分が居ました。


だって、その何が違うのかと言うと、僕はご本人にモノマネを強要されているのです。


普通、モノマネされる側の人はちょっと恥ずかしそうだったり、モノマネして頂いて光栄です、的な感じになると思うのですが、三又さんは僕に自分のモノマネを強要し、


「どうしたんだよ、三又さん」


と自分のことを〝さん〟付けしながら、モノマネを急かしてこられるのです。


でも、もう開き直るしかありません…なのでなんとか勇気を振り絞り、いつも収録終わり三又さんが必ず仰られることをモノマネしてみたのです。


「シェパード~今日のオレはどうだったんだよ~?お前が一番面白かった所、教えろよ~」


と…。
すると三又さんは、


「どうって、具体的にどういうことなんだよ?」


と真顔で返してこられたのです。


三又さん…どれだけ欲しがりなんでしょうか。


しかも、こんなことを具体的に聞いてこられても…なんです。


ですが、もうヤケッパチです。


先ほどの返事に加え、ヤケクソになってブッこんでみたのです。


「うるせぇよ、どうだっていいだろ~。それよりよぉ、今日のオレ、殿にハマッてたよなぁ?くっくっくっくっ」


正直この時、怖くて三又さんの顔が見れませんでした。


だって、大先輩に対して絶対に失礼すぎるのです。


しかも、このモノマネは以前「等々力ベース」の収録終わり三又さんが本当に仰ったことでもあるのです。


すると、怖くて下を向いたままの僕に三又さんは少しの沈黙のあと、こんなことを仰ったのです。


「う~ん、シェパード~、良いフレーズが出ねぇなぁ」


躊躇をしていた、自分を責めました。


今思えばですが、たぶん三又さんはモノマネを大袈裟にやった所で怒ったりはしないのです。


なのに、僕は遠慮をしてしまいモノマネも躊躇してしまっていたのです。


こんな良い状況で躊躇などしていたら、どこに行っても躊躇をしてしまう。


きっと、三又さんは自分のモノマネをさせることでそれを教えてくださったのだと思います。


今だから言えるのですが、これはものすごいチャンスでもあったはずなのです。


ご本人の前でモノマネをさせて頂き、もし面白ければそれを何処かで使わせて頂けたかもしれなかったのに…。


すると、そんなへこたれる僕を見て三又さんは、何か思い悩むような表情でこんなことを仰られたのです。


「じゃあ、パチンコに行きますか?」


…一瞬、何が起きたのかわかりませんでした。


話が変わりすぎて動転する僕に、三又さんはさらに、


「パチンコ行きますかぁ~~?」


と、やたらと陽気に聞いてこられるのです。


さきほどまでの神妙な表情をした三又さんは、もう居ないのです。


でも、さすがに三又さんのお誘いでも、僕にはお金がないので軽くガードを固めつつ、やんわりとお断りさせて頂いたのです。


すると、三又さんはさらに、


「そんなこと言ってぇ、シェパードさんもパチンコやりたいんでしょ~?」


と、なぜか敬語で言い迫ってこられるのです。


そして、最終的には財布の中にいくら入っているんだと取り調べのようなことを受け、ほぼ強引にパチンコ屋へと連行されたのです。


もう、嫌々ながらも半ば諦めモードの中、赤坂のパチンコ屋へ。


すると、一店舗目に入ったお店にはお客さんが全然入っておらず、違う店へ行くことに。


そこで、僕はあるミスをしてしまったのです。


その時僕は、いくら嫌々だろうが負けては元も子もないので「せっかく打つのなら、せめて勝ちたい」というような下衆な欲を全面に出てしまい、


「たしか、あっちのお店はよく人が入ってますよね?」


なんて三又さんにお店を紹介するような軽々しい発言をしてしまったのです。


今考えれば当たり前なのですが、三又さんがその発言を聞き逃すワケがないのです。


そんな僕の発言に三又さんは目を光らせながらニヤニヤと微笑み、こんなことを仰られたのです。


「シェパードさ~ん、タイホですよ~。もう嫌だなんて言わせませんよ~、これはもう、君から誘ったようなもんですからね~」


まるで、犯人のシッポを捕まえたベテラン刑事のようなのです。


冤罪事件とは、こういう些細な発言が元で起きてしまうんだろうなぁ…、と、不謹慎にもそんなことを思わずにはいれなかったのでした。


そして、三又さんはまるで僕に連れられて仕方なく行ってるんだというような表情で、パチンコ屋へと入るのです。


そしてお店に入ると三又さんは僕に、


「台はシェパードさんに決めさせてあげますからね~」


と、台を決めさせようとしてこられます。


ですが、僕は先ほどのこともあってか、


「これは、何かの罠だ」


と過敏になってしまい、


「いや、三又さんが決めてくださいよー」


なんて言って回避しました。


たぶん、罪をさらに被せられる気がして怖かったのです。


ですが三又さんは、


「ここはシェパードさんが決めてくださいよ~」


と、一向に引こうとはされないのです。


でも、正直言うと僕は別に台なんか決めたくないのです。


というか、本音を言えばパチンコじたいしたくないのです。


ですが三又さんは、


「シェパードさんが好きなのを選んでいいですからねぇ~」


なんて不気味な微笑みを浮かべつつ仰ってくるのです。


なのでさすがに決めないわけにもいかず、とりあえずテキトーに台を決めたのです。


すると、その台を見ながら三又さんはニヤニヤとしながら僕にこんなことを言ってこられたのです。


「勝負師ですね~」


別に、僕は勝負をするつもりなんてないのです、ただただ、決めろと言われたから決めただけなのです。


ですが、せっかく三又さんが勝負師だと言ってくれているので、僕はその台で打つことにしました。


そして、打つこと数時間…。


あっさり負けました。


でも、三又さんの台を見てみると負けてはいないようだったのでホッとし、負けたあとは全力でその台を応援したのでした。


僕からすれば、三又さんが負けないということ、それだけでも勝ちなのです。


そして少ししてから三又さんも打ち終えられ、解散することに。


すると三又さんは帰りしな僕に、


「これで、飯でも食えよな」


と1000円を手渡し颯爽と帰られたのでした。


三又さん…ありがとうございました!


そして…僕はその1000円札を握りしめ、少し塩っ辛くなったラーメンを食べて帰ったのでした。


では。