『単独ライブへの道』でバタバタしていたせいで、書きたかったのに書けていなかったことがございます。


それは軍団の先輩、アル北郷さんに連れて行って頂いたマエケンさんのお店でのことなのです。


マエケンさんとは、ご存知の通り松浦亜弥さんのモノマネなどでブレークされたあのマエケンさんなのでございます。


そして、なぜ北郷さんがマエケンさんのお店に行ったのかと言いますと、実はマエケンさんは北郷さんの大ファンだそうでして

「なんとか北郷さんと会えないモノか」

とマエケンさんからTwitterやお知り合いの方を通してお会いしたいというラブコールを送り続けた結果、なんとその願いが通じその日、マエケンさんと北郷さんが初めてお会いするという形になったそうなのです。


そして、そんな大事な大事な出会いの場に、なんとも場違いながら僕もお邪魔させて頂くことになったのです。






殿の番組のニュースキャスター終わり北郷さんと0時頃、高円寺のマエケンさんのお店へ。



マエケンさんのお店へ到着すると、扉には「会員制」と書かれた札が。


安い店しか知らない僕は、この「会員制」という文字に弱いのです。


なんだか、とてつもなく高いお店や、とてつもなく敷居の高いお店、さらにはなぜか、とてつもなく悪いことをしているような気分になってしまうのです。


それを押さないと入れないのはわかってはいるのですが、その「会員制」という文字に緊張してしまい、インターホンをジッと見つめてしまいます。


すると北郷さんに、

「おい、早く入ろうぜ」

と背中を押され、やっとこさインターホンを。


なんとか扉の鍵を開けてもらい、ガチガチに緊張しながらお店の中へ入ります。


すると、そこにはオシャレなジャズBARのようなとてつもなく雰囲気の良いお店が北郷さんと僕を出迎えてくれたのです。


照明の調光が抜群の雰囲気をかもし出すカウンター、そしてくつろぎやすそうなソファにテーブル、すべてに行き届いている気遣いがそこかしこに見え隠れするオシャレなお店。


さっきの「会員制」という文字の緊張よりさらに緊張するオシャレな雰囲気に呑み込まれてしまいます。


すると、隣りに座られた北郷さんまでも珍しく黙り込まれています。


すると、BARカウンターの中からマエケンさんがご挨拶をしてくださいます。


それでまたまた僕は緊張してしまい、黙り込んでしまったのですが、ふと北郷さんの方を見ると、北郷さんもなぜかまだ黙り込んでらっしゃるのです。


こんなこと、滅多にないのです。



北郷さんと言えば、北郷さんがまだ付き人だった時代に大先輩である三又さんと飲んでいる時に、


「俺の話を聞いてくれ!」


と三又さんに話しまくり、三又さんが話している最中だというのに、


「三又さんの話、つまんないんですよ!」


と大先輩の三又さんの話をさえぎって自分の話をしたというような大お喋りな方なのです。


しかも、その話にはまだ続きがあり、そんな北郷さんにさすがに怒った三又さんは北郷さんを耐えきれず殴れたらしいのですが、殴られたのにも関わらず一切こりず喋りつづけ、その翌日、顔を腫らしながらその三又さんとの顛末を飄々とおもしろ話しとして話していたというような伝説があるような方なのです。



そんなお喋り大好きな北郷さんが、なぜか今日は珍しく黙り込んでらっしゃるのです。



よーく見ると、緊張している風にも見受けられるのです。



でもなんとなく、緊張するお気持ちも僕にはわかるのです。



マエケンさんに「どうしても会いたい」と強く懇願され、それを叶える為に北郷さんは出向いたのです。


言ってみれば、女性に猛アピールされて、どうしたものかと戸惑う男性とでも言いましょうか。


そういった緊張感がひしひしと伝わってくるのです。


ただ、北郷さんはノンケなので、その緊張も不思議ではあるのですが。


さて、そんなこんなありながらも徐々に場の雰囲気にも慣れてきて、話はマエケンさんがなぜ北郷さんのファンになったのか、という一番気になる話題に。



その理由とは、『アキレスと亀』に出演されていた北郷さんを見た時に、


「この人しかいない!」


と、一目惚れをされたということだそうなのです。


たしかに、『アキレスと亀』での北郷さんの役柄と北郷さんの演技は最高に良いのです。


アートを求めるもののうまく行かず、インテリな考え方に及んでしまい自殺するという役なのですが、それはそれは良いのです。


マエケンさんは、そんな「アキレスと亀」の北郷さんに惚れて、色々な方法をとり北郷さんに猛アピールされたということなのだそうなのです。



そしてそこから、お笑いの話や「これからどうするのか?」といった真面目なお話などもされながら、気づけば先ほどまで満席だったカウンターは今では北郷さんと僕だけになり、時間は朝の7時に。



さすがに北郷さんも僕も結構酔っており、お会計をしてもらおうとすると、マエケンさんが急に猫なで声で、


「北郷さん、また会ってくれる?」


と、おねだり顔で仰られます。


北郷さんも、「全然いいですよ!」と快く答えられていると、マエケンさんはさらにこんなことを仰ったのです。



「じゃあ、最後にキスだけして」


「?」


と、北郷さんの頭の上には?マークが大量に浮かんでいるのが見て取れるほど、戸惑っております。


すると、マエケンさんは負けじと、


「キスして」


と言い続けられます。



さすがに戸惑いながらも北郷さんはキスはお断りされ、もう帰ろうか、ということになりなんとか帰る準備を。



するとマエケンさんは、逃がしてたまるものかと言わんばかりに、



「じゃあ、じゃあ、じゃあ、ハグだけして」


と、これまた北郷さんを戸惑わせるお言葉を放たれます。



すると、その言葉に動転された北郷さんは、なぜかこの時こんなことを仰られたのです。



「マエケンさん!まだはえーすよ!」




心の中からの雄叫びであろう北郷さんの雄叫びが、BARカウンターに響きます。


ですが北郷さん、時間の問題でもないのではないでしょうか…



と僕は横で見ながら思いつつも、そんな押し問答が何度か繰り返され、なんとか帰るということになり一安心して帰ることに。



そんな僕らを外まで見送ってくださるマエケンさんは、なんだか寂しそうな顔をされていた気がしたのです。



そして、北郷さんにタクシーで送ってもらい帰ったのでした。



タクシーの車内、マエケンさんのお店での多数の珍事件などを思い返し話していると、ふと北郷さんは、




「それにしてもよーシェパード、ほんとマエケンさん初対面なのに、はえーよな」


と、ポツリと仰っていたのでした。



北郷さんは、何度か会えばマエケンさんとキスまでとは言わないまでも、ハグぐらいはされるのだろうか。


と、朝日に浴びながら北郷さんがマエケンさんを抱きしめていることを妄想しながら寝入ったのでした。



では。