結婚なんてしないで 29 プライオリティー | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

29


ベッドで俺は新城とは呼ばなかった。なのに、ゆかりの奴ときたら、最後に、色っぽい声で、先生、イッちゃうなんて言いやがった。


「反則だぞ」


ゆかりの上で息を整えながら、俺はゆかりの頭をコツンとやった。


ゆかりに惚れたのは卒業してからだし、付き合い出したのもそうだ。生徒に恋情を抱くのはプロの教師としてどうかと俺は思っている。だから、俺にはそういうプレイの趣味は無い。


「ごめんなさい」


「別に謝ることないけどさ」


俺はゴロンとゆかりの隣に仰向けになった。




結婚なんてしないで



寄せ書きに書かれたメッセージをふと思い出した。


教師という仕事を全うする上で、一生独身の方がいいんじゃないかと考えたときもあった。


なぜなら、もし結婚して子供ができたら、俺にとって、生徒達のプライオリティーが下がるからだ。


誰よりも生徒が一番大事だと思える。それがプロの教師にとって、そして生徒にとっても理想的だ。その思いは、今も変わらない。


だけど、それが唯一の正解だとは、今は思っていない。



生徒は大事だ。だけど、ゆかりのことはもっと大事だ。



自分にとって一番大事な人を守る。ひとりの人間として、その生き方は間違っていない。


誰かとちゃんと愛し合って、支えあって、生きていく。生徒にも、そんなふうに生きて欲しいと思うから。


いつか彼女たちも、自分を一番大事にしてくれる人と巡り会って、俺のことなんか忘れちゃうくらいじゃないと。それが彼女たちの幸せに違いない。



健ちゃん?何考えてるの?」



「いや結婚なんてしないでって寄せ書きに書いた子たちもさ、今頃結婚して幸せにやってんのかなぁって。俺たちみたいに」



「ふふ。私、同級生の中で一番いい旦那さんもらったと思ってる」



「ウソだよ。みんなもっと若いイケメンと結婚してんじゃないの。エリートサラリーマンとか若き起業家とか捕まえちゃってたりしてさ」



「ふふ。知らないけど、私は健ちゃん以外興味無いもん」



「そうですか」



「上野先生も、条先生以外は目に入んないみたい」



「え?」



「こないだ会ったとき、来年も条先生とダンス大会に出るんだって話しててふふ条先生とダンスやってさらに沼にハマったみたいだったよ?上野先生」



「まあ、そうなるよな。でも、結婚はまだお預けか」



「ふふ。ここだけの話条先生に言っちゃダメだよ?」



「なに?」



ゆかりは、俺の耳に唇を寄せて、声を潜めた。