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※久々に元祖師弟カッポー♡
条先生と上野先生がダンス大会で準優勝した1週間後。
夕飯の後で、私と健ちゃんはソファに並んで卒業アルバムを見ていた。
「懐かしいね」
「健ちゃん、寄せ書きに何書いてくれたか覚えてる?」
「ああ…」
健ちゃんはクッションを抱いて、視線を上に上げた。
「なんだろ。アレか、アレなんだよなぁ」
クッションに顎を埋めるようにして、黒目をクリクリさせてるのが可愛い。
「ねぇ、先生って毎年生徒のアルバムに書くから、だいたい書くこと決まってるの?」
「そうだね。まあ、その子に合わせて書くときもあるけど、正直、あんま印象の薄い子には書くこと無いじゃん」
「ひどい」
「ハハハ。それに、同じこと書いた方が公平でいいでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「んー。必笑!」
健ちゃんは私を指差して言った。
「当たり!それ、決まり文句だよね?ってことは、私は印象の薄い子だったってことか」
「そんなわけないじゃん。ゆかりなんてただでさえ俺に贔屓されてると思われてたんだからさ、みんなと同じにしとかなきゃ。やっかまれて困るのそっちでしょ。どうせみんなで見せっこすんだから」
「そっか…。ねぇ、私が健ちゃんの卒アルに何書いたか、健ちゃん覚えてる?」
「覚えてない」
「即答?」
「だって覚えてないよそんなの」
「じゃ、見ようよ。健ちゃんのアルバム見せて」
「え?ないよ。学校だよ」
じゃあ持って帰って来て見せて、と言ったら、翌日アルバムを持って帰って来てくれた。
昨日と同じく夕飯の後で、並んでソファに腰かけてアルバムを開いた。
「わぁ!いっぱい書いてある!ハートがいっぱい」
健ちゃんのアルバムには、びっしりと生徒たちからのメッセージが書き込まれていた。
「えっと、ゆかりのどこだ?新城、新城…」
私は健ちゃんと一緒に自分が書いたメッセージを探した。
「あったあった。ここ!」
けんちゃん先生♡
ありがとうございました。
ずーーーっと大好きです!
3-5 新城
力の入らない手で書いた拙い文字。
ほんとはもっとたくさん書きたかったけど、障害のせいで字が上手く書けないから、短い文になってしまった。
健ちゃんは昔の私を懐かしむように、優しい笑みを浮かべて、並んだ字を見ていた。
「『ずーーーっと大好き』だって」
「……///」
恥ずかしいから、私は他の子のメッセージを指差した。
「あ、見て見て。『結婚なんてしないで』って書いてある」
「『結婚して下さい』もあるよ。どっちなんだ?」
「他の人と結婚しないで、私と結婚して下さいって意味でしょ」
「わかってるよ」
ああ…みんなの憧れの先生を独り占めしてしまったんだな…私。
「…結婚…しちゃったね…」
ポロッと言ったら、
「そうだね。みんなの期待を裏切っちゃったなぁ」
と健ちゃんも寄せ書きを見てしみじみと言った。
そして、
「ただひとりの期待を除いて、ね」
と言うと、こっちを向いて、チュッと唇にキスをした。
健ちゃんは微笑みを浮かべて、私を見つめている。
不意打ちのキスの後で、そんなふうに見つめられたら…ドキドキしてしまう。
「私…けんちゃん先生と結婚できるなんて、夢にも思ってなかった…」
「俺も…生徒に本気で惚れるとは思ってなかった」
健ちゃんは髪をかき上げてそう言うと、私の肩を抱いた。
「新城…」
いきなり旧姓で呼ばれて、ドキッとした。
「愛してるよ」
抱き寄せられて、胸がキュンとなった。
健ちゃんの匂い。体温。
ああ…顔が熱い。ドキドキする。
私が固まっていると、健ちゃんは私の耳に唇を寄せ、新城…可愛いなって低く囁いた。
もう。健ちゃんったら!
「わざと、でしょ」
「なにが」
「そうやって、わざと私をドキドキさせて楽しんでる」
私はむぅっと健ちゃんを睨んだ。
すると健ちゃんは、
「今さら旦那に抱きしめられてドキドキしてんの?なんで?」
と目を丸くした。
「知らない!健ちゃんの意地悪!」
私はプイ!とそっぽを向いて健ちゃんの手をどけ、ソファの端へ寄った。
「アハハ。意地悪じゃないでしょ別に。おいでよ。こっちに」
「やだ」
「はい、おいで。いいから。意地悪しないから。ほら、おいで」
「やっぱり意地悪したって自覚あるんじゃない」
「ないない。おいでよ。抱っこしたげるから、はやく」
その言い方がまるで子供に言い聞かせるみたいで、つい素直ににじり寄ろうとしたら、健ちゃんはバッと私を抱き寄せて、後ろから抱きしめた。
「け、健ちゃん…っ///」
「…今も、ドキドキしてる?」
後ろから包み込まれて、そんな声で囁かれたら…ドキドキするに決まってる…。
私は無言でコクンと頷いた。
「…もっと、ドキドキさせてやろうか?」
うう…。バックハグでそんなこと言うの反則だよ。
私は真っ赤になって、またもや無言で頷いた。
すると、健ちゃんは、
「ふふ…エッチになったなぁ。新城は」
と言ってそのまま私を抱き上げて、寝室に連れて行った。