あぶない年越し 9 キスして | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日5話目です!












静かな部屋で黙って桃を抱きしめ、髪を撫で続ける。



時計の針はあと小一時間もすれば今年が終わることを示していた。



千帆を失って初めての年越しを、桜とではなく、桃と過ごしている。



それはそれで、自然な気もした。




深い悲しみには、それを分かち合える相手が必要だから。



千帆を失った悲しみは、桃としか分かち合えない。



寂しさを持ち寄って慰め合えば、また明日から笑ってやっていける。桃には笑ってて欲しい。





「泣くなよもう。な?」





「だって条くんに彼女がいるなんて、寂しいんだもん。寂しいよぅ条くん」




桃はまた俺にしがみついて泣きじゃくった。





「条くんが遠い人になっちゃうよ。私ひとりぼっちになっちゃう」




まるで小さい子どもみたいだ。





バカ





俺は桃をギュッと抱きしめてやった。





「ひとりぼっちになんかならねーよ。彼女がいても、お前は特別だ。俺はお前の親父がわりだと思ってるし、桜もそれはわかってる」




「条くん



顔を上げて俺を見つめる桃の熱い視線。



こんなふうに見つめられて、桃に想われてることに気づかない男はいないだろう。



ちょっと真剣過ぎて、こっちもはぐらかしようがない。



そういう玉砕覚悟の一途な感じが若いって言うか、眩しいって言うか




目の前にある涙に濡れた桃の瞳が、俺の唇をとらえる。





ああ




千帆にしろ、桜にしろ、桃にしろ




女っていう生き物は、




どうしてこんなに愛しいんだろう。




どうしてこんなに俺の心を揺さぶるんだろう。




俺にできることなら、なんだってしてやりたくなる。





なんだって





桃がそっと目を閉じる。





震える睫毛。上気した頬。赤い唇。






条くんキスして。あの時みたいに





俺は顔を斜めにして、親指でそっと桃の唇に触れた。





「桃