触れたくて 9 ほんとの条くん | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

その日の夜は、公園でダンス部関係のお花見があった。


満開の夜桜の下で、みんな盛り上がっていた。


チーフ顧問の先生が、


「ビール足りないよ〜」


って赤い顔で言ったので、



「買って来ます」


と立ち上がると、隣に座っていた瀬名さんが、


「あ、僕行くよ」


と言った。



結局ふたりで近くのコンビニに買い出しに行くことになった。



「桜ちゃん、昼間も花見だったんでしょ?」


「うん」


「飲み過ぎだろ」


「昼間は飲んでないもん」


「そうなの?花見で飲まないとか」


「その後みんな仕事あったから…」






『俺、もう行かなきゃ』

私に背を向けた条くんを思い出した。

あの後、条くんの言葉がずっと頭の中をぐるぐる巡っていた。


情けない。


とか、


最後だけじゃない。桜の言葉のおかげで強くいられた。


とか…


一番気になったのは、


桜…千帆、幸せだったかな


って言葉。


どうして、あんなこと言うんだろう。



条くんは情けなくなんかないって、私は言ったけど、まだ言い足りない。


ふたりきりになったのに、私はほんとの条くんを引き出せなかった。


条くんは、私に吐き出そうとして、でも、大事な何かを飲み込んだ。



ほんとの条くんが、足りない。



もう一度条くんに会って話したい。


千帆さんは幸せだったって、もっとちゃんと伝えてあげたい。


条くんが言うように、少しでも私の言葉があなたを強くするなら。


そして、許されるなら、抱きしめてあげたい。


ほんとはこんなところでお花見してるより、もう一度条くんに会いたかった。