その日の夜は、公園でダンス部関係のお花見があった。
満開の夜桜の下で、みんな盛り上がっていた。
チーフ顧問の先生が、
「ビール足りないよ〜」
って赤い顔で言ったので、
「買って来ます」
と立ち上がると、隣に座っていた瀬名さんが、
「あ、僕行くよ」
と言った。
結局ふたりで近くのコンビニに買い出しに行くことになった。
「桜ちゃん、昼間も花見だったんでしょ?」
「うん」
「飲み過ぎだろ」
「昼間は飲んでないもん」
「そうなの?花見で飲まないとか」
「その後みんな仕事あったから…」
『俺、もう行かなきゃ』
私に背を向けた条くんを思い出した。
情けない。
とか、
最後だけじゃない。桜の言葉のおかげで強くいられた。
とか…
一番気になったのは、
桜…千帆、幸せだったかな
って言葉。
どうして、あんなこと言うんだろう。
条くんは情けなくなんかないって、私は言ったけど、まだ言い足りない。
ふたりきりになったのに、私はほんとの条くんを引き出せなかった。
条くんは、私に吐き出そうとして、でも、大事な何かを飲み込んだ。
ほんとの条くんが、足りない。
もう一度条くんに会って話したい。
千帆さんは幸せだったって、もっとちゃんと伝えてあげたい。
条くんが言うように、少しでも私の言葉があなたを強くするなら。
そして、許されるなら、抱きしめてあげたい。
ほんとはこんなところでお花見してるより、もう一度条くんに会いたかった。