触れたくて 10 条VS瀬名 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

瀬名さんとコンビニでビールやお茶を買ってレジに向かった。


ちょうどレジで会計をしている人の後ろ姿を見て、私は息を飲んで立ち止まった。



最初は、条くんに会いた過ぎて幻覚を見ちゃったのかと思った。でも、レジでの会話が聞こえて…


「お弁当温めますか?」

「はい、お願いします」


条くんだ…!


瀬名さんが条くんの後ろに並んで、立ち止まっている私を振り向いた。


そして、私の視線を追って目の前の条くんに気づいた。


「あ…」


瀬名さんの声で、条くんが振り向いた。


「あ…」


条くんもそう言って、瀬名さんと私を見た。


条くんに会えた偶然がまだ信じられなくて、ボーっと条くんを見ていると、




「お次でお待ちのお客様、こちらのレジへどうぞ」


と声がかかって、隣のレジが開いた。


瀬名さんが、カゴを持って隣のレジに行き、


「桜、こっち」


と言った。


え?桜?なんで呼び捨て?


戸惑いながらも瀬名さんの方について行くと、お金を払っていた瀬名さんが

「11円、小銭ある?」


と聞いてきたので、私はあたふたしながらお財布を出して、小銭の分だけ払った。


瀬名さんはレジ袋を持って、


「行こう」


ってサッサと出口に向かった。


「あ…瀬名さん…ちょっと待って」


条くんと話したい。


瀬名さんは振り向きもせず、店を出てしまった。


条くんが、ドアの前で立ち止まってる私と一緒になった。


「行っちゃったよ?」


ドアを開けながら、外を歩いている瀬名さんの方に顎をしゃくった。


「あ…」


私は条くんと瀬名さんを交互に見て、それから瀬名さんを呼んだ。


「瀬名さん!」


瀬名さんが立ち止まって振り向いた。


「あの…ちょっと…先に行っててください!」


瀬名さんは怪訝な顔をして、私たちの方に戻って来た。


「どうも」


って条くんに軽く会釈すると、条くんも無言で会釈して、


「ちょっと話あるんで。すみません。すぐ返します」


と、私が話したかったのに、条くんの方から瀬名さんにそう言ってくれた。


「すぐってどれぐらいですか?」


珍しく瀬名さんの態度が威圧的なのは、条くんが私の元彼だって、前に話して知ってるからかな。


瀬名さんの中では、条くんが悪者になってるのかもしれない。


「少しなら待ってますよ」


と、条くんに言った。


「5分でここで済ませて下さい。前みたいに連れて帰られちゃ困る。そこの公園で花見してんですよ。待ってますから。どうぞ」


「つ…連れて帰られちゃ…って」


私が瀬名さんに抗議しようとすると、条くんが、


「5分だって。どうする?」


って私の言葉を遮った。


条くんも少し怒ってるみたい。


瀬名さんの条くんへの敵意を見当違いだと言ってなだめたかったけど、それより条くんと話したい気持ちの方が強くて…


でも5分でなんて話せないし…。


ピリピリした空気の中で、しかもこの空気を作ってしまったのは自分だと思ったら、ちょっとどうしたらいいかわからなくなった。


「桜…」


と条くんが言った。


顔を上げると、条くんのはっきりと意志を持った目が力強く私を見ていた。


「何時に終わるの?花見」


「えっと…9時半頃…?」


と言って瀬名さんを見ると、瀬名さんは


「さあ。はっきりした時間は決まってません」

と条くんに言った。


条くんは、じゃあ…といったん俯いて、それからパッと顔を上げた。



「9時半に公園の入り口に迎えに行く」



私がポカンとしていると、


「俺ん家すぐそこだから」


って近くのマンションを指差した。


「え?…あ、そっか…」


引っ越したんだ。千帆さんと住んでたマンションから…。



「時間前後するようなら、連絡して。連絡なかったら、9時半に待ってるから」



条くんが、迎えに来てくれるなんて…。


「返事は?」


「あ、はい」


「じゃ…」


条くんは瀬名さんの方を向いて、


「どうも。5分もいらなかった」


と言ってその場を立ち去った。