桜の蕾 6 遭遇 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日2話目の更新です。



桜の蕾 5 卒業準備からどうぞ。









一月の末、聡美さんと宝先生と3人でお鍋でも食べようと、ふたりの家に誘われた。


「さっむ…ぅ」


駅のホームに降り立ったとたん、肩をすくめた。足早に改札を抜け、駅前のスーパーに立ち寄った。


来る途中、聡美さんから柚子か酢橘を買って来て欲しいと連絡があったからだ。


スーパーに入ってカゴを持ち、野菜コーナーに向かった。


柚子を見つけてカゴに入れ、ほかに何か買っておいた方がよさそうな物はないかと辺りを見回していると、


ふと後ろから聞き覚えのある声がした。




「こっちにしようよ。ほら、こっちの方がいっぱい入ってる」




…え?



優しい少年のようなこの声は…まさか…



思わず、振り向いた。




「そんなにいらないよ絶対」


「食える食える」


「ほんとに?今日、桃いないんだよ?責任持ってよ?」


「だぁいじょうぶだって」



条くんだ…!



カートを両手で押している女の人の後ろから、条くんが片手で一緒にカートを押して、陳列棚の商品に手を伸ばしていた。


それをカゴに入れようとして、ちょうど千帆さんを後ろから抱き抱えるような格好になった。



ドキッ…!


ふたりが一緒に暮らしてることは知っていたのに、まるで今初めて知ったみたいに動揺した。



商品をカゴに入れて、ふと顔を上げた条くんが、私に気づいた。



「…あ」



千帆さんは条くんとカートの間に収まって、こっちを見ている。


前に一度会ったときよりも痩せたせいか、黒々とした瞳がいっそう大きく見える。



条くんが、パッと千帆さんから体を離した。



千帆さんは、私と条くんを交互に見て、それから、私が誰か思い出したようだ。


条くんが、よぉって言うより早く、千帆さんが私にペコリと頭を下げた。


私は、


「あ…こんにち…こんばんわ。…お久しぶりです」


と言ってお辞儀をした。



「久しぶり。珍しいじゃん。こんなとこで」



条くんが私を見て微笑む。私も笑い返したつもりだけど、うまく笑えたかどうか…。



条くんと千帆さんのカートに入ってるいろんな食材。

私のカゴにポツンと入ってる柚子。



動揺のあまり胸がドキドキする。


「あの…聡美さんの家に…」



「あ、そうなんだ」


何か…話さなきゃ。自然に、自然に。



「あの、佐久間さんから連絡もらって…。卒業式、行きますね」



「ああ。そのうち案内届くと思う。…よかった。生徒も喜ぶよ」


片手をポケットに入れて、優しく笑う。



条くんがチラッと千帆さんと目を合わせる。


千帆さんが私を見る。


私が、

「あの…お元気そうで…」


と言うと、


「おかげさまで…」


と言って千帆さんはまた頭を下げた。



「それじゃ…」


「ああ。またな」


「はい。卒業式で」


「うん」


私はふたりにお辞儀をすると、足早にレジに向かった。