光の粒 5 条件部屋にて | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日2話目の更新ですニコ


4 条と桃 からどうぞ。







「それってさー、生徒と一緒に住んでるみたいなもんだよね?ムリムリ!条、お前ほんと偉いわ」


健が俺の肩を抱いて、顔を覗き込む。


放課後、俺たちは条件部屋のソファに並んで座ってんだけど…


なんでこいつはいつもこんなに俺にくっついてくんだろ。


「健?」


「なに?」


ニコニコ健ちゃん…だな。


「もうちょっとそっちいけない?」


「ん?」


健が俺の反対側を振り向いて、スペースが空いてることを確認した。


「いけるね」


ってまたこっち向いて、ニコニコする。


「いけるかいけないかを聞いてんじゃねー」


もうちょっとそっちに詰めろ。


「だよね」


わかったか。


と、思ったのに動く気配がない。


…そうか。わかった。


「聞くだけ無駄だったな」


俺は諦めてそっぽを向いた。


「無駄だね」


「「いけても、いかないもんな」」


って異口同音に言って、顔を見合わせて笑った。


すると、机に向かっていた宝が振り向いた。


椅子の背に片腕をのせ、俺たちを見てニヤッと笑う。


「なにそんなくっついて、下ネタ言ってんだよ」



「「下ネタじゃねーよっ!」」


「え?違うの?」


「違うよッ!」


「健が俺とくっつきたがるって話だよ」


「やっぱ下ネタじゃん」


「そっか」


「そっかじゃねーだろッ」


健が俺の肩を叩いて、ついでにベタベタ触ってきたから、

「あ!ちょ…やめて。エッチ」


ってふざけて健の手を振り払う。


「いいじゃん。触らせろよ」


俺は思わず吹き出して、宝が「どんなキャラなんだよ。触らせろよって」って笑いながら突っ込んだ。



しばらくして、宝が、あ!と何かを思い出した顔をして、


「そういえば、こないだ上野さんに会ったよ」


って言った。



ドキッ…。



瞬時に桜の笑顔が浮かんだ。

桜のことは、別れてから、何度も思い出していた。未練とかじゃなくて、あいつが新しい職場で笑顔でいることを信じて、俺も強くあろうと思っていたから。



「そう。…元気にしてた?」


「うん。ダンス部の副顧問やってるって。夏休みの大会に向けて頑張ってるって言ってたよ」


「…そっか」


よかった。


宝と健の優しい視線を感じる。


「俺も頑張らねーとなぁ…」


穏やかで平和そのもののような千帆との暮らしだけど、それは常に死の影に怯える生活でもあった。


だから、宝と話す桜の笑顔を想像して、少し気持ちが明るくなった。



そんなふうに、別れてもなお、桜の明るさが小さな光になってることに、


その時の俺は…まだ気づいていなかった。