剛健版 星の王子さま 17 痕跡 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

昼間の移動は病み上がりの体にはキツいと男に言われたので、夜を待って、出発した。


「落ちないように、しっかり掴まってて」


「オッケー」


俺は逞しい男の背中にしがみついた。


「地図ないのに、場所わかるの?」


って言うと、男は黙って星空を指差した。


「なるほど」


星を見れば方角がわかるってことか。


俺は星空を見上げて、あのどこかに王子さまの花が咲いてるんだと思った。そして、花のもとに帰ろうとしていた王子さまは、黄色い蛇に噛まれて…。


「あのさぁ…」


「ん?」


「俺を見つけたとき、ほんっとに近くに誰もいなかったの?」



「ああ。誰もいなかったよ」



目的の場所に着いて、俺たちは砂地に降り立った。


俺たちは王子さまの痕跡を探したけど、王子さまの足跡も、亡骸も、何も見つけることはできなかった。



「…なんだ。…たいして重い体じゃなかったんじゃねーか」



王子さまは無事にあの花の待つ星へ帰ったに違いない。亡骸が無いことが何よりの証拠だ。


だから、王子さまは「悲しむことなんかない」って言ってたんだ。



なのに…どうして…


こんなに悲しいんだろう…。



突然、男に力強く肩を抱かれて、俺は初めて自分が泣いていることに気がついた。