剛健版 星の王子さま 13 井戸水 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

少し眠ると、俺たちはまた歩き出した。そして、夜が明ける頃、とうとう井戸を発見した。


「やった!」


俺は駆け寄って井戸の中を覗いた。


「あるよ!ある!水だ!ようっし…」


俺は綱に手をかけて、井戸の車を動かした。

ギィ…ギィ…。


俺はゆっくりと釣瓶を引き上げて、井戸の縁に置いた。車のカラカラ言う音が聞こえ、井戸の水面は揺れて日の光をキラキラと映していた。


「はい」


俺はひどく疲れた様子の王子さまの口元に釣瓶をあてがった。王子さまは、目を閉じて、ゴクゴクと美味そうに喉を鳴らして水を飲んだ。


ふたりして喉を潤した後、少し元気を取り戻した王子さまは、

「あ!そうだ!口輪!」

と叫びました。


「あ!」


思い出した。


「ねぇ、口輪描いてくれるって約束したよね?」


王子さまはポケットから俺が描いた絵を取り出した。


「描いて描いて。花が食べられないように」


俺は鉛筆で箱の横に口輪の絵を描いた。


「ありがとう」


王子さまは嬉しそうに笑ってそれをまたポケットにしまった。


少しやつれた王子さまの顔に夜明けの光があたり、砂漠が蜂蜜色に輝き出した。


そのまま、光に溶けてしまいそうな王子さまの横顔を見つめていると、俺は急に胸が苦しくなった。


王子さまは、俺が描いた羊を連れて、星に帰るんだ。大好きな花の世話をするために。


だって、王子さまじゃなきゃ、誰が花に水をやるんだ?


さっき、俺がくんだ水をゴクゴクとおいしそうに飲んだ王子さま。



花は他の誰でもない王子さまがくれる水を待っている。



「帰るんだろ?星に」



「うん。僕には…責任があるんだ。あの花に対して。途中で投げ出したりしちゃいけないんだ。そのことにやっと気がついたから」


それから、王子さまは空を見上げた。


「地球に来てから、明日で、ちょうど一年になる。僕が降り立った場所はこの近くなんだ。僕の星がさ、明日の夜はこのあたりの真上に来るよ」


王子さまと別れるのは寂しかった。

もう王子さまに会えなくなるのなら、それまで一緒にいようと思ったのに、王子さまは、


「さあ、飛行機んとこ戻りなよ。君は仕事しなきゃね。僕はここにいるよ。明日の夕方、また来てよ。待ってるから」


と言って微笑んだ。


俺には、王子さまが急に大人になったみたいに思えた。(いや、もともと大人ではあるんだけど。)



「ほんとに…待ってる?」



「え?」



「待ってろよ、ぜっったい」



勝手にいなくなったりすんなよ。


王子さまは、少し驚いた顔をして、それから照れたように笑って頷いた。


「うん…待ってるよ」