飛行機が故障してから8日目の朝。ついに、水筒の水が底をついた。
でも…
「でさ、その商人ってのがさ…」
いったい…いつになったら終わるんだよっ!長いんだよ…王子さまの話。(しかも、オチが無い…)
「あのさ…喉、乾かない?」
「え?」
「もう水筒の水も残ってないんだ」
「…そうなんだ」
「だから、井戸を探しに行こうぜ」
まだ話し足りなさそうな王子さまを尻目に、俺は立ち上がった。
すると、王子さまも、
「わかった。行こう」
と言って腰を上げた。
それから俺たちは黙って砂漠を歩いた。何時間も歩いているうちに、砂丘に夕日が沈み、やがて夜空に星が瞬き始めた。
「少し、休もう」
「うん」
砂山の上に互いにもたれあって座った。
俺も疲れてたけど、王子さまはもっと疲れてるように見えた。
「大丈夫?」
「…うん。…水は、心にもいいのかもしれないなぁ」
「…どういうこと?」
王子さまはそれには答えずに、黙って星を見上げた。
俺も星空を見上げて、
「…きれいだなぁ」
と呟いた。
すると、王子さまは、
「星があんなにきれいなのはさ、目に見えない花がひとつあるからなんだ」
と言った。
「まちがいない」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
どこまでも続く砂丘。金色に光る砂山。まるで、砂にすべての音が吸い込まれてしまったかのような静寂の世界。
「砂漠ってきれいだね。…砂漠がきれいなのもさ、きっと、どこかに井戸を隠してるからだよ」
と王子さまが言った。
「まちがいない。砂漠も星も、一番きれいなところは目に見えないんだ」
俺は、そう言いながら、何かとても大事なことを見つけたような気がしていた。