「置いて来ちゃったんだ」
「王子さまの星に?」
「花のことばかり考えて、花に翻弄されて、疲れちゃったんだよな…。最後に星を綺麗に掃除して、小さなバオバブの木を残らず抜いて…もう二度と星には戻らないって決めて、花にサヨナラしたんだ」
「花は、なんて?」
「『サヨナラ。早くお行きなさい。私もバカだったけど、王子さまもバカだったのよ』って」
「泣いてた?」
「ううん。泣いてなんかいなかった。僕は泣きたかったけど」
「…花も泣きたかっただろうな」
「…うん。そうかもしれない。僕に泣いてるところを見られたくなくて、早く行けって言ったのかも…」
「…帰れば?ほんとは好きなんだろ?花のこと」
「大好きだよ」
王子さまの穏やかな笑み。こんな優しい顔を花は知っていたのだろうか。俺から言わせれば、どっちもどっち。王子さまだって天邪鬼だ。
「帰って、言ってやんなきゃ。花に。ちゃんと」
「…うん」
それから、王子さまは地球に来るまでに行ったいろんな星の話をしてくれた。