カミセンのランバダ 12 先生以上の人 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

悲しくて、仕方ない…。


「優しくされたら浮かれて、冷たくされたら凹んで…毎日…大変なんです」


今だって、そう。いちいち、先生の言葉に一喜一憂して…。


「そんなのは好きになった私の勝手ですけど…。

いっそ先生のこと嫌いになれたら、その方がずっと楽だって…思うけど…でも…

毎日、顔を合わせて…っ…こんなに近くにいるのに…」


毎日、先生の顔を見て、声を聞いて、会話をして…


「どうやったら…嫌いになれるか、教えてください…っ」




「佐久間…」


先生が眉を曇らせて、低く優しい声で私を呼ぶ。


前かがみになって、真剣な顔で話し出す。



「お前が誰かを好きになるのは自由だ。…好きになるなとは言えないよな。

お前がそんなに好きでいてくれるのに、答えられないのは、俺だって、申し訳ないと思うけど…」


いい加減にしろと叱るどころか、私がぶつけた感情に、まだまともに向き合ってくれる先生の気持ちが、たまらなかった。



「…もう、私、先生以外の人を好きになれません」


「そんなことねーよ」


「なれませんっ」


「そんなことないって。俺よりいい男なんてごまんといるんだから」


「でも、なれませんっ」


「…大丈夫。何年か経ったらさ、しれっと結婚しますとか報告してくれんだろ?」


「しませんっ!」


「しろよ」


私と目が合うと、すっとそらせて、


「いや、まあ、結婚とかは…いいけど…誰か…お前のことちゃんとわかってくれる奴を見つけてさ…」


先生が言葉を切って、私をじっと見た。



「俺なんかにかまけてないでさ…ちゃんと、現実見て、いい奴捕まえろ」



その言い方があまりにあったかくて、我慢していた涙がぽろりとこぼれ落ちた。



「ムリです…。私のこと、先生以上にわかってくれる人が現れるとは思えません」



ほんとにそう思った。



「ネガティヴだなお前」


先生がため息をついて、ソファにもたれた。


腕を組んで、私を見ている。



はあ…。

また、先生を困らせてしまった。



「…すみません」


私は涙を拭って、鼻をすすった。


そうして、


「…いただきます」


って溶けたアイスをスプーンですくった。