悲しくて、仕方ない…。
「優しくされたら浮かれて、冷たくされたら凹んで…毎日…大変なんです」
今だって、そう。いちいち、先生の言葉に一喜一憂して…。
「そんなのは好きになった私の勝手ですけど…。
いっそ先生のこと嫌いになれたら、その方がずっと楽だって…思うけど…でも…
毎日、顔を合わせて…っ…こんなに近くにいるのに…」
毎日、先生の顔を見て、声を聞いて、会話をして…
「どうやったら…嫌いになれるか、教えてください…っ」
先生が眉を曇らせて、低く優しい声で私を呼ぶ。
前かがみになって、真剣な顔で話し出す。
「お前が誰かを好きになるのは自由だ。…好きになるなとは言えないよな。
お前がそんなに好きでいてくれるのに、答えられないのは、俺だって、申し訳ないと思うけど…」
いい加減にしろと叱るどころか、私がぶつけた感情に、まだまともに向き合ってくれる先生の気持ちが、たまらなかった。
「…もう、私、先生以外の人を好きになれません」
「そんなことねーよ」
「なれませんっ」
「そんなことないって。俺よりいい男なんてごまんといるんだから」
「でも、なれませんっ」
「…大丈夫。何年か経ったらさ、しれっと結婚しますとか報告してくれんだろ?」
「しませんっ!」
「しろよ」
私と目が合うと、すっとそらせて、
「いや、まあ、結婚とかは…いいけど…誰か…お前のことちゃんとわかってくれる奴を見つけてさ…」
先生が言葉を切って、私をじっと見た。
「俺なんかにかまけてないでさ…ちゃんと、現実見て、いい奴捕まえろ」
その言い方があまりにあったかくて、我慢していた涙がぽろりとこぼれ落ちた。
「ムリです…。私のこと、先生以上にわかってくれる人が現れるとは思えません」
ほんとにそう思った。
「ネガティヴだなお前」
先生がため息をついて、ソファにもたれた。
腕を組んで、私を見ている。
はあ…。
また、先生を困らせてしまった。
「…すみません」
私は涙を拭って、鼻をすすった。
そうして、
「…いただきます」
って溶けたアイスをスプーンですくった。