夢小判三人譚 28 一瞬の再会 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

騒然とする屋敷の中を、剛春と桜は駆けた。


「おゆう!おとっつぁん!」


小部屋の戸を開けると、そこには寝たきりの父親と、看病するおゆうがいた。


「姉さん!剛春さん!」


剛春は素早く父親のところに行って抱き起こした。


「さぁ、おとっつぁん、しっかりつかまってくんな!」


桜と剛春が両側から父親に肩を貸した。


開け放した襖の前を、屋敷の者や、勇ましい捕り方たちがドタバタと何か喚きながら走りすぎる。


ふと、部屋の前で立ち止まる人影がおゆうの目の端に映った。


スッとした立ち姿。凛々しい眼差し。


「健吉さん…っ」


あちこち駆け回る人々。わあわあという喧騒。その中で、ひとり静かにじっとこちらを見つめて立っている。


さようならと直接言えずにお屋敷に来てしまったあの日…。今度健吉に会えるのはいつだろう…。いや、会うことが叶うのだろうか。

そう思って、お屋敷でひっそりと涙にくれた夜…。



そして…


『桜には働きがあるが…おゆう、その足で、お前には何ができる?』


と全身を舐め回すように見られて、恐ろしかったあの晩…。桜が止めに入ってくれなければどうなっていたか。



懐かしさのあまり、目に涙を溜めて健吉を見ていると、健吉が早く逃げろと目配せして無言のまま深く頷いた。


「親分!あっちです!」


子分たちが健吉を取り巻く。


「よしっ!ぬかるんじゃねえぞッ」


健吉は、子分を従えて風のようにその場を走り去った。


剛春がキョロキョロと左右を見て、


「行こう!」


とおゆうを促した。