ふたり 5 ふたりの彼氏 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

ののちゃんが、俺の膝から下りて、隣に座る。

涙を拭きながら、うつむいて話出す。


「ふたり…いるの」


「え?」


「彼の中には、ふたりの人間が住んでるの」


な、なんだ?いきなり…。


「さっきの…二面性があるって話?」


「普通はそうだけど、彼の場合は、違うの」


「どう違うの?」


「彼の場合は、二面性じゃなくて…別個のふたつの人格なの」


「え⁇…そ、それって…」


ののちゃんが俺を見上げる。


「花火大会のときと海のときとで、別人に見えたって言ったでしょ?先生」


「うん」


「別人だったの。ほんとに」


「いや、でも…」


「外見は同じでも、表情や仕草や態度、癖まで、ほんとにビックリするぐらい豹変するの」


そ、それって多重人格ってやつだよな…。


ののちゃんが遠くを見つめて言う。


「彼の中にはね、26歳の彼と、16歳の彼が住んでるの。

26歳の彼はね、浮気症でスケベで手に負えない奴なのほんとに。…でもね、16歳の彼は…すごくナイーブで優しくてシャイで…」


って、首を傾げて俺をいたずらっぽく見る。



「シャイなとこはー、宝先生と同じだけどー、彼は先生みたいにうまく誘惑できないのよ?」


「え?ゆ、誘惑?」


「そ。ほんとに、すごくすごく純粋で…彼とは…エッチしたことないの」


「え?」


「いざとなると、引っ込んじゃうんだもん。あたしが出会って好きになったのは16歳の彼で…。だから、初めてのときは、いきなりベッドで豹変しちゃってビックリしちゃった」


衝撃的な事実を明るく話すののちゃんが痛々しかった。


…俺と普通の恋がしたかったって、そういう意味か…。


「俺が誘惑うまいって?うまかったら、今頃ベッドにいると思うんだけど…?」


「ふふ…。そっか」


俺はののちゃんの横顔を甘く見つめる。



「笑ってる方がいいよ」



ののちゃんがパッと頬を染める。


「また、そういうこと…言うでしょ?」



「なに?…思ったこと言っただけだよ」


って片眉上げてののちゃんを見る。