難題 15 してあげたかったこと | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

俺が固まってると、ゆかりが、

「先生、向こう向いて?」

って言う。


な、なんで?
ファスナーは前なんだけど…。

ってか…え?…向こう?


「は?」


「向こう向いて?」


も、なんか…わけわかんなくなってきちゃった。

俺は素直にゆかりに背中を向ける。

なにしてくれるつもりなんだろう…。



肩たたき?



あり得るな。

…って、お父さんかおじいちゃんかよっ!俺はっ!



ゆかりの手が俺の背中に触れる。

ジャケットの襟元に触れて、肩を出すようにずらす。


あ。ジャケット脱がしてくれんだ。


俺は腕を後ろにやって肩を動かし、ゆかりに協力する。

スルリとジャケットが肩から落ちる。腕を抜いて、振り向くと、ゆかりが俺のジャケットをベッドに置く。

手を伸ばして、ベッドサイドのクローゼットを開ける。


「ごめん。先生。ハンガー取って」


俺はハンガーを取ってゆかりに渡す。



ゆかりがハンガーにジャケットをかけようとする。

なかなか、上手くいかない。真剣な顔で何度もやり直して…。

俺は手を貸したいのを我慢して、黙って見守る。

心の中で、

がんばれっ…もうちょいっ!…あぁ…惜しいっ…もっかい?…まだやる?…よし…そうそう…

って一生懸命応援する。

やっとかかって、ゆかりが照れくさそうに笑う。


「ごめん。先生。そこにかけて」

って、ジャケットを渡す。

俺は言われたとおりに、ジャケットをかける。

ふたりで、ぶら下がるジャケットを見る。


それから、顔を見合わせる。


「へへ…。いつも、先生、自分でかけてるでしょ?…してあげたかったの…なんか…ちょっと…そういうの、あるでしょ?ドラマとかで」



「『おかえりなさい』っつって奥さんが脱がせてかけてくれるやつ?」


ゆかりがカッと顔を赤らめる。



「あ!全然いいことじゃなかったね。…わ!バカみたいっ///

どっちかっていうと、あたしが…したかっただけ…。してもらってばっかりで…なにも…してあげられないから…」


「いいことだよ。嬉しい。すごいね。…頑張ったじゃん…ゆかり?」



ゆかりがうつむいて黙り込む。



「ごめんなさい…っ…」



パタパタと涙が落ちてシーツに染みを作った。