うまい具合に、携帯の上にバサリと落ちて、携帯を隠してくれた。
セ、セーフ‼︎
先生がドアに手をかけて、
「ごめんね、遅くなって」
ってドアを閉める。
あたしは作り笑いをして、
「ううん。大丈夫」
って言う。
黒のVネックにマスタードのジャケット。折った袖口からいつものバングルが覗いて。
…出かけてたのかな。
今日ちょっとオシャレで、なんかセクシー…///
「いや、実は正直に言うとさ、駅前のセレクトショップでさ…」
って言いながら、チラッと床に落ちた膝掛けを見て、拾おうと手を伸ばす。
「あーっ‼︎ダメダメっ‼︎」
「え?」
って腰をかがめて膝掛けに触れる直前で動きを止める。
「拾っちゃダメ!そのままにしといて!」
「なんで?」
って車椅子に座ってるあたしの顔と床の膝掛けを交互に見る。
「あたしが拾うから」
「いや…」
「自分でできることは自分でしろって先生言うじゃない、いつも」
「いや、そうだけど…」
「だから」
「いや、でも拾えないでしょ?できないでしょ?」
「決めつけないで」
「いや、無理だって」
先生が膝掛けにまた手を伸ばす。
「ダメだってだからっ!」
「なんでだよ。できないじゃん。かがめないでしょ?届かないじゃん」
「いいからっ!出て行って!」
「は?」
「自分でやってみるから出て行って!」
「いや、バランス崩したら危ないじゃん。やりたいならやってみてもいいけど、俺、だったら見てるよ」
「それじゃ意味ないの!」
けんちゃん先生が腕を組んでちょっと不機嫌な顔をしてあたしを探るように見る。
ドキドキする。先生が拾っちゃったら…。
「お願いだから、ちょっと部屋出てくださいっ」
「やだね。意味わかんないし」
わーん(泣)先生怒ってる…?
あたしは上目遣いで先生を見る。
先生は、彼氏というよりは先生モードで、あたしの説明を待っている。
でも、正直に話せるわけない。
あんなことを調べてたなんて先生にバレたら、あたし、一生の終わりだから!ほんとに!
「お願い…。あとで、いいことしてあげるから、ちょっと部屋出てて?」
どうしても出て行って欲しくて、とっさにそんなことを言ってしまう。
「え?」
って、先生がキョトンとする。
あ。その顔可愛い…。とか思ってる場合じゃないしっ!
「ね?先生。お願いっ!」
って言うと、しぶしぶという体で、
「そんなに言うなら出て行くけど、無理すんなよ。ちょっとだけだからな」
って人差し指を立てて念押しすると、部屋を出て行ってくれた。バタンとドアが閉まる。
ホッ…。
さて…どうしよう…。