2つの事象からモヤモヤすること | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

2つの事象からモヤモヤすること

コロナ対策第一弾の補正予算(事業規模117兆円程度、真水約25兆円)について、「財政支出規模が諸外国に比べて小さ過ぎる。その要因は財務省にあり、彼ら(財務官僚)の財政規律至上主義こそが果断な財政支出を阻む、諸悪の根源なのだ」との主張をしばしば見かけます。

 

不思議なことに、この点に関し、しっかりした裏付けを伴った報道は未だ目にしておりません。
 

他方で、政府与党は、このコロナ対策国会において、まさに不要不急の検察庁法を改正し、検察官の定年延長を図ろうとしており、「法務大臣を呼んでの法務委員会すら開かずに決めてしまおうとするその進め方は、いくらなんでも少々強引だ」との批判が与党側からも出ているようです。
 

しかし、よく考えてみるとこの2つの事象は矛盾している感じがします。
 

なにせ、安倍政権は歴代最長=最強の政権で、国会では政権の思い通りの議決してくれる多数の国会議員を擁しており、予算・法案の可決・成立は思いのままです。
 

さらに安倍政権は、権力の定着により政治家はおろか、いまや最高裁判事や幹部公務員人事も完全に掌中に収めています。
 

以上から、かつての自民党ならば政権がいくつも倒れかねないほどの筋の悪い事案が表面化しても、何だかんだと言って沙汰止みにさせるだけのパワーを維持していることは間違いないでしょう。
 

そして今また、行政機構の一部にありながらも司法機能を持つために中立性担保が必要な検察官の定年すら変えようという局面に至っています。
 

それほどまでの「政治主導」が効いているならば、補正予算の規模を、「財務官僚が反対するから、低く抑え込まざるを得ない」などということがある筈がありません。
 

上述したように「検察人事を含めて基本的には総理の意向次第ですべて決まり。ただし、財政だけは財務官僚のほうが強い」などという理屈は通らないのですから。
 

わたくしが、昨今の永田町=霞が関周りの報道を見ていて、モヤモヤする原因はどうやらここにあると思うのです。
 

ジャーナリズムに身を置く方々におかれては、ぜひ丁寧かつ取材と、正確かつバイアスのないフェアな報道を通じて、このメカニズムを解き明かし、広く国民に知らせて頂きたいものです。